いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「筋トレ」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
筋力増強練習については、基本動作練習や日常生活動作練習と並んで臨床で実施する頻度の高いリハビリテーションプログラムの1つになると思います。
筋力低下が及ぼす全身への影響や活動・参加制限は大きく、低下した筋力に対しリハビリテーションを行うことは重要になります。筋力低下に対するアプローチなしではリハビリテーションは成り立たないと考えられます。
そんな筋力増強練習ですが、筋力トレーニングを行えば直ぐに筋力向上が得られる、そんなに都合の良いものではありません。
筋力が向上するには神経性の要因と筋肥大によるものの2つの要素がある訳ですが、どちらも一定の期間が必要になります。筋力増強練習を適切に実施するためには、筋力増強のメカニズムや効果的な筋力増強に必要な原則を理解する必要があります。
そうはいっても筋力増強については複雑なところもありますので、わからないこともいろいろとあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!
こちらの記事で筋力増強運動における理解を深め、臨床におけるリハビリテーションの一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。
主な取得資格は以下の通りです
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺
筋力トレーニングを行う前に
筋肉は「トレーニング」「休養」「栄養」の 3 要素が組み合わさることで成長することができます。これら 3 つの要素のうち、どれかひとつでも欠けていると思うような効果が得られない可能性があります。
筋トレ初心者の場合、早く成果を出したいために毎日トレーニングしたり、1 回のトレーニング量を極端に増やしてしまう傾向があります。
しかし筋力トレーニングは、身体に力学的ストレスをかける行為で、自身の筋肉に負荷をかけて筋繊維を壊す行為でもあります。そのため、適切な負荷量設定やトレーニング後は筋肉を休ませることも必要になります。
特に睡眠は成長ホルモンの分泌に関係しているため、筋力トレーニングによって壊された筋線維を修復したり、疲労した身体を回復させたりするために重要となります。
また、効率よく筋トレの効果を得るためには、たんぱく質の摂取が必要になります。プロテインなどの栄養補助食品によるたんぱく質の摂取に注目しやすいと思いますが、まずは普段の食生活のバランスを考えます。
3 大栄養素となる「タンパク質」「脂質」「炭水化物」を基本に「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」を合わせた 6 大栄養素をバランスよく摂取することが重要になります。
以上の「トレーニング」「休養」「栄養」の 3 要素が組み合わさることで、筋肉はより強く成長し、筋力の向上や筋肥大などの成果につながります。この仕組みは年齢に関わらずおきるため、高齢者でも筋肉を成長させることができます。
骨格筋(筋肉)の仕組みとメカニズム
筋肉は骨格筋、心筋、平滑筋の3つに分類されます。一般的にリハビリテーションなどでよく使う筋力については骨格筋の話になります。
骨格筋は可塑性に富んだ組織であり、物理・化学(代謝)的環境の変化に応じて機能・形態的に順応します。
例えば、筋力トレーニングのような過負荷によって筋肥大や筋力の増加が生じたり、寝たきりなどの不活動によって筋萎縮や筋力の低下が生じます。
骨格筋は運動器としてのみならず代謝臓器としても重要な役割を果たすことから、その機能・量調 節メカニズムの理解は私たちの健康維持増進を図るうえで重要な基盤となります。
はじめに、骨格筋の構造から説明していきます。骨格筋は、「筋束」と呼ばれる束が集まって出来ています。さらに筋束は、「筋線維」と呼ばれる長い線維が束になり構成されています。
この筋線維1本1本が、骨格筋の細胞に該当します。また、骨格筋は他の細胞と比べて長く、全長50cmに達するものもあります。そして、筋線維の細胞質には、「筋原線維」と呼ばれるタンパク質の束が詰まっています。
筋力トレーニングというと筋線維の数を増加させるというイメージがあるかもしれませんが、実際には筋線維の数は増えることはなく、筋線維の断面積を拡大させることになります。
つまり、筋力トレーニングにより筋線維の細胞質に詰まっている「筋原線維」と呼ばれるタンパク質を育てて、筋線維の断面積を拡大させることになります。
筋力強化(筋肥大)における 2 つの要因
筋力の向上には大きく分けて2つの要因があります。1つは「神経性の要因」で、もう1つが「筋肥大」になります。筋力を効率的に強くするためには筋力増強の機序を理解することも重要になります。以下に説明していきます。
神経性の要因
「神経性の要因」は「筋肥大」と比較すると筋力強化の初期の段階に生じます。こちらについては筋線維数の参加が増加することで筋力が強くなります。
イメージとしては、筋力発揮に参加する細胞数が増加したような状態になります。一般的に筋力を強くするためには一定の期間が必要といわれています。
しかし、実際はトレーニングを開始して僅かの期間で筋力が強くなることがあります。それは筋力向上の要因の1つである神経性要因の効果になります。
過去の研究により、筋力トレーニング開始から2週~4週の間に起こる筋力の変化は、筋肥大を伴わないことが報告されています。
