
こんにちは!リハビリくんです!
今回は低栄養をキーワードに記事を書いていこうと思います!
最近、低栄養という言葉を聞くことが、以前よりもグッと増えたと感じています。リハビリテーション×栄養の関心が高まってきたことの表れだと思いますし、実際に診療報酬の方でも栄養に関係する改定は進んできています。しかし、まだまだ医療・介護における栄養状態の重要性は認知が不足しているところだと思っています。
- マラスムスやクワシオコルって何?
- 低栄養の病態や原因が知りたい
- 低栄養の分類には、疾患と炎症の合併状況が大きく関わっている
- 栄養スクリーニングツールは何を使えばいいの?
- GLIM基準って何?評価方法は?
こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!低栄養とは思った以上に複雑な病態です。特に高齢者の低栄養は、単なる栄養素の欠乏では説明できない場合が多くあります。低栄養状態の患者様・利用者様に対して適切に関わることができるようにするためにも、是非最後までご覧になってください!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
ここ近年はコロナ禍の影響もあり、外部の研修会などにも気軽に参加できなくなりましたよね。私の勤務先では、職場内での勉強会も規模が縮小していまいました。あらゆる方面で、以前と比較して自己研鑽する機会が減少してしまったように感じております。
そのような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠になります!
そこで、私自身も活用しており、大変役立っているのが下記の「リハノメ」です!
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低栄養の病態の変化
低栄養の問題は時代とともに変遷しています。一昔前の栄養学のテキストには典型的な低栄養の病態としてマラスムスとクワシオコルが掲載されています。
マラスムスとは「エネルギーの欠乏」が主体となって起こる栄養障害『慢性のエネルギー蛋白欠乏状態:PEM』です。同時に、たんぱく質摂取量も減少しています。特徴として著明な体重減少が認められます。
クワシオコルとは「たんぱく質の欠乏」が主体となって起こる栄養障害になります。この場合、エネルギー摂取量は比較的保たれています。特徴として、低栄養性の脂肪肝や低アルブミン血症、浮腫などが認められます。
現在、高齢者の低栄養の病態はマラスムスやクワシオコルだけで説明することはできなくなっていると考えられます。
その理由は疾患の存在になります。疾患を合併しない高齢者の低栄養の原因は主に栄養素の欠乏であり、病態はマラスムスやクワシオコルもしくは2つの混合型で説明することができます。
しかし、疾患を合併した高齢者の低栄養の原因や病態は、疾患に伴う炎症の存在が背景にあり、栄養素の欠乏だけでは説明することができません。
炎症については、急性疾患などに伴う短期間の急激な炎症惹起を侵襲、慢性疾患に伴う長期間の微弱な炎症惹起を悪液質と呼びます。
2012年にAND/ASPENが共同で研究した高齢者の低栄養に関するコンセンサス声明によると、高齢者を含む成人の栄養障害の原因は、急性疾患(侵襲)、慢性疾患(悪液質)、社会生活環境(飢餓)の3つに分類することができます。

ここでマラスムスとクワシオコルの話に戻って考えると、マラスムスとクワシオコルは広義の飢餓に相当することになります。そのため、やはり以前の栄養障害の考え方では侵襲と悪液質についての説明がつかないため考えが不十分といえます。
低栄養を疑い診断や分類を行うには、疾患や炎症の合併を常に考慮する必要性があります。主病名や併存疾患に注目して、炎症が低栄養に関係しているのかどうか意識して低栄養のアセスメントを行う必要があります。
悪液質については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【悪液質(カヘキシア)についての記事はこちらから】
疾患関連低栄養(DRM)について
高齢者の低栄養の診断や分類には、疾患や炎症の合併を常に考慮する必要性があります。栄養障害は飢餓(栄養摂取不足)と炎症の複合によって生じ、炎症の程度によって分類されます。
高齢者の栄養評価においては、BMI・体重減少・摂食量・体組成・浮腫・握力に加えて、主病名の治療経過や併存疾患の管理状態を確認する必要があります。
2016年にコペンハーゲンで開催されたESPEN学術集会においてGLIMが新しい栄養診断について検討を行い、栄養障害診断のアルゴリズムを提言しました。

