脳卒中の評価項目は「共通領域 × 病期 × 目的」で決めます
脳卒中の評価では、最初に全病期で確認する領域を押さえ、急性期・回復期・生活期の目的に合わせて優先順位を変えます。急性期は安全と症状変化、回復期は障害像と介入ターゲット、生活期は活動・参加と生活設計が中心です。本記事では、初回評価で確認する7領域、病期別の優先評価、評価を増やしすぎない選び方、再評価の進め方を整理します。
各尺度の細かな採点方法ではなく、「何を評価するか」「どの尺度を主指標にするか」「日々の観察と定期評価をどう分けるか」を決めたい理学療法士・作業療法士・言語聴覚士向けの親記事です。病期と目的を先に固定し、評価結果を介入へつなげるところまで確認できます。
脳卒中リハビリの全体像から確認する
脳卒中では7つの評価領域を確認します
初回評価では尺度名から選ぶのではなく、医学的情報から活動・参加までの7領域に抜けがないか確認します。すべてを同じ深さで測る必要はありません。問診、診療情報、観察、基本動作から課題を絞り、詳しく調べる領域だけ標準化された尺度を追加します。
| 評価領域 | 主な確認内容 | 評価例 | 介入へつなげる視点 |
|---|---|---|---|
| 医学的情報・安全 | 病型、発症時期、治療内容、画像所見、意識、神経症状、合併症、バイタル、安静度 | NIHSS、JSS、JCS、GCS、血圧、心拍数、SpO₂、症状観察 | 評価や離床をどこまで進められるかを決める |
| 運動・感覚 | 運動麻痺、分離運動、筋力、筋緊張、関節可動域、表在・深部感覚、疼痛 | SIAS、FMA、BRS、ROM、MMT、感覚検査 | 動作を妨げる機能障害と優先順位を整理する |
| 姿勢・体幹 | 頭頸部・体幹のアライメント、座位、垂直性、体幹制御、プッシャー現象 | TCT、FACT、SCP、姿勢観察 | 移乗・立位・歩行が崩れる土台を特定する |
| バランス・移動 | 起き上がり、移乗、立位、方向転換、歩行、補助具、転倒リスク、耐久性 | BBS、TUG、FRT、10m歩行、FAC | 安全な移動方法と練習課題を決める |
| 高次脳機能・コミュニケーション | 注意、半側空間無視、失行、失語、記憶、遂行機能、病識、意思疎通 | CBS、認知・言語評価、動作場面の観察 | 声かけ、環境調整、学習方法、多職種連携を決める |
| ADL | 食事、更衣、整容、排泄、入浴、移乗、移動、階段、介助量 | Barthel Index、FIM、実生活場面の観察 | 能力と実行状況の差、必要な介助・環境を明らかにする |
| 活動・参加 | IADL、外出、家事、役割、趣味、復職、社会参加、心理面、生活目標 | Lawton IADL、老研式活動能力指標、HADS、GDS、面接 | 退院後・生活期の目標と支援方法を具体化する |

評価尺度を領域別に探したい場合は、評価ハブから各評価の目的・実施方法・記録用紙を確認できます。
病期別に評価の主目的と優先順位を変えます
同じ脳卒中患者でも、病期によって評価で決めたいことが異なります。急性期は評価を完遂することより安全に進められる範囲の判断、回復期は介入ターゲットの特定、生活期は実生活での活動・参加と再発・転倒リスクの整理を優先します。
| 病期 | 主目的 | 優先して確認する内容 | 評価例 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 急性期 | 安全確認、症状変化の把握、離床・活動範囲の判断 | 意識、神経症状、病型・治療、循環呼吸、嚥下、基本動作への反応 | NIHSS/JSS、JCS/GCS、バイタル、嚥下スクリーニング、段階的な動作観察 | 体位、酸素、治療後の条件、開始前・実施中・終了後の症状変化を残す |