筋肥大が起こらないうちの筋力の変化は、神経系の作用の変化であり、運動単位数の増加、発火頻度の増加・拮抗筋の制御、運動プログラムの改善などが関わっているとされています。
筋肉が収縮して生み出す力は、活動する運動単位の数と、運動神経が活動する頻度(発火頻度)に依存しております。
また、効率よく筋肉を収縮させて力を生み出すためには、拮抗する筋肉が主動作筋の動きを妨げないことも大切です。
筋肉トレーニング開始から2〜4週の間の筋力の変化は、筋肉が神経の作用によって力を生み出しやすくする期間であると言えます。
筋肥大
骨格筋は数多くの筋線維が連なって構成されますが、ひとつひとつの筋線維の断面積を拡大させることで筋肉が肥大します。
筋線維の数の増加は、胎児期までには完了すると言われており、筋力トレーニングを実施しても筋線維の数は不変となります。
筋線維の断面積の増加は、筋タンパクの合成が分解を上回ったときに増大していきます。この合成と分解の調節には主に筋タンパク質代謝がかかわると考えられています。
水分を除く主要な構成物であるタンパク質の出納バランスによって筋サイズが 決定されるという考え方であり、筋細胞内でのタンパク質合成が分解を上回ると筋肥大し、逆にタンパク質分解が合成を上回ると筋萎縮が生じます。
筋肥大については、筋力トレーニングを開始してから 8 週から 12 週間で完成されるという報告が多くあがっています。
筋力トレーニングを開始してから早い段階で力を発揮しやすくなったとしても、それは神経性の要因になるため、そこで筋力トレーニングをやめず、筋肥大が起こるまでトレーニングし続けることが重要になります。
トレーニングの 6 原則で筋肉を大きくする
筋力増強運動を実施して、効果的に筋力の向上を図るためには、6つのトレーニングの原則に従って行うことが重要になります。
筋力増強運動は闇雲に行っても効果が得られない可能性がありますし、無理な負荷量は怪我などに繋がる危険性があります。
筋力増強運動の基礎理論を学び安全で効果的にトレーニングを行っていきましょう。
過負荷の原則
筋力強化を図るうえでは負荷量の設定が重要になります。自らが持つ筋力に対し、極端に弱い負荷量で回数をこなしたところで筋力増強を期待することはできないためです。
そのためには、まずは負荷量設定について理解する必要がありますが、ここで過負荷の原則に基づく「RM法」が役立ちます。
RMとはRepetition Maximum(レペティション マキシマム)の頭文字をとったもので、日本語で訳すと最大反復回数と訳されます。
RM法とは、ある決まった運動強度(重量)に対して何回反復して関節運動を行うことができるかによって、自分の最大の運動強度(重量)を判断する方法になります。
例えば、上図のように片手にダンベルをもって肘を曲げる筋力トレーニングを実施したとします。
この動作については主に上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋の働きによって遂行されています。
何キロのダンベルを持ち上げられるかは人それぞれになりますが、対象者が全力を出し尽くして、なんとか1回持ち上げられる運動強度(重量)を1RMと表すことができます。
ある対象者が、片手にダンベルをもって肘を曲げるトレーニングの1RMが80kgだったと仮定します。
80kgは1回しか上げることができませんが 60 kgのダンベルであれば、なんとか 10 回上げることができます。その場合、対象者の 10 RMは 60 kgということになります。
RM法について覚えておきたい表記方法がもうひとつございます。文献などでよく使用されているのが、「⚪︎⚪︎% 1RM」という表記になります。
こちらは、なんとか1回持ち上げられる運動強度(1RM)の⚪︎⚪︎%の運動強度かということになります。
例えば 1RMが 80 kgの場合に筋肥大の向上を目的とするために 75 %の重量のダンベルを用いたとします。このときの運動強度について「75%1RM」と表すことができます。
以上が過負荷の原則の説明になります。RM法を活用して、どの程度の重量で何回反復するべきかを設定することが重要になります。
RM法については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【理学療法士が解説する筋力トレーニングの方法についての記事はこちらから】
漸増負荷の原則
「漸増」という言葉を日常会話で使用する機会は少ないと思いますが、漸増とは「ゆっくりと少しずつ」という意味になります。
つまり「漸増負荷」とは「時間をかけながらトレーニングの強度を少しずつ確実に上げていく」という負荷量の設定方法になります。
運動負荷量を上げるとそれに反応して体が強くなり、設定した負荷量での運動が徐々に楽にできるように変化していきます。
トレーニング開始時に60kgのダンベルを10回反復して上げる(10RM60kg)ことが限度だった人が、トレーニングを一定期間継続したことで、10回反復させることに余裕が出てきたことを想定してみます。
この時点で10回を超えて12回、13回とできるようになっているため、10RM60kgだったものは変化しており、1RMも向上しているはずです。
そうであるにも関わらず、トレーニング負荷を変化させずにトレーニングを継続するのは非効率的となります。特に筋パワーや筋肥大を目的とするのであれば尚更となります。
効果的な筋力増強効果を得るためには、漸増負荷の原則を活用して、筋力強化に合わせて少しずつ運動強度を高めていくことも重要になります。
