いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「DESIGN-R®2020」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
日本は2007年に老年人口が21%を超える超高齢社会となり、2024年には30%を超えると推計されています。高齢化率の上昇とともに、高齢者の褥瘡はますます社会的な問題となることが予想されます。
褥瘡が発生してしまった場合、外用薬を塗布、電気刺激療法などの物理療法の実行、寝姿勢のポジショニングの見直しを行い、創部の治癒あるいは増悪防止を目標にすることが考えられます。そのためには、褥瘡の重症度を確認することや、状態の経過を追うことが必要になりますが、ここで活躍する評価法がDESIGN-R®2020になります。
DESIGNは日本褥瘡学会学術教育委員会が開発した褥瘡状態判定スケールで、2002年に日本褥瘡学会が発表しました。褥瘡の重症度を分類するとともに、治癒過程を数量化することを目的に開発されています。その後、合計3回の改定を積み重ね、DESIGN-R®2020として現在も国内だけではなく世界的に使用されています。
DESIGN-R®2020は非常に使用しやすく、有用な評価法になると思いますが、はじめて褥瘡を評価する方や、褥瘡の病態をあまりよくわかっていない方には、評価し採点すること自体が、少し難易度が高い部分もあると思います。
- DESIGN-R®2020とは?
- 評価用紙は?ダウンロードできる?
- 評価項目について詳しく知りたい!各項目の採点に悩んでしまう
- 採点方法と表記方法について
褥瘡はリハビリテーションだけではなく生命に関わる重要な問題になります。DESIGN-R®2020を活用した褥瘡の評価について色々と悩む方もいらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【リハビリテーション専門職の転職サイト】
医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
DESIGN-R®2020とは?褥瘡評価スケール
DESIGN-R®2020とは、褥瘡の重症度を分類し、治癒過程を数量化するためのツールです。褥瘡の深さや大きさなどの7つの項目があり、数値化することで重症度を定量的に比較評価することが可能です。DESIGN-R®2020は医療・ケアの分野で褥瘡評価の共通スケールとして広く活用されています。
DESIGN-R®2020の歴史
DESIGN-R®2020は、2002年に日本褥瘡学会が発表した「DESIGN」を前身としています。DESIGNは褥瘡の重症度を分類し、治癒過程を数量化することを目的として開発されました。
DESIGNという名称は、褥瘡の評価項目のうち深さ(Depth)、滲出液(Exudate)、大きさ(Size)、炎症/感染(Inflammation/Infection)、肉芽組織(Granulation tissue)、壊死組織(Necrotic tissue)の頭文字を取って作られたものになります。
DESIGNは褥瘡評価スケールとして広く使用されるようになり、2008年には褥瘡の深さ以外の項目について重症度を絶対的に評価し治癒過程を定量的に比較評価する「DESIGN-R®」に変更されました。「R」は評価を表すRatingを指しています。
さらに2020年に公表された「DESIGN-R®2020」では、急性期褥瘡のうち深部組織の損傷が疑われる場合に経時的な観察ができるよう、「深さ」の評価結果として新たにDTI(深部損傷褥瘡)が追加されました。また、同じケア・介入が繰り返されて治癒が遅延するケースが多かった臨界的定着に関しても、「炎症/感染」の評価結果として「臨界的定着疑い」も追加されております。
DESIGN-R®2020 評価用紙 評価表
DESIGN-R®2020で評価する際は上図のような評価用紙を使用すると褥瘡の経過を観察しやすくなります。一般社団法人日本褥瘡学会のホームページに「DESIGN-R®2020褥瘡経過評価用」のシートをがありますのでリンクを貼らせて頂きます。深さ以外の6項目については計0~66点の範囲で評価し、褥瘡の重症度が示されます。
深さについては損傷の程度を0~5点で評価し、DTIに該当する場合や壊死組織で覆われており判定ができない場合は、評価結果の欄にDTIIまたはDUと記載する仕組みになっております。
DESIGN-R®2020 評価項目
DESIGN-R®2020では以下の7つの項目で褥瘡の状態を評価します。
- 深さ(Depth)
- 滲出液(Exudate)
- 大きさ(Size)
- 炎症/感染(Inflammation/Infection)
- 肉芽組織(Granulation)
- 壊死組織(Necrotic tissue)
- ポケット(Pocket)
深さ(Depth)
2020年の改定ではDTIが評価に加わり、U(深さの判定が不能)では評価内容に「壊死組織で覆われ」という文言が加わりました。
創縁と創底の段差の段差の場合、創底の見える組織によって判定します。
