- EQ-5D( EuroQol )とは?( 5 次元+ EQ VAS で “ 主観の QOL ” をそろえる)
- 親記事・小記事の位置づけ
- 現場の詰まりどころ(まずここを固定すると集計が崩れない)
- EQ-5D-3L と EQ-5D-5L( 3 段階/ 5 段階 )の違い
- 実施手順(自己記入/面接の切替と回収チェック)
- 5 次元の “ 見どころ ”(面接で迷わない整理)
- プロファイル( 5 桁 )と EQ VAS の読み方(指数化は “ 先に条件をそろえる ”)
- ケース例(数値だけで “ 介入の焦点 ” を言語化する)
- SF-36 とどう使い分ける?( “ 詳細に掘る ” と “ 簡便にそろえる ”)
- よくある失敗( “ 数値はあるのに活用できない ” を防ぐ)
- 公式情報の確認先(日本語版の入手ガイド)
- よくある質問(FAQ)
- おわりに
- 参考文献
- 著者情報
EQ-5D( EuroQol )とは?( 5 次元+ EQ VAS で “ 主観の QOL ” をそろえる)
EQ-5D( EuroQol )は、健康状態を 5 つの次元で自己評価し、あわせて EQ VAS( 0–100 )で “ いまの総合的な健康感 ” を数値化する、汎用の健康関連 QOL( HRQOL )ツールです。運用のポイントは、回答の条件(自己記入/面接、時点、回収チェック)をそろえて、プロファイル( 5 桁 )と EQ VAS を同じ欄に残すことです。
本記事では、設問文そのものには触れずに、臨床で迷いやすい場面の整え方、3L / 5L の使い分け、読み取りとチーム共有の型をまとめます。まずは “ 数字をそろえる → 変化を言語化する ” までを 1 セットにして、再評価で使える形にします。
親記事・小記事の位置づけ
本記事( EQ-5D )は、汎用 HRQOL と PROM を “ 選ぶ→回す ” ための総論(親)から読むと理解が速くなります。加えて、汎用 HRQOL の代表として SF-36 とつなぐと、目的別の使い分けが明確になります。
| 区分 | 記事 | 役割 |
|---|---|---|
| 親(総論) | 健康関連 QOL( HRQOL )と PROM の選び方 | 目的設定/尺度選択/運用フローの “ 基本形 ” |
| 本記事 | EQ-5D( 3L / 5L・ EQ VAS・指数化の考え方 ) | 短時間で “ 変化の方向 ” をそろえるための運用標準 |
| 小(各論) | SF-36( 8 尺度・採点 ) | より詳細に “ どこが凹むか ” を掘れる汎用 HRQOL |
現場の詰まりどころ(まずここを固定すると集計が崩れない)
EQ-5D はシンプルなぶん、運用のズレが結果に直結します。特に “ 面接での言い換え ” と “ 評価時点のブレ ” は、経時比較を難しくします。
最初にそろえるのは、①方法(自己記入/面接)②評価時点(いつの健康状態か)③回収チェック(記入漏れ)④記録場所(プロファイル+ EQ VAS )の 4 つです。これだけで “ 使えるデータ ” が増えます。
| よくあるズレ | 困る理由 | そろえ方(最小ルール) |
|---|---|---|
| 自己記入と面接が混在 | 条件差が入って、変化が “ 本当に改善か ” 読みにくい | 必ず方法を記録し、同一患者は可能な範囲で方法を維持 |
| 評価時点がバラバラ | 痛みが強い直後など “ 特殊な瞬間 ” が固定される | 「本日の健康状態」など、時点の言い方を院内で統一 |
| 面接で説明が増える | 回答が寄りやすく、チーム間で再現しにくい | “ 番号の選び方 ” だけ短文で案内し、例示はしない |
| EQ VAS の未記入 | プロファイルだけになり、全体の体感が抜ける | 回収時に VAS を必ず確認し、空欄はその場で確認 |
| 記録場所が分散 | 共有・再評価のたびに探すことになり運用が止まる | プロファイル( 5 桁 )+ EQ VAS を “ 1 か所 ” に集約 |
EQ-5D-3L と EQ-5D-5L( 3 段階/ 5 段階 )の違い
まず重要なのは、院内で “ どちらを使うか ” を先に決めて、途中で混在させないことです。混在すると、同じ患者の変化が “ レベル設計の違い ” に引っ張られます。
ざっくり把握で良い場面は 3L、軽症〜中等症の細かな変化まで拾いたいなら 5L が向きます。どちらでも、運用の要点は同じ(条件固定+記録の一体化)です。
| 観点 | EQ-5D-3L | EQ-5D-5L |
|---|---|---|
| 回答の粒度 | 段階が少なく、全体像をつかみやすい | 段階が多く、変化を拾いやすい |
