認知症の作業療法で使える紙面課題PDFを6系統でまとめました
認知症の作業療法で使える紙面課題を、見当識・注意・記憶・実行機能・二重課題・遂行速度の6系統に整理しました。各PDFにはL1〜L3とOT向けの使用メモを収載しているため、目的に合う教材を選び、必要なページをA4で印刷して使用できます。
これらは標準化された認知機能評価尺度ではなく、rehabilikunblogが作成した紙面課題教材です。紙面上の正誤だけで認知機能を判定せず、必要だった手がかり、誤り方、疲労、実際の作業遂行や生活場面での反応と合わせて活用してください。
認知症OT紙面課題PDF|6系統から選んで開く

見たい反応に近い系統を選び、PDFを開いてください。各PDFはL1・L2・L3・OT用メモの4ページ構成です。L1〜L3は本教材内の便宜的な区分であり、すべての対象者でL3がL2より難しくなることを保証するものではありません。
見当識|日時・場所・予定と手がかりの利用を見る
現在の日時や場所を答えられるかだけでなく、カレンダー・時計・予定表などの外部手がかりを自分で参照し、次の行動へつなげられるかを観察する紙面課題です。
注意|探索・選択・ルール切替の反応を見る
単純な視覚探索から条件付き選択、ルールの切替までを扱います。見落とし数だけではなく、探索の偏り、保続、再指示、自己修正、後半の変化を観察するために使用します。
L1は単一刺激の探索、L2は条件付き選択、L3は行ごとのルール切替を扱います。
記憶|保持・再生と手がかりの効果を見る
身近な言葉や買い物品、短い出来事を用いて、新しい情報の取り込みと保持を確認します。正答数だけでなく、自由再生と再認の違い、カテゴリー手がかりの効果、取り違えを観察します。
L1は3語、L2は4項目とカテゴリー手がかり、L3は出来事に含まれる複数情報の保持を扱います。
実行機能|開始・手順化・計画・切替を見る
外出準備や受診、午後の予定など生活に近い題材を使い、行動開始、手順化、条件保持、優先順位づけ、予定変更への対応のどこで支援が必要になるかを観察します。
二重課題|2つの課題を同時に行ったときの崩れ方を見る
紙面課題と口頭課題を同時に行い、どちらを優先するか、片方が止まるか、ペースを調整できるかを観察します。紙面二重課題の結果だけから、歩行など動作中の二重課題能力を判断しないことが重要です。
L1は探索と数唱、L2は探索と固定された口頭刺激、L3はルール付き紙面課題と意味判断を扱います。
遂行速度|処理量・正確性・後半の変化を見る
一定条件で課題を行ったときの処理量や正確性、後半の速度低下などを観察します。これは純粋な処理速度を測定する標準化検査ではなく、視覚探索、注意、理解、書字・運動能力などの影響を含む課題遂行ペースを見る教材です。
L1は単純探索、L2は対応表を参照する処理、L3は判断ルールを保持しながら行う処理を扱います。
どの紙面課題を選ぶか迷ったら「生活場面で困っていること」から戻ります
紙面課題は、認知機能の領域名から機械的に選ぶのではなく、生活や作業のどこで困っているかを確認し、その反応を詳しく見るための課題を選ぶと位置づけると使いやすくなります。
| 気になる生活場面 | 紙面で確認したい反応 | 候補 |
|---|---|---|
| 日付や予定が分からなくなる | 外部手がかりを使って予定へつなげられるか | 見当識 |
| 必要な物を探しにくい | 探索の偏りや条件付き選択 | 注意 |
| 伝えた内容や予定を忘れる | 保持、自由再生、手がかり後の反応 | 記憶 |
| 準備や家事の順番が崩れる | 開始、手順、計画、予定変更 | 実行機能 |
| 声をかけられると作業が止まる | 同時処理と優先配分 | 二重課題 |
| 作業に時間がかかる | 処理量、正確性、後半の変化 | 遂行速度 |
紙面課題を使う目的の決め方、課題中に何を観察するか、所見を生活行為へどうつなげるかは、認知症OT紙面ドリルの運用プロトコルで詳しく整理しています。
使用前に確認したい3つのポイント
第一に、この教材は標準化された認知機能評価尺度ではありません。診断、重症度判定、カットオフ判定には使用せず、対象者の反応を観察し、次に確認する生活行為や支援方法を考えるための補助教材として使用します。
第二に、L1〜L3はrehabilikunblog独自の便宜的な区分です。L1から順番に進める必要はなく、すべての対象者でL3のほうが難しいとも限りません。課題によって必要となる認知処理が変わるため、目的と対象者の状態に合わせて選択してください。
第三に、紙面上の成績だけで生活能力を判断しません。視力・聴力、失語、運動麻痺、書字能力、教育歴、疲労、環境刺激などの影響を考慮し、実際のADL・IADLや作業遂行で所見を確認します。
書字が難しい場合は回答方法を変更して構いません
上肢機能や書字能力の影響が大きい場合は、口頭回答、指差し、実施者による代筆などへ変更できます。ただし、どの回答方法を用いたかを記録し、経時的に比較する場合はできるだけ同じ条件をそろえることが重要です。
遂行速度など時間を扱う課題では、実施時間だけでなく、用紙、筆記具、提示方法、回答方法、手がかり条件もそろえてください。時間制限によって不安や焦燥が強くなる場合は、時間を外して反応を観察します。
記録では「点数」より誤り方と必要だった支援を残します
本教材には規準値やカットオフを設定していません。結果を残す場合は、正答数だけではなく、課題名・レベル、実施条件、誤り方、手がかりの種類と回数、中断・疲労、生活場面で次に確認したいことを記録します。
たとえば「注意L2で誤反応3回」とだけ残すより、「注意L2。右側の見落としあり。ルール再提示1回で自己修正。食卓上の必要物品探索でも右側を確認する」のように、紙面上の反応を次の観察へつなげると臨床で使いやすくなります。
紙面課題の選択・観察方法を詳しく確認する
このページはPDF配布を目的としたページです。紙面課題を使うかどうかの判断、課題選択、難易度調整、観察所見を生活行為へつなげる方法は、親記事で確認してください。
参考文献
以下は、本教材そのものの妥当性や有効性を検証した文献ではありません。認知症に対する作業療法および認知リハビリテーションの位置づけを確認するための参考文献です。
- 日本作業療法士協会. 作業療法ガイドライン―認知症 増補版. 2025.02. 公式PDF
- Kudlicka A, Martyr A, Bahar-Fuchs A, Sabates J, Woods B, Clare L. Cognitive rehabilitation for people with mild to moderate dementia. Cochrane Database Syst Rev. 2023;6(6):CD013388. doi: 10.1002/14651858.CD013388.pub2
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