創底が壊死組織により覆われており深さの判定ができない場合は、「DU」と判定します。
DDTI、DUと判定した場合、どちらも経過を追って深さの判定が可能となった時点で、判定の変更が必要になります。
褥瘡が発生していない、あるいは治癒した場合は、d0とします。
Exudate(滲出液)
ドレッシング材は種類によって吸水力が異なるため、ガーゼを貼付した時をイメージして重症度・点数の判定を行います。
1日1回の交換でもガーゼから浸出液があふれる場合は、E6と判定する。
1日2回の交換でもごく少量の浸出液の場合には、e1と判定する。
Size(大きさ)
皮膚損傷範囲の長径と短径を測定し、それぞれを掛け合わせます。【長径(cm)×短径(cm)】※短径とは長径と直交する最大径である。
皮膚損傷範囲については、持続する発赤の範囲も含めます。
褥瘡の大きさを測定する時には、毎回同一体位で測定する必要があります。
褥瘡にポケットがある場合は、ポケット部位は測定せず、肉眼的に外から見える部位だけを測定します。
Inflammation/Infection(炎症/感染)
2020年の改定では、3Cの臨界的定着疑いが追加されています。記載が3Cの場合、点数は3点として計算します。
炎症とは、壊死組織・圧迫・摩擦などによる機械的刺激により局所に起こった組織反応で、創周囲の発赤、腫脹、発熱、疼痛を伴うことを示します。
臨界的定着疑いの場合は、「創面にぬめりがあり浸出液が多い。肉芽があれば浮腫性で脆弱」などから判断します。
感染は、最近が生体内に侵入し、宿主体内において増殖します。症状としては、上記の発赤、腫脹、発熱、疼痛に加え、排膿、悪臭、全身的発熱などを伴うのが特徴になります。
Granulation(肉芽組織)
肉芽組織は良性か不良かの2つに大別されます。
今まではg0は「治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない」という内容になっていたが、2020年のDESIGN-Rの改定では深部損傷褥瘡疑いの場合も含まれるように変更されています。
深さがd0、d1の場合は必然的にg0となります。
深さがDUの場合は、顕在化している肉芽組織で評価します。
深さがDDTIの場合は、g0と判定します。
Necrotic tissue(壊死組織)
2020年のDESIGN-Rの改定による変更点はありません。白色壊死組織と黒色壊死組織の状態により判定します。
Pocket(ポケット)
ポケット全周(潰瘍面も含め)【長径(cm)×短径(cm)】から潰瘍の大きさを差し引いたものを測定します。
大きさを測定する時と同様に、ポケットを測定するときは、毎回同一体位で測定する必要があります。当然ですが、大きさとポケットは同一体位で測定します。
ポケットの大きさを測定する時には、目視だけではポケットの大きさを正確に測定することができないため、ポケット部に鑷子や綿棒などを挿入して、ポケットの大きさ・開口範囲を確認する必要があります。
DESIGN-R®2020 合計点数と記録方法
DESIGN-R®2020の合計点数は 0~66 点で判定します。
点数の表記方法は、次のような表記になります。
Ⅾ○-E○S○Ⅰ○G○N○P○:○点
注意点としては ①「英数字のスモールとラージを各項目の点数によって使い分けること」 ②「深さの点数は合計点に含めない」になります。
症例をもとに表記方法を確認してみます。
深さ(Depth):皮下組織までの損傷
滲出液(Exudate):中等量
大きさ(Size):5×5=25
炎症/感染(Inflammation/Infection):臨界的定着疑い(創面にぬめりあり)
肉芽組織(Granulation):良性肉芽が全く形成されていない
壊死組織(Necrotic tissue):柔らかい壊死組織あり
ポケット(Pocket):ポケットなし
この褥瘡をDESIGN-R®2020で評価すると、表記は以下のようになります。
D3 – e3 s8 I3C G6 N3 p0 :23点
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「DESIGN-R®2020」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
褥瘡の治療を行ううえで褥瘡の重症度分類であるDESIGN-R®2020は欠かすことができません。反対に褥瘡の予防では何が重要になるのでしょうか?これについての答えとしては、リスクアセスメントツールの使用が重要ということになります。
褥瘡のリスクアセスメントツールについては、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【褥瘡のリスクアセスメントスケールについての記事はこちらから】
参考文献
- 一般社団法人日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント.照林社.
- 真田弘美.高齢者における褥瘡の評価と治療.日本老年医学会雑誌.43巻,2号,2006年,p137-146.