こんにちは!リハビリくんです!
この記事では「筋肉の収縮様式」をキーワードに内容を整理していきます。
筋力トレーニングにおいては、関節可動域練習や基本動作練習と並んで、リハビリテーションにおいて必要不可欠なプログラムの1つになるかと思います。
そんな筋力トレーニングですが、筋の収縮様式を正しく理解したうえで実施することができているでしょうか?
筋の収縮様式には静的収縮、動的収縮、等尺性収縮、等張性収縮、等速性収縮と複数の様式があり、それぞれ長所・短所と特徴があります。
筋力トレーニングの効果を最大限もたらすためには、これらについて理解したうえで実施する必要がありますが、収縮の違いが分かりにくかったり、アイソメトリック・アイソトニック・アイソキネティックといったように突然英語が出てきたりして苦手意識がある方がいらっしゃると思います。
そんな人のために、こちらの記事をまとめました!この記事を読むことで明日からの臨床で筋肉の収縮様式を理解したうえで筋力トレーニングを実施することができるようになることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。
- 筋肉の収縮様式の種類について
- それぞれの収縮様式における特徴
- 筋の収縮に関係する用語の理解
- 筋力トレーニングにおいて考えるべきこと
こちらの記事で筋肉の収縮様式における理解を深め、臨床におけるリハビリテーションの一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
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筋肉の収縮様式をわかりやすく解説
己の身体のためのトレーニング、高齢者に対する筋力増強練習、筋力をつける目的は様々でありますが、効果的な筋力強化を図るためには筋肉の収縮様式を理解する必要があります。
この筋肉の収縮様式についてですが、複数の収縮様式に分類されているため分かりにくく混乱してしまう方もいらっしゃると思います。こちらの記事では筋肉の収縮様式をわかりやすく解説できるように心掛けていきます。
関節運動の有無による分類
まず始めに、筋肉の収縮様式を関節運動の有無により分類すると、静的収縮と動的収縮に分かれます。
意味合いについては、どちらも名前の通りになりますが、静的収縮は関節運動を伴わない筋収縮になります。例えば、手に鉄アレイを持って肘関節屈曲45度で動かないように保持している場合、上腕二頭筋の収縮様式は静的収縮となります。
一方、動的収縮は関節運動を伴う筋収縮になります。例えば、手に鉄アレイを持って肘関節を伸展位から90度に屈曲させた場合、上腕二頭筋の収縮様式は動的収縮となります。
動的収縮:求心性収縮 or 遠心性収縮
動的収縮を詳しく考えたい場合、先に求心性収縮(短縮性収縮)と遠心性収縮(伸張性収縮)のことを考える必要があります。先に等張性収縮と等速性収縮のことを考えると混乱しやすいと思います。
求心性収縮(短縮性収縮)と遠心性収縮(伸張性収縮)については、筋の収縮様式で出てくる他の言葉に比べてば、シンプルでわかりやすいと思います。
求心性収縮(短縮性収縮)とは名前の通り、筋肉が縮まりながら収縮することを示します。手に鉄アレイを持って肘関節を伸展位から90度に屈曲させた場合、上腕二頭筋の収縮様式は求心性収縮(短縮性収縮)となります。
反対に伸張性収縮は筋肉が伸びながら収縮することを意味します。肘関節90度屈曲位で鉄アレイを持った姿勢から、肘を伸展させながらゆっくり降ろす動作時の上腕二頭筋の収縮様式は遠心性収縮(伸張性収縮)となります。
短縮性収縮は求心性収縮と同義であり、伸張性収縮は遠心性収縮と同義であります。
動的収縮であれば必ず求心性収縮(短縮性収縮)か伸張性収縮のどちらかに分類されます。そして、静的収縮であれば等尺性収縮ということになります。
つまり筋肉の収縮様式は、以下の3パターンのいずれかに当てはまるということになります。更に詳しく分類していくと等張性収縮と等速性収縮についても理解する必要がありますが、基本形として下記を理解しておきましょう。
- 静的収縮による等尺性収縮
- 動的収縮による短縮性収縮
- 動的収縮による伸張性収縮
等張性収縮と等速性収縮とは
前項にて動的収縮は求心性収縮(短縮性収縮)か伸張性収縮のどちらかに分類される旨を説明しましたが、更に細分化すると、動的収縮の中には等張性収縮と等速性収縮という収縮様式が存在します。
等張性収縮と等速性収縮については、他の収縮様式と比較しても想像しづらい部分もあり、筋の収縮様式に苦手意識がある方は、このあたりが苦手の原因になっているのではないかと考えます。
等張性収縮と等速性収縮について言葉で表すと、等張性収縮とは筋の発生する張力が一定となるような筋の収縮の仕方になります。一方、等速性筋収縮とは筋の収縮速度が一定となるような筋の収縮の仕方になります。
