身体機能評価の種類と選び方|目的別に主評価を決める

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身体機能評価は「何を判断するか」から選びます

身体機能評価は、ROM、MMT、TUG、10m歩行などを一通り実施することが目的ではありません。まず「歩行が不安定な原因を絞りたい」「移動能力の変化を数値で追いたい」など、今回の評価で判断することを1つ決め、その判断に最も合う評価を選びます。

本記事では、身体機能評価の種類を目的別に整理し、主に使う評価と必要に応じて追加する評価の選び方をまとめます。各検査の詳しい手順、採点、基準値、カットオフは個別記事で確認してください。

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身体機能評価を選ぶ基本は「目的・主評価・追加評価」です

評価を選ぶときは、最初に判断したいことを決め、その判断に直結する主評価を選びます。主評価だけでは原因や安全性を判断できない場合に限り、追加評価を組み合わせます。

「主評価1つ+追加評価1つ」は、公式に定められた本数ではなく、初回評価を整理しやすくするための実務上の考え方です。病態、安全性、生活課題、施設の運用によって、必要な評価数は変わります。

  1. 目的:今回の評価で何を判断するか決める
  2. 主評価:変化や能力を代表する指標を選ぶ
  3. 追加評価:原因、安全性、動作の質を補足する
  4. 条件固定:再評価で比較できる条件を記録する
身体機能評価を選ぶ4ステップ。生活・動作上の問題を確認し、判断したいことを決め、主評価を1つ選び、必要な追加評価と測定条件を決める流れ
身体機能評価は、生活上の問題から評価目的を決め、主評価・追加評価・測定条件の順に整理します。

身体機能評価の種類と目的別の選び方

同じ「歩けない」という訴えでも、筋力、関節可動域、バランス、感覚、持久力など、確認すべき身体機能は異なります。評価名から選ぶのではなく、何を判断したいかから候補を絞ります。

※表は横にスクロールできます(スマートフォン)。

身体機能評価の種類と選定の目安
判断したいこと 主な評価候補 追加で確認すること 選定時の注意
特定の関節に可動域制限があるか 関節可動域測定(ROM) 疼痛、エンドフィール、姿勢、隣接関節 動作制限に関係する関節を優先して測定する
特定の筋群に筋力低下があるか MMT、握力、筋力計測 疼痛、代償動作、筋緊張、疲労 動作能力そのものではなく、原因候補を確認する評価として使う
立ち上がり能力や反復動作を確認したい 5回椅子立ち上がり、CS-30 座面高、上肢使用、反動、疼痛 椅子や手の使用条件を固定する
歩行速度の変化を確認したい 10m歩行テスト 歩行補助具、介助、歩数、歩容 快適速度と最大速度のどちらを測るか決める
起立・歩行・方向転換をまとめて確認したい TUG 方向転換、ふらつき、着座、補助具 時間だけで転倒リスクや原因を断定しない
複数課題によるバランス能力を確認したい Berg Balance Scale、Mini-BESTest 感覚、筋力、注意、補助具、環境 対象者の能力に対する床効果・天井効果を考慮する
下肢機能を包括的に確認したい SPPB 歩行条件、立位条件、上肢使用 構成課題と採点条件を施設内で統一する
歩行耐久や運動耐容能を確認したい 6分間歩行テスト、2分間歩行テスト 自覚症状、休憩、脈拍、酸素化、歩行補助具 実施前に安全性と中止条件を確認する
感覚障害が動作へ影響しているか 表在感覚、深部感覚、複合感覚検査 視覚代償、注意、理解、左右差 感覚所見と実際の動作を関連付ける
運動の正確性や協調性を確認したい 指鼻指試験、踵膝試験、反復運動 筋力、感覚、疼痛、理解、速度 失調だけでなく他の阻害因子を除外する

症例像ではなく「判断したいこと」で主評価を決めます

診断名や病期だけで評価を固定すると、必要な答えが得られないことがあります。たとえば転倒歴がある患者でも、確認したいことが方向転換なのか、立位バランスなのか、下肢筋力なのかによって選ぶ評価は変わります。

臨床上の問いから選ぶ主評価と追加評価
臨床上の問い 主評価の例 追加評価の例
歩行速度は改善しているか 10m歩行テスト 歩数、歩容、補助具、介助量
方向転換を含む移動が安全か TUG 方向転換の質、バランス評価、認知・注意
屋外移動に必要な耐久性があるか 6分間歩行テスト 自覚症状、脈拍、酸素化、休憩の有無
立ち上がり低下の程度を追いたい 5回椅子立ち上がり ROM、筋力、疼痛、動作観察
下肢機能を共通の合計点で共有したい SPPB 各構成課題の所見
関節制限が動作を妨げているか 該当関節のROM 疼痛、筋力、動作観察
筋力低下が介助量へ影響しているか 該当筋群のMMTまたは筋力測定 実際の基本動作、代償、疼痛

主評価と追加評価は役割を分けます

主評価は、目標や経過を代表する指標です。追加評価は、主評価の結果だけでは判断できない原因、安全性、動作の質を補います。

主評価の役割

  • 今回の目標と直接つながる
  • 初回と再評価で同じ条件を再現できる
  • 変化を数値または段階で共有できる
  • 結果を次の介入判断へつなげられる

追加評価の役割

  • 主評価が低下した原因を絞る
  • 安全性や中止判断を補う
  • タイムや合計点では分からない動作の質を確認する
  • 介入ターゲットを決める

たとえば、主評価を10m歩行テストとした場合、ROMやMMTを無条件に追加するのではありません。歩幅低下、疼痛、膝折れ、ふらつきなど、歩行観察で得た仮説に応じて追加評価を選びます。

