身体機能評価の種類と選び方|PT向け早見

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身体機能評価は「主役 1 本+追加 1 本」で選ぶと迷いません

全体像 → 標準フロー → 代表テストの順でつなぐと、初回評価と再評価がブレにくくなります。

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関連:理学療法評価の進め方
まず深掘り:TUG の手順・解釈

身体機能評価は、検査を増やすほど良くなるわけではありません。結論として、まず「何を決めたいか」を 1 つに絞り、主役の評価を 1 本、必要なら追加を 1 本だけ足す形にすると、記録・再評価・申し送りまで一気に回しやすくなります。

このページで答えること:身体機能評価の種類を目的別に整理し、最初に選ぶ評価を決めること。
答えないこと:各テストの細かな測定手順、採点ルール、カットオフの深掘り。そこは個別記事で確認してください。

身体機能評価の全体像(早見)

まずは「どの領域を見たいか」を決めると、候補が一気に絞れます。ここでは、目的・代表テスト・所要時間・機材・使いどころを 1 枚で確認できるように整理しました。

※表は横にスクロールできます(スマホ)。

身体機能評価の種類と代表テスト(成人・臨床運用向け)
領域 主に決めたいこと 代表テスト 所要 機材 主な使いどころ
筋力 各部位の最大筋力 / 実用筋力 MMT、握力、CS-30 3–10 分 徒手、握力計、椅子 初期評価、経過観察、退院基準の検討
バランス(静的 / 反応) 姿勢保持と外乱への対応 Berg Balance Scale、FRT、Romberg 5–20 分 台、メジャー等 転倒リスク層別化、在宅移行判断
動的バランス / 移動 起立・歩行・方向転換を含む移動の安全性 TUG、DGI、Mini-BESTest 5–20 分 椅子、通路、コーン等 屋内外移動の安全性、介助量見積もり
歩行能力 歩行速度・効率・屋内移動の自立度 10 m 歩行(快適 / 最大) 3–5 分 距離表示、ストップウォッチ 移動自立度、補助具の要否、経時変化の確認
持久力 / 運動耐容能 反復負荷への耐性、屋外歩行の見立て 6MWT、2MWT、階段昇段テスト 6–10 分 通路、SpO2(任意) 在宅復帰、外来リハの目標設定、安全管理
柔軟性 / 関節可動域 関節機能の制限確認 ROM(ゴニオ計測)、SLR、Thomas など 3–10 分 ゴニオメーター 疼痛 / 機能制限の鑑別、介入方針の選定
起居・移乗・階段 基本動作の自立度と介助量 5 回椅子立ち上がり、床起立、階段昇降テスト 5–10 分 椅子、階段 介護量 / 住宅改修 / 福祉用具選定

代表 5 テスト(小記事)への最短導線

このページの役割は「何を選ぶか」を決めることです。手順・記録・解釈をすぐ確認したいときは、下の個別記事に直行してください。

身体機能評価(代表 5 テスト)と個別記事リンク
テスト 主に見たいこと 所要 個別記事
10 m 歩行(10MWT) 歩行速度(快適 / 最大) 3–5 分 10 m 歩行の手順・記録・解釈
5 回椅子立ち上がり(5xSTS) 下肢筋力 / 立ち上がり能力 3–5 分 5 回椅子立ち上がりの手順・注意点
SPPB 下肢機能の包括評価( 0–12 点) 7–10 分 SPPB の構成・採点・活用
6 分間歩行(6MWT) 運動耐容能 / 歩行耐久 6–10 分 6MWT の手順・声かけ・中止基準
TUG 動的バランス / 方向転換を含む移動 3–5 分 TUG の手順・解釈・カットオフ
評価の全体像(ハブ) 評価を体系で整理して、選び方を迷わない 評価ハブ(全体像)

PT が押さえる 5 つの身体機能評価(要点)

ここでは「このテストで何が決まりやすいか」だけを短く整理します。細かな実施条件やカットオフは個別記事で確認してください。

歩行テスト(歩行速度)

歩行速度は、移動能力の層別化と経時変化の確認に使いやすい代表指標です。まず「快適速度」と「最大速度」のどちらを採るかを目的で決めると、解釈のブレが減ります。

距離は施設の環境に合わせて設定し、距離( m )÷ 時間(秒)で歩行速度( m/s )として記録するのが基本です。

5 回椅子立ち上がりテスト(5xSTS)

5 回椅子立ち上がりは、短時間で下肢筋力と立ち上がり能力の目安を得やすい評価です。居室や病棟でも回しやすく、再評価にも向いています。

座面高、手の使用、反動の有無で結果が変わるため、条件を 1 行で残しておくと再評価が安定します。

Short Physical Performance Battery(SPPB)

SPPB は、立位バランス、歩行、立ち上がりの 3 課題をまとめて点数化できる包括評価です。合計点で共有しやすく、経過の見える化に向いています。

一方で、採点や条件設定の細部で結果が動きやすいため、施設内で手順をそろえて使うのがコツです。

6 分間歩行テスト(6MWT)

6MWT は、運動耐容能や歩行耐久をフィールドで見たいときの主役になりやすい評価です。距離だけでなく、途中の息切れ、SpO2、脈拍、休憩の有無も一緒に残すと価値が上がります。