反復性の原則
継続的な筋力増強練習が、筋力の向上や技能の習得につながるという原則になります。継続性の原則とも呼ばれます。
筋力増強の機序の項目でも説明しましたが、筋力が向上するには「神経性の要因」と「筋肥大」の2つの要素があります。
早く効果が現れると言われる神経性の要因でも筋力増強練習を開始してから2週間、筋肥大の方は早くても8週間は継続する必要があると考えられております。
筋力増強練習などトレーニングについては、人によっては大変であり、辛いものになると思いますので、効果が得られるまでの期間はモチベーションの維持が難しいこともあると思いますが、反復性の原則を意識して継続していくことで効果的な筋力増強を図ることができます。
特異性の原則
なんとなく人から指示された筋力増強運動を何も意識せずに実施するよりも、筋肉の走行を理解し、筋力強化の目的を(筋パワー・筋肥大・筋持久力)明確にして、1回1回の反復を行ったほうが筋力増強効果が得られるといわれており、このことを特異性の原則と呼びます。
当たり前の話になりますが、筋力増強は鍛えた部位で期待することができます。体幹のトレーニングを行えば腹筋群や背筋群の筋力増強に繋がりますし、ダンベルを使った上肢のトレーニングを行えば、肩や腕、手首の筋力増強に繋がります。
特異性の原則を意識し目的を明確にして、それに合った効果を得られる筋力増強練習に取り組むことが重要となります。
個別性の原則
運動の効果には年齢、性差、体格、体力、技術レ ベル、経験、健康状態、精神状態など多くの要因が関係します。
生物学的にホモサピエンスとして同じであっても、患者は人間としてひとりひとり異なります。
プロ野球選手の大谷翔平選手がどんなに効果的な筋力増強練習を行なっていたとしても、それは大谷翔平選手だからこそできる方法や負荷量なのであって、全ての人が同じようなトレーニングをすればいいという訳ではありません。
個別性の原則を考慮して、その対象者に合った運動処方を行う必要があります。つまり重要なことは、過負荷の原則に基づき、対象者に適した負荷量設定を行うことになります。
全面性の原則
「全身をバランスよく鍛えることが大事ですよ」という原則になります。
特定の筋肉であったり偏った動きに焦点を当てることは、長期的に考えると身体のバランスの崩れとなり、筋や関節に可逆的変成を起こしたり、怪我に繋がる可能性が高くなります。
魅せる身体つくりのために筋肉を部分的に鍛え上げたい方もいると思いますが、効果的な筋力増強のためには、有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチなどの体力要素もバランスよく高めることが重要になります。
筋トレ初心者 おすすめ メニュー
筋トレを始めたばかりの人が、無理をしてでも毎日行ってしまうことがあると思います。筋トレは闇雲に行えばいいものではなく、トレーニングの原則に則って実施する必要があります。少し難しく感じてしまいますが、基本的なルールに従えば筋トレ初心者でも筋力トレーニングを効果的に行うことができます。まず大切なことは、筋トレしたい筋肉とその目的を明確にして、意識しながらトレーニングを行うことになります。
どのようなメニューを選択するべきなのかについては、YouTubeなどの動画配信サービスで目的となる筋肉と合致する動画を検索し、実際に動画を視聴しながらトレーニングを行うのが効果的だと考えます。
最近では、筋トレや健康ブームにより様々な筋トレ動画コンテンツがございます。筋トレは継続するのが難しいという課題がありますので、1 人で黙々とやるよりは動画を視聴しながら一緒に頑張ってみるというスタイルの方が継続できると思います。
筆者のおすすめとしては、筋トレ系 YouTuber の CALISLIFE 自重トレというコンテンツになります。
こちらはトレーニング方法が自重によるものとなっておりますので、ダンベルなどの道具も不要ですし、全て自宅内で実施することができます。
鍛えたい部位ごとで「肩トレ」「脚トレ」「体幹トレ」といったようにジャンル分けもされているため、検索もしやすいですし動画数も 100 本越えと豊富になっております。
筋トレは高いお金を使わなくても、自宅で自分のペースで行うことができます。自分 1 人で何とかしようとしないで、現代の恵まれた環境を是非有効に活用していきましょう!
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「効果的に筋肉をつける方法」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事が筋力増強運動における理解力向上をもたらし、臨床におけるリハビリテーションに少しでもお力添えになれば幸いです!
筋力強化についての理解を深めるためには筋肉の収縮様式についても正しく知っておく必要があります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【筋肉の収縮様式についての記事はこちらから】
参考文献
- 小笠原理紀.運動による骨格筋肥大メカニズム.化学と生物.Vol.59,No.8,2021,p377-384.
- 木藤伸宏,金口瑛典,小澤純也.筋力増強運動の基本と実際.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p746-751.
- 津田英一.筋力増強の理論.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p740-745.