初回評価ではすべての項目を測る必要はありません

初回評価では、安全性と生活上の課題を確認したうえで、仮説を確かめるために必要な身体機能を選びます。全身のROMやMMTを一律に測定しても、生活上の問題や介入方針へつながらなければ、評価の優先順位は決まりません。

情報収集、リスク確認、観察、身体機能、基本動作・ADLまで含めた初回評価全体の進め方は、理学療法士の初期評価の進め方で整理しています。

再評価では数値だけでなく条件を固定します

再評価で重要なのは、同じ検査名を使うことだけではありません。補助具や介助方法、椅子、靴、声かけなどが変わると、患者の変化ではなく測定条件の違いが結果へ表れます。

少なくとも、次の条件を記録します。

  • 補助具・装具
  • 介助量と介助位置
  • 靴や履物
  • 椅子の高さや肘掛け
  • 測定距離と通路
  • 開始姿勢と終了条件
  • 試行回数
  • 声かけ
  • 疼痛、疲労、息切れ
  • 必要に応じて時間帯や酸素条件
身体機能評価の記録例
不十分な記録 比較しやすい記録
TUG 18秒 TUG 18.2秒。四点杖使用、右側見守り、普段の速度、方向転換時に2歩の踏み直しあり
5回立ち上がり 15秒 5xSTS 15.4秒。座面高42cm、上肢支持なし、3回目以降に体幹反動増加
10m歩行 12秒 快適10m歩行 12.0秒。歩行器使用、見守り、助走・減速区間あり、測定区間10m

身体機能評価の記録シート(A4 PDF)

初回評価と再評価の条件をそろえるために、身体機能評価の記録シートを用意しています。評価の目的、主評価、追加評価、測定条件、再評価時の変化をA4用紙1枚へまとめられます。

身体機能評価 記録シートPDFを開く

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身体機能評価でよくある失敗

評価が多すぎることよりも、「何を判断するために測ったか」「結果から何を決めたか」が不明確になることが問題です。

身体機能評価でよくある失敗と修正方法
よくある失敗 起こる問題 修正方法
評価名から選ぶ 測定結果と生活課題がつながらない 最初に「何を判断するか」を1文で決める
ROMやMMTを全身一律に測る 時間がかかり、重要な原因が埋もれる 動作観察から原因仮説を作り、必要な部位を選ぶ
TUGやBBSの点数だけで転倒を判断する 認知、環境、服薬、転倒歴などを見落とす 評価結果を転倒歴や実際の動作と合わせて解釈する
数値だけを記録する 介入対象や再評価条件が分からない 代償、ふらつき、疼痛、疲労、介助条件を1行追加する
初回と再評価で条件が変わる 変化が患者によるものか条件差か判断できない 補助具、介助、環境、試行回数、声かけを固定する
負荷の高い評価を先に行う 疲労によって後半の結果が低下する 安全確認後、低負荷から高負荷へ順序を決める

迷ったときの身体機能評価選定フロー

評価を絞れないときは、次の4段階で整理します。

身体機能評価を選ぶ4ステップ
段階 確認すること 記録例
1 生活上・動作上の問題は何か 病棟内歩行で方向転換時にふらつく
2 今回何を判断したいか 方向転換を含む移動能力の変化を確認する
3 主評価と追加評価を選ぶ 主評価:TUG、追加評価:方向転換の動作観察
4 再評価条件を固定する 四点杖、見守り、普段の速度、同じ椅子と通路

身体機能評価の選び方でよくある質問

初回評価では何項目くらい実施すればよいですか?

一律の本数はありません。安全性と生活上の課題を確認し、判断に必要な主評価を選びます。原因や安全性を補足する必要がある場合に、追加評価を組み合わせてください。

TUGだけで転倒リスクを判断できますか?

TUGは起立、歩行、方向転換、着座を短時間で確認できますが、転倒は認知、服薬、環境、視覚、感覚、転倒歴など複数の要因に影響されます。TUGの時間だけで転倒の有無を断定せず、動作観察や背景因子と合わせて判断します。

ROMやMMTは全身を測った方がよいですか?

スクリーニングが必要な場合を除き、すべての関節や筋を一律に詳しく測る必要はありません。生活課題と動作観察から原因仮説を作り、関係する部位を優先して測定します。

主評価は途中で変更してもよいですか?

評価目的や患者の状態が変わった場合は変更できます。ただし、以前の主評価を中止する理由と、新しい評価で何を確認するかを記録しておくと、経過を共有しやすくなります。

再評価では同じテストだけ行えばよいですか?

同じテストを行うだけでなく、補助具、介助、椅子、通路、速度、声かけなどの条件をそろえます。数値に加えて、動作の質や症状の変化も確認してください。

次の一手

身体機能評価の選び方が決まったら、次は必要な個別評価の手順と記録方法を確認します。


参考文献

  1. 木藤伸宏, 梅原拓也, 岩本義隆, 小澤淳也. 理学療法における評価・効果判定の目的とは. 理学療法学. 2021;48(1):143-151. J-STAGE
  2. Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, Glynn RJ, Berkman LF, Blazer DG, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. PubMed
  3. Podsiadlo D, Richardson S. The timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. PubMed
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  7. Middleton A, Fritz SL, Lusardi M. Walking speed: the functional vital sign. J Aging Phys Act. 2015;23(2):314-322. DOIPubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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