| 回復期 | 障害像の把握と介入ターゲットの特定 | 運動・感覚、体幹、垂直性、高次脳機能、基本動作、ADL、歩行 | SIAS、FMA、BRS、TCT/FACT、SCP、CBS、BBS、10m歩行、BI/FIM | 主要アウトカムと日々の動作指標を分け、同じ条件で変化を追う |
| 生活期 | 活動・参加、転倒予防、体力、生活役割の再設計 | 屋内外移動、活動量、IADL、疲労、心理面、家族・環境、社会参加 | BBS、TUG、10m歩行、BI/FIM、IADL尺度、Borg、HADS/GDS、面接 | 「できる動作」と実生活で「している動作」を分け、環境条件も記録する |
迷ったら5つの順番で評価を決めます
評価項目が増えすぎるときは、「今日何を決めたいか」から逆算します。安全確認後に主指標を1〜3本選び、動作観察で原因を絞り、再評価の条件と時期まで決めると、評価だけで終わりにくくなります。
| ステップ | 確認すること | 残す内容 |
|---|---|---|
| 1 | 病期と、今日の評価で決めたいことを1つに絞る | 主訴、生活背景、優先課題、評価目的 |
| 2 | 医学的情報と安全条件を確認し、進められる範囲を決める | 病型、治療、安静度、体位、バイタル、症状 |
| 3 | 病期と目的に合う主指標を1〜3本選ぶ | 主要アウトカム、選定理由、測定条件 |
| 4 | 実際の動作を観察し、どこで崩れるかを特定する | 失敗する場面、成功条件、必要な介助 |
| 5 | 介入と再評価を同じ指標・条件でつなぐ | 介入内容、次回の評価時期、共有事項 |
主指標・補助評価・日々の観察を分けます
すべての評価を同じ頻度で実施する必要はありません。変化を定量的に追う「主指標」、原因を詳しく調べる「補助評価」、毎回確認する「動作・症状の観察」に分けると、評価負担を抑えながら必要な変化を捉えられます。
| 区分 | 役割 | 選び方 | 例 |
|---|---|---|---|
| 主指標 | 目標に対する変化を定量的に追う | 介入で変えたい領域から1〜3本に絞る | SIAS、FMA、BBS、10m歩行、BI、FIM |
| 補助評価 | 主指標が低い原因や介入方法を詳しく調べる | 動作観察で疑われた領域だけ追加する | ROM、MMT、感覚、SCP、CBS、TUG |
| 日々の観察 | 安全、動作の質、介助量、疲労などの短期変化を捉える | 介入前後に確認できる具体的な動作を選ぶ | 起き上がり、端座位、立ち上がり、移乗、歩行の一部 |
評価結果は「条件・解釈・次の介入」まで記録します
点数だけでは、患者の変化なのか測定条件の違いなのか判断できません。主指標の値に加えて、体位、補助具、装具、介助量、時間帯、疲労、声かけなどを残し、何が課題で次に何を変えるかまで記載します。
| 記録要素 | 記載内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 目的 | 今回の評価で決めたいこと | 病棟内歩行を見守りへ変更できるか確認する |
| 主指標 | 変化を追う尺度・動作 | 10m歩行、方向転換、病室からトイレまでの歩行 |
| 条件 | 装具、補助具、介助、環境、時間帯 | 短下肢装具・四点杖使用、軽接触介助、午前中 |
| 解釈 | どこで崩れ、何があれば成功するか | 直線歩行は安定するが、左方向転換で足部の振り出しが遅れる |
| 次の介入 | 評価結果から変更する内容 | 左方向転換と狭い環境での歩行練習を追加する |
| 再評価 | 次に測る時期と条件 | 1週間後に同じ装具・杖・経路で再評価する |
脳卒中リハ評価記録シートをダウンロードできます
病期、主評価、測定条件、介入、再評価を1枚で整理できるA4記録シートです。初回評価の抜け漏れ確認、主要アウトカムの選定、カンファレンスでの共有に使用できます。
