
こんにちは!リハビリくんです!
患者様の心身機能や身体構造を説明するときに筋緊張や筋力、支持性の話になった経験がある方いらっしゃると思います。これらの言葉ってどれもよく使ったり聞いたりはしますが、正しく使おうとすると、意外と複雑で難しいですようね!
例えば、脳卒中片麻痺者の立位姿勢や歩行動作の問題点について説明するときに、どの用語をつかってどのように説明すれば正解であるのかって、私は若手の頃自信がありませんでした。そもそも「支持性」については実習生の頃レポートやレジュメでよく使用した記憶がありますが、よく分かっていませんでした。
しかし、今はこれらの用語の理解は重要だと考えております。患者様に対しては当然ですが、看護士等の他職種に説明をするときに正しい知識が必要になるためです。医療機関で働く理学療法士が円滑に働くための条件として、他職種からの信頼を高めるということが1つにあると思いますが、こういった身体機能に関する専門知識はリハ職から発信することになることが多いと思いますので押さえておきましょう!
そこで今回こちらの記事で、筋緊張低下・筋力低下・支持性低下について正しく理解できるように解説していきたいと思います。

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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筋緊張の低下について
筋緊張とは神経支配されている筋が、持続的かつ不随意的に一定の緊張状態を保つものと定義されます。運動や姿勢保持の際に、活動する骨格筋の準備状態に重要な役割を果たしています。
少し複雑な話になりますが、神経学的要素と非神経学的要素によって筋緊張を規定することができます。神経学的要素は、伸張反射による筋収縮を主とする製素で、反射性型素とも言われています。
非神経学的要素は、筋線維・筋膜・腱などの構成要素で、非反射性要素とも言われます。筋緊張が低下すると運動効率が低下し、他動的な動きに対し過度の可動性が観察され、姿勢保持安定性などにも影響します。筋緊張低下は末梢神経障害や小脳障害、大脳基底核障害などで認めることがあります。
筋緊張は臨床的には、「安静時に関節を他動的に動かして、筋を伸張する際に生じる抵抗感」と表現されます。
筋緊張の「低下」をみる場合には、伸展性テスト、筋硬度、懸振性検査が実施されます。評価指標としてはmodified Ashworth scaleが一般的となっていますが、筋緊張低下をグレード化することができていないため、そこは課題であると思います。
modified Ashworth scaleを始めとした筋緊張の評価方法については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【痙縮のメカニズムと評価方法についての記事はこちらから】
筋力低下について
骨格筋における随意的な最大筋力は、「絶対筋力」と「筋断面積」の積で表されます。絶対筋力は単位面積あたりに発生する筋出力で4〜6kg/cm2で考えることができます。
筋に発生する張力は筋断面積と相関し、筋収縮速度は筋長と相関します。骨格筋の基本的特性を構成している筋力低下は、これら構成要素の変性や機能不全による出力の低下を意味します。また、筋肉の変性や萎縮のほかに神経筋接合部の障害、神経系障害でも筋力低下は生じます。
臨床的に測定されるのは、関節運動により発生するモーメントであり、いわば関節トルクを筋力として捉えています。臨床では、例えば不動のため筋萎縮が起こり、関節トルク発揮不足があった場合に「筋力低下」と表現します。
筋力の「低下」をみる場合には、徒手で筋力を定性的に評価するMMT、筋トルクを測定する機器を用いた検査、握力測定などが実施されます。
筋緊張低下と筋力低下の違いについて
筋緊張低下と筋力低下の違いをわかりづらくしている一因に運動麻痺があります。運動麻痺とは、脳や脊髄、末梢神経が障害されることで、随意運動に支障が出る状態となっております。
この状態では、筋力低下(筋出力低下)および筋緊張の異常(低下または亢進)のどちらの症状も併せて生じる可能性があります。そのことで筋力低下であるのか、筋緊張低下であるのかの判断を複雑にし、間違った解釈に繋がっていると考えられます。
①「運動麻痺を代表とした神経系障害により筋緊張低下を認めているのか」
②「神経系障害により筋緊張低下を認め、更に筋力低下も付随した状態であるのか」
③「神経系の障害は認めないが、筋力低下を来した状態であるのか」見定められるようにしましょう。
支持性の低下について
支持性低下は臨床上便利な言葉ですが、同時に曖昧な用語だとも思います。私も自分が実習生だったときに作成したレジュメの問題点に◯◯の支持性低下…といった表現を使った記憶があります。
一般的に、姿勢保持や歩行動作などの様態を表すときに使うことが多く、筋力低下やアライメント不良などに起因します。立位時や歩行時の姿勢・運動制御について説明する時に使うことが多いでしょうか。
「支持性」をみる場合、姿勢制御やバランス調節の観点から考えると理解しやすいと思います。姿勢制御は環境因子や課題内容にも左右されますが、患者個体を考えた場合には、「認知機能」「感覚機能」「骨関節要素」「予測・反応的姿勢調節」「筋協調性要素」「筋力」等の構成要素が考えられます。
支持性低下はこのように、複数にわたる患者個体の要素、環境要素が組み合わさり説明できるものになります。姿勢制御やバランス調節が不良であり、その要因が複数ある場合に支持性低下という表現を使うと適切だと考えます。
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まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
この記事では、筋緊張低下、筋力低下、支持性低下の使い分けについて解説させて頂きました!
臨床場面で働いていると、やはりこれらの言葉を使って他職種、患者様やご家族様にご説明する機会は多くなってきますので、用語を正しく理解しておく必要があると思います。
こういった基本的な知識に欠けていると、やはり信頼関係は構築できないと思いますし、しっかりと理解した上でリハビリテーションを行った方が自分自身も働いていて充実するかと思います!
新入職員の指導においても、臨床実習などで実習生を担当する機会においても、必ずこれらの用語を使う場面は出てくると思いますので、少しでもヒントになれば幸いです。

参考文献
- 根本明宜.筋緊張異常とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2020,57,p1069-1076.
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