同一対象者の経時変化を追う用途と相性が良く、在宅復帰や外来リハの目標設定にもつなげやすいです。

Timed Up and Go(TUG)

TUG は、起立・歩行・方向転換・着座を 1 セットで見られるため、短時間で動的バランスと移動の安全性を捉えやすい評価です。

タイムだけでなく、方向転換時のふらつき、歩幅低下、着座時の勢いなどの質的所見を一緒に残すと、介入の当たりが付きやすくなります。

どれを選ぶ?|目的別の第一選択

迷ったときは「何を決めたいか」を先に固定します。転倒リスク、移動自立、持久性、筋力、ROM では主役になる評価が変わります。

症例像ごとの第一選択(身体機能評価の目安)
症例像 / 目的 まず取るテスト 補助 / 代替
回復期・転倒リスク推定 TUG、Berg FRT、5 回椅子立ち上がり
在宅復帰の移動自立 10 m 歩行(快適 / 最大) 6MWT、DGI
持久性 / 屋外歩行の見立て 6MWT 2MWT、Borg、SpO2
フレイル疑い・筋力把握 握力、CS-30、5 回椅子立ち上がり MMT(部位別)
疼痛 / 拘縮の関与評価 ROM(該当関節) 徒手検査(SLR / Thomas 等)

身体機能評価 記録シート( A4 PDF )

初回評価と再評価を同じ条件で残したい方向けに、A4 1 枚の記録シートを用意しました。評価条件の固定、主要評価の記録、再評価メモを 1 枚でまとめたいときに使いやすい構成です。

身体機能評価 記録シート PDF を開く

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現場の詰まりどころ|評価が増えるほど再評価が崩れやすいです

よくある失敗を見る回避手順を見る

身体機能評価で詰まりやすいのは、「何となく有名な評価を全部やる」流れです。これをすると、点数は集まっても、次の介入や再評価の比較が決まりません。

特に歩行・バランス中心の症例では、どこまでを本記事で決めて、どこから各論へ分けるかが大切です。標準フローから整理したい場合は、理学療法評価の進め方を先に押さえると、条件固定まで一気にそろえやすくなります。

よくある失敗

身体機能評価でよくある失敗と修正ポイント
よくある失敗 起こりやすい問題 修正ポイント
目的を決める前に評価を増やす 点数はあるのに、何を良くしたいかが曖昧になる 「転倒」「移動自立」「耐久」など、決めたいことを 1 つに絞る
条件を記録しない 再評価で比較できず、改善か条件差か分からない 補助具、装具、介助、靴、時間帯、試行回数を 1 行で固定する
タイム / 点数だけ残す 介入ターゲットが見えず、共有も浅くなる 方向転換、反動、手の使用、疲労など質的所見を 1 行足す
高負荷の評価を先に行う 疲労や息切れで後半の結果が崩れる 安全性の高い項目 → 疲労が少ない項目 → 高負荷項目の順で行う

回避手順( 5 分 )

迷ったときの 4 ステップ(身体機能評価の選定)
段階 まず決めること 記録に残すこと
1 何を決めたいか(転倒 / 自立 / 耐久 / ROM) 評価の目的を 1 行で書く
2 主役の評価を 1 本決める 主指標(例:TUG、10 m 歩行、6MWT)
3 必要なら追加を 1 本だけ足す 補助評価(例:Berg、5xSTS、Borg)
4 条件を固定して再評価に備える 補助具、装具、介助、靴、環境、試行回数、時間帯

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

このページは何のためのページですか?(個別ページとどう違いますか?)

本ページは、身体機能評価の種類を俯瞰して「最初に何を選ぶか」を決めるための総論です。測定手順、採点、記録テンプレ、細かな解釈は個別ページで確認する設計にしています。

時間がないときの最小セットは何ですか?

転倒リスク中心なら TUG、移動自立なら 10 m 歩行、持久性なら 6MWT、筋力なら 5 回椅子立ち上がりや握力を起点にします。まず主役を 1 本だけ決めるのがコツです。

1 人の患者さんに何本くらい評価を選べばよいですか?

初回は主役 1 本、必要なら追加 1 本が基本です。最初から本数を増やすより、同じ条件で再評価できる形を作る方が臨床では役立ちます。

記録シートはどんな場面で使いやすいですか?

病棟・外来・訪問などで、評価条件をそろえながら初回と再評価を比較したい場面で使いやすいです。特に「主役 1 本+追加 1 本」の運用を定着させたいときに役立ちます。

次の一手

全体像がつかめたら、次は「評価をどう回すか」と「どの領域を深掘りするか」を 1 本ずつつなぐと、再評価まで運用しやすくなります。


参考文献

  1. Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, Glynn RJ, Berkman LF, Blazer DG, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. PubMed
  2. Podsiadlo D, Richardson S. The timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. PubMed
  3. ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. DOIPubMed
  4. Berg KO, Maki BE, Williams JI, Holliday PJ, Wood-Dauphinee SL. Measuring balance in the elderly: validation of an instrument. Can J Public Health. 1992;83 Suppl 2:S7-S11. PubMed
  5. Shumway-Cook A, Brauer S, Woollacott M. Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go Test. Phys Ther. 2000;80(9):896-903. PubMed
  6. Middleton A, Fritz SL, Lusardi M. Walking speed: the functional vital sign. J Aging Phys Act. 2015;23(2):314-322. DOIPubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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