PDFのプレビューを開く
A4で印刷する場合は、ブラウザの印刷設定でヘッダーとフッターをオフにすると見やすくなります。
脳卒中評価で起こりやすい3つの失敗
評価が介入につながらない主な原因は、目的が曖昧なまま尺度を増やすこと、測定条件を残さないこと、能力と実生活での実行状況を混同することです。尺度を追加する前に、現在の評価で何を決められないのかを確認します。
| 失敗 | 起こる問題 | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 目的を決めずに尺度を増やす | 評価結果が並ぶだけで、介入ターゲットが定まらない | 今日決めたいことを1つ選び、主指標を1〜3本に絞る |
| 点数だけを記録する | 変化が患者の改善なのか条件差なのか判断できない | 体位、装具、補助具、介助量、時間帯、疲労を併記する |
| 能力と実行状況を混ぜる | 訓練室では可能でも、病棟や自宅で実施できない理由を見落とす | 「できる条件」と「普段している条件」を分けて観察する |
代表的な評価尺度は目的で使い分けます
評価尺度は、名前や知名度ではなく、何を決めるために使うかで選びます。同じ領域の尺度を重ねすぎず、簡便な全体評価と、介入に必要な詳細評価を使い分けます。
神経学的重症度|NIHSS・JSS
急性期の神経学的重症度と症状変化を共有するために使用します。総得点だけでなく、どの項目が変化したか、治療や体位など測定時の条件も確認します。
運動・感覚|SIAS・FMA・BRS・ROM・MMT
SIASは脳卒中後の機能障害を複数領域から整理する評価です。FMAは運動機能を中心に、感覚、バランス、関節可動域、疼痛を含めて詳細に追跡できます。BRSは麻痺の回復段階を簡潔に共有するときに使いやすく、ROM・MMTは個別の関節や筋出力を確認するときに追加します。
姿勢・体幹・垂直性|TCT・FACT・SCP
TCTは寝返りや起き上がり、座位など基本的な体幹機能を確認します。FACTは体幹機能を段階的に捉え、どの課題で崩れるかを介入へつなげやすい評価です。SCPはプッシャー現象を、姿勢、伸展、修正への抵抗から整理します。
バランス・移動|BBS・TUG・FRT・10m歩行・FAC
BBSは複数の姿勢・動作からバランス能力を確認します。TUGは起立、歩行、方向転換、着座を含む移動能力、FRTは前方への安定性限界、10m歩行は歩行速度や歩数、FACは歩行時の介助量を整理するときに使用します。
高次脳機能|CBS・認知・言語評価
CBSは日常生活場面に現れる半側空間無視を確認する評価です。机上検査だけでなく、更衣、食事、移乗、移動など実際の動作で注意、失行、病識、コミュニケーションの影響を観察します。
ADL|Barthel Index・FIM
Barthel Indexは基本ADLの自立度を10項目で簡潔に把握するときに使います。FIMは運動項目と認知項目を含み、必要な介助量を7段階で細かく共有するときに適しています。どちらも評価時の実際の遂行状況と条件を確認し、単純に「できるADL」と「しているADL」へ分けて扱わないことが重要です。
活動・参加・心理|IADL尺度・HADS・GDS・Borg
生活期や退院支援では、買い物、服薬、家事、交通手段、外出、役割、復職などを確認します。活動量が伸びない場合は、身体機能だけでなく、不安、抑うつ、疲労、息切れ、家族や環境の影響も評価します。
急性期は尺度より先に安全条件を確認します
急性期では、固定した数値だけで実施・中止を決めず、病型、発症後の経過、治療内容、医師の指示、神経症状、意識、循環呼吸の変化を総合して判断します。評価を完遂することよりも、患者の反応を確認しながら段階的に進めることを優先します。
| 確認領域 | 注意する変化 | 対応 |
|---|---|---|