疾患に関連した栄養障害をDRM(疾患関連栄養障害)と称し、高齢者を含む成人栄養障害の栄養診断において疾患や炎症を考慮すべきであると提言しています。
栄養スクリーニングツール
低栄養をスクリーニングおよび診断する意義は、栄養療法の対象の選別・抽出になります。また、リハビリテーションにおける栄養療法の目的は、①リハビリテーションの結果を最大化、②栄養障害に起因した有害事象の回避となります。
リハビリテーションのアウトカムとしては、退院時の日常生活動作だけでなく体重やBMI・握力・骨格筋量などの栄養指標が含まれます。さらに、有害事象の指標には、合併症の有無・在院日数・死亡率などが用いられることが多くなります。
低栄養のリスクと診断された対象者は正しく抽出され、それらは栄養療法の対象となります。リハビリテーションにおいても、入院直後の栄養状態が適切に評価されることが、その結果を変える可能性があります。
低栄養のスクリーニングには対象の属性・疾病・炎症の重症度などにより、それぞれに特有なツールが存在します。
成人〜高齢者用の栄養スクリーニングツールとしては、SGA、MST、SNAQ、NRS2002、MNA-SF、MPIなどが存在し、いずれのツールも信頼性と妥当性が報告されています。
この中でも、SGA・NRS2002・MNA-SFが世界中の医療機関で使用され、学術論文でも多く報告されています。このように低栄養のスクリーニングツールの数が多いことは様々な角度から評価することができ利点でもあるが、これという決定打がないということにもなります。
栄養スクリーニングおよび栄養アセスメントについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【栄養スクリーニングと栄養アセスメントについての記事はこちらから】
主観的包括的栄養評価:SGA

SGAは体重変化や食物摂取状況・消化器症状・活動性・ストレスとなる病態の評価などの簡単な問診と身体状況の視診・触診から構成される主観的な栄養アセスメントになります。
栄養アセスメント法は多々ありますが、SGAは特別な器具や装置などを用いず、病歴と触診などから得られる身体所見のみからスケーリングを行えるのが大きな特徴です。
客観的に栄養状態を評価するための指標として用いられる身体計測値、血液検査や尿検査も必要なく、簡便に栄養状態を評価できる点もメリットといえます。
軽度な低栄養状態は評価しにくいものの、中等度以上の低栄養状態のスクリーニングの精度は高く、血清アルブミン濃度をはじめとする、客観的な栄養評価の指標や身体計測値とよく相関することもわかっています。
SGAについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【主観的包括的栄養評価:SGAについての記事はこちらから】
評価法のダウンロードもできるようにしてあります!
NRS2002(Nutritional Risk Screening)
NRS2002は欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)が推奨していることもあり、特に欧州で広く用いられています。
主な指標として体重減少・BMI・食事摂取量・重症疾患の有無の4項目からなる初期スクリーニングと、栄養障害スコア・疾患重症度スコア・加齢によるスコアからなる最終スクリーニングから構成されます。採点方式がやや煩雑ですが、急性期病院において併存的妥当性が確認されています。
簡易栄養状態評価評表(MNA、MNA-SF)
高齢者向けの栄養アセスメントツールとして欧州で開発されたMNA、およびその簡易版であるMNA-SFは高齢者の栄養評価から近未来の有害事象の発生率を予測でき、その構造的な妥当性も十分に検証されています。
簡便かつ採血検査が不要であるため入院だけでなく外来や在宅、施設でも利用可能されています。

MNAについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【MNA®-SF:簡易栄養状態評価表についての記事はこちらから】
評価法のダウンロードもできるようにしてあります!
低栄養の診断基準:GLIM基準
前述のGLIMにより、2018年に世界初の低栄養診断国際基準である「GLIM基準」が提言されています。

GLIM基準の特徴は以下の通りになります。
- 低栄養の診断はスクリーニングとアセスメントの2段階で判定する
- アセスメントに病因が含まれている
- 重症度判定を行う必要がある
病因には疾患や外傷に関連する炎症が明記されており、高齢者を含む成人栄養障害の栄養診断では疾患や炎症を考慮すべきであると提言しています。
既存の栄養スクリーニングでは疾患や炎症が十分に考慮されていないものがほとんどであるため、GLIM基準は、疾患や炎症が十分考慮されているところが既存のスクリーニングツールと異なる点になります。

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参考文献
- 清水昭雄,藤島一郎.高齢者・サルコペニアの栄養療法.神経治療.Vol.39,No.1,2022,p13-17.
- 百崎良,安保雅博.リハビリテーションにおける栄養スクリーニング.Jpn J Rehabil Med .2017,54,p82-86.