| 経時変化 | 小さな改善が見えにくいことがある | 軽症〜中等症の改善が見えやすい |
| 運用の注意 | 版の混在を避ける(途中で変更しない) | |
実施手順(自己記入/面接の切替と回収チェック)
実施の基本は “ 同じ条件で繰り返せる形 ” に整えることです。自己記入が難しい場合は面接に切り替えますが、その場合ほど “ 誘導しない ” 型が必要になります。
回収時は、記入漏れの確認と EQ VAS の確認に加えて、日時・方法(自己/面接)・担当者をセットで記録します。経時評価では、可能な範囲で同じ方法を維持します。
面接の “ 非誘導 ” テンプレ(短文で統一)
- 「番号は、いま感じる困りごとの大きさに近いものを選びます。」
- 「こちらから例え話や補足説明は足しません。」
- 「迷ったら、よりふだんに近いほうを選んでください。」
5 次元の “ 見どころ ”(面接で迷わない整理)
5 次元は、本人の主観(困りごと)を短時間で拾う枠組みです。最大能力ではなく、ふだんの生活での実感に寄せると、チームで共有しやすくなります。
各次元は “ できる/できない ” だけでなく、時間・疲労・見守りの必要性などの体感が混ざります。迷ったら、生活場面に戻して “ どの程度しんどいか ” を優先します。
| 次元 | 拾いたいもの(臨床の言葉にすると) | 迷いやすい所 |
|---|---|---|
| Mobility | 移動の “ しにくさ ”(屋内/屋外、段差、距離、補助具) | リハ室の歩行だけで決めてしまう |
| Self-care | 身の回り動作の “ やりにくさ ”(準備〜後片付けまで含む) | 動作は可能でも、時間・疲労・見守りが反映されにくい |
| Usual activities | いつもの役割・活動の遂行感(仕事、家事、学業、余暇) | 一部できることに引っ張られて、全体の負担が抜ける |
| Pain / Discomfort | 痛み・不快の総合負担(強さ、頻度、持続、対処の効き) | 安静時のみ/運動時のみで判断してしまう |
| Anxiety / Depression | 不安や気分の落ち込みの体験(持続、日内変動、回避) | 診断名の有無で判断してしまう |
プロファイル( 5 桁 )と EQ VAS の読み方(指数化は “ 先に条件をそろえる ”)
運用の最小単位は 2 つです。①プロファイル( 5 桁 )と、②EQ VAS( 0–100 )をセットで残すと、数値だけで “ どこが良くなったか ” を話しやすくなります。
指数(価値セットにもとづく 1 つの指標)は便利ですが、臨床では “ どの次元が変化したか ” と EQ VAS の変化をセットで追うほうが、介入の焦点が明確になります。
- 各次元のレベル(数字)を記録する
- 5 桁のプロファイルに連結する(例: 2-2-3-3-2 → 22332 )
- 指数は院内の手順・ツールで算出し、指数+ EQ VAS で報告する
ケース例(数値だけで “ 介入の焦点 ” を言語化する)
EQ-5D は、数値の変化を “ 何がボトルネックか ” に翻訳できると強いです。プロファイルと EQ VAS を並べるだけで、チームで見たい論点がそろいます。
ここでは例として、次元ごとの変化を “ 次の 1 手 ” に落とす見方を示します(指数の大小だけに寄せないのがコツです)。
| 場面 | 評価(例) | 介入と再評価の視点 |
|---|---|---|
| 術後 | 22332、EQ VAS 65 → 1 週後 21222、EQ VAS 75 | 痛みの最適化+セルフケア手順の整理が、活動へ波及した可能性 |
| 慢性腰痛 | 32342、EQ VAS 55 → 4 週後 22232、EQ VAS 68 | 疼痛教育+活動量の漸増で、痛みと活動を同時に改善する方向 |
| 気分の落ち込み | 22324、EQ VAS 48 → 6 週後 22222、EQ VAS 70 | 心理面・睡眠・服薬を含む連携で、日常活動の回復につながる |
SF-36 とどう使い分ける?( “ 詳細に掘る ” と “ 簡便にそろえる ”)
EQ-5D は短時間で “ 変化の方向 ” をそろえるのが得意で、SF-36 はより細かい領域まで “ どこが凹むか ” を掘れるのが強みです。どちらが正しいではなく、目的で決めると運用が回ります。
汎用 HRQOL をもう 1 段深く見たい場合は、SF-36 の使い方と読み方( 8 尺度・採点 )もあわせて整理しておくと、説明と再評価が一気に楽になります。
よくある失敗( “ 数値はあるのに活用できない ” を防ぐ)
EQ-5D は、採点が簡単な分 “ 記録の型 ” がないと、次の 1 手につながりません。失敗はだいたい、条件のズレか、言語化の不足で起こります。