| 神経症状 | 麻痺、感覚、構音、失語、視野、眼球偏倚などの新規出現・増悪 | 評価・離床を中止し、直前の状態と比較して速やかに共有する |
| 意識・全身状態 | 意識レベルの低下、反応性の変化、強い眠気、嘔気、嘔吐、頭痛 | 安全な体位へ戻し、症状と経過を確認して相談する |
| 循環 | 血圧・心拍数の急な変化、不整脈、胸痛、冷汗、失神前駆 | 活動を中止し、安静時からの変化と回復過程を記録する |
| 呼吸 | SpO₂低下、呼吸数増加、努力呼吸、強い息切れ、チアノーゼ | 活動を中止し、酸素条件、体位、呼吸状態を確認して共有する |
| 治療・安静条件 | 再灌流療法、手術、出血、穿刺部、点滴・ドレーン、医師指示との不一致 | 治療後の制限と施設プロトコルを確認してから進める |
具体的な開始・中止値は、病型、治療、患者背景によって異なります。医師の指示と施設の急性期リハビリテーションプロトコルを優先してください。
再評価は「毎回・定期・節目」に分けます
再評価の頻度は、病期だけで一律に決めず、変化の速さと評価の目的で分けます。安全や症状は毎回、主要アウトカムは一定間隔、治療・装具・生活環境が変わったときは臨時に評価します。
| タイミング | 主な確認内容 | 例 |
|---|---|---|
| 毎回確認 | 安全、症状、介助量、主ボトルネック動作、疲労 | 意識、バイタル、端座位、立ち上がり、移乗、歩行の一部 |
| 定期評価 | 目標に対する主要アウトカムの変化 | SIAS、FMA、体幹、バランス、歩行、ADL、IADL |
| 節目の評価 | 治療・支援計画を変更する前後の状態 | 病棟移動、装具変更、退院前訪問、サービス変更、復職前 |
| 状態変化時 | 新しい症状、転倒、活動低下などの原因 | 神経症状の変化、転倒後、疼痛、体調不良、生活環境の変化 |
定期評価の間隔は、病期、入院・外来・訪問などの提供形態、目標、尺度の反応性、施設運用に合わせて設定します。重要なのは、前回と同じ条件で比較できるようにすることです。
脳卒中の評価項目に関するよくある質問
質問をタップすると回答が開きます。
急性期に最初から歩行評価まで進めてもよいですか?
病型、治療後の条件、神経症状、意識、循環呼吸が安定しているかを先に確認します。歩行評価を最初から予定するのではなく、ベッド上、端座位、立位など各段階で反応を確認し、次へ進められるかを判断します。具体的な進行条件は医師の指示と施設プロトコルを優先します。
評価項目が増えすぎたときは何を減らしますか?
まず、今回の評価で決めたいことを1つに絞ります。その目的に直接関係する主指標を1〜3本残し、原因を調べる補助評価は動作観察で必要と判断したものだけにします。毎日の変化は、すべての尺度を測り直すのではなく、主ボトルネック動作で確認します。
同じ尺度なのに評価者間で点数がそろわないのはなぜですか?
採点基準の解釈だけでなく、体位、装具、補助具、介助量、声かけ、時間帯、疲労などの条件差が影響します。評価手順と採点基準を共有し、点数と一緒に測定条件を残すと比較しやすくなります。
「できるADL」と「しているADL」はどう確認しますか?
訓練場面など整えられた条件で可能な動作と、病棟や自宅で普段実施している動作を別々に観察します。差がある場合は、環境、介助者、手順、疲労、注意障害、転倒への不安などを確認すると、実生活で実行するために必要な支援が見つかります。
次は姿勢・バランス評価を具体的に選びます
脳卒中評価の全体像を整理したあとは、移乗・立位・歩行の課題に合わせて尺度を選びます。BBS、TUG、FRT、PASSなどの違いを確認したい場合は、脳卒中の姿勢・バランス評価の使い分けへ進んでください。
参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