以下の 3 つ(条件固定/非誘導/プロファイル+ EQ VAS のセット記録)を守ると、チーム共有の質が上がります。
| 失敗 | 起きること | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 面接で説明が増える | 患者の回答が “ こちらの言い方 ” に寄る | テンプレ 3 文を共有して、例示しない運用に統一 |
| プロファイルだけ残す | 全体の体感が抜けて、変化が読みづらい | 必ず EQ VAS も同じ欄に記録する |
| 指数だけ見て終わる | 介入の焦点がぼやける | “ どの次元が変化したか ” を先に確認してから説明する |
公式情報の確認先(日本語版の入手ガイド)
院内で “ どの版を使うか ” や、参照すべき情報の窓口を 1 つ決めておくと、運用の相談先がぶれません。必要に応じて、公式の案内ページを参照してください。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
面接時、説明はどこまでして良いですか?
説明は “ 番号の選び方 ” の確認にとどめ、例え話や言い換えは増やしません。迷った場合は「ふだんに近いほう」を短く案内し、回答の再現性を優先します。
EQ VAS はどう扱えばいいですか?
EQ VAS は、いまの総合的な自己評価( 0〜100 )です。プロファイル( 5 桁 )とは別軸なので、どちらか片方ではなく “ 2 つをセット ” で見て、変化の方向性を言語化します。
自己記入と面接が混在してしまいました
まずは方法(自己/面接)を記録して、比較時に織り込みます。次回以降は「どの条件なら自己記入が可能か」「どの条件で面接に切り替えるか」を決め、同一患者の経時評価ではできるだけ方法をそろえます。
指数(スコア換算)だけ見れば十分ですか?
指数は便利ですが、臨床では “ どの次元が変化したか ” と EQ VAS の変化をセットで追うほうが、介入の焦点が明確になります。まずプロファイルの変化を見てから説明すると、チームで共有しやすくなります。
おわりに
EQ-5D は、条件の統一 → 非誘導 → 記録(プロファイル+ EQ VAS ) → 再評価の順に整えると、チームで同じ言葉で変化を追えるようになります。
面談準備のチェックと、職場選びの評価シートもまとめて整えたい方は、/mynavi-medical/#download から一式をそろえておくと、次の行動に移りやすくなります。
参考文献
- EuroQol Group. EuroQol–a new facility for the measurement of health-related quality of life. Health Policy. 1990;16(3):199-208. doi:10.1016/0168-8510(90)90421-9
- Brooks R. EuroQol: the current state of play. Health Policy. 1996;37(1):53-72. doi:10.1016/0168-8510(96)00822-6
- Rabin R, de Charro F. EQ-5D: a measure of health status from the EuroQol Group. Ann Med. 2001;33(5):337-343. doi:10.3109/07853890109002087
- Herdman M, Gudex C, Lloyd A, et al. Development and preliminary testing of the EQ-5D-5L. Qual Life Res. 2011;20(10):1727-1736. doi:10.1007/s11136-011-9903-x
- Shiroiwa T, Ikeda S, Noto S, et al. Scoring for EQ-5D-5L Health States in Japan. Value Health. 2016;19(5):648-654. doi:10.1016/j.jval.2016.02.009
- Shiroiwa T, Fukuda T, Ikeda S, et al. Japanese population norms of EQ-5D-5L. Value Health. 2021;24(8):1177-1184. doi:10.1016/j.jval.2021.04.1826
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