どちらも動的収縮となりますので、関節運動を認める動きになり、筋肉の長さは縮んだり伸びたりします。その中で筋が縮んだり伸びたりする張力が一定になる特別な収縮様式を等張性収縮、筋の収縮速度が一定になる特別な収縮様式を等速性収縮といいます。
動的収縮を整理すると以下のパターンに分類されることになります。
- 求心性収縮のみ(筋の発生する張力や収縮速度は一定ではない)
- 遠心性収縮のみ(筋の発生する張力や収縮速度は一定ではない)
- 求心性収縮かつ等張性収縮
- 遠心性収縮かつ等張性収縮
- 求心性収縮かつ等速性収縮
- 遠心性収縮かつ等速性収縮
筋の収縮に関わる用語について
筋の収縮様式について日本語で説明してきましたが、書籍や文献を確認すると英語で表現することも多いため、用語を整理しておきます。
- 等尺性筋収縮:アイソメトリック筋収縮(Isometric Contraction)
- 等張性筋収縮:アイソトニック筋収縮(Isotonic Contraction)
- 等速性筋収縮:アイソキネティック筋収縮(Isokinetic Contraction)
- 求心性筋収縮:コンセントリック筋収縮(Concentric Contraction)
- 遠心性筋収縮:エキセントリック筋収縮(Eccentric Contraction)
等尺性収縮とは?運動の例をだしてわかりやすく解説
胸の前で両手を合わせ、左右の手を押し合う上腕筋二頭筋や大胸筋のトレーニングをご存知でしょうか。このような収縮様式が等尺性収縮になります。
合掌のポーズで強く左右の手を押し合う程、上肢や胸部には抵抗(反力)が生じることになります。この抵抗(反力)が筋肉への負荷になります。手で押そうとする力が抵抗(反力)そのものになりますので、押した力と抵抗は釣り合った状態になります。
これを関節運動で表すと、「関節を動かさずに筋を収縮させている状態」になります。筋は収縮しても関節が動かないため、筋群の全長に変化はありません。これを等尺性と表現しています。
筋力測定でも、等尺性収縮による筋力を測定していることがほとんどだと思います。徒手筋力テスト(MMT)、ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を使用した筋力測定、一般的な身体機能検査で実施する握力や背筋力の測定についても等尺性収縮による筋力を測定しています。
等張性収縮とは?運動の例をだしてわかりやすく解説
等張性収縮については重りを使用したエクササイズで想像すると理解しやすいと思います。
手に3kgの鉄アレイを持って肘関節を伸展位から90度に屈曲させた場合の、上腕二頭筋の収縮について想像してみます。
上腕二頭筋にかかる張力はダンベルの質量になるため、伸展位から90度へと動かすまで一定の重さになります。すなわち、肘関節を伸ばした位置から90度に屈曲させるまで、一定の負荷量が上腕二頭筋に対してかかります。この収縮様式を等張性収縮と呼んでおります。
しかし、厳密にいうと重りを持ち上げるときの筋にかかる負荷は関節の角度によっても変化するため、一定とはいえません。
人体の運動においては真の等張性収縮が発生することは考えづらく、あくまで筋力トレーニングの世界における等張性収縮とは、等尺性収縮と相反する方法として位置づけられていると考えるといいと思います。
等速性収縮とは?等張性収縮と等尺性収縮の掛け合わせ
等速性収縮の特徴は等張性収縮と等尺性収縮の両方の特性を上手く組み合わせたものになります。
筋の収縮速度が一定となるような筋の収縮であり、日常生活で発生することはなく、関節の角速度を一定に保つ機構を持った特殊な装置を用いて発生させる必要があります。
等速性収縮は、一定速度の回転運動のもとで上肢や下肢の運動中の全範囲に出力した筋力に応じた抵抗を与えることができるため安全で無理のない抵抗運動を行うことができます。
また設定速度を低速から高速まで変更できるため、対象者に適した負荷量に調整することができることも特徴的になります。
等速性収縮を活用したトレーニングは、スポーツ選手からリハビリテーションが必要となる高齢者など幅広い対象者に対しての運動手段として利用されており、その効果は1960年台後半以降、数多くの研究成果が報告されています。
筋力を効果的に強化するためには、筋力増強の機序やトレーニングの原則について理解する必要があります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【効率的な筋力増強の仕組みについての記事はこちらから】
短縮性収縮、伸張性収縮、等尺性筋収縮の使い分けについて
求心性収縮(短縮性収縮)
求心性収縮(短縮性収縮)とは、簡単にいえば筋肉が縮みながら収縮し、力を発揮している状態になります。
例えば、手に鉄アレイを持って肘関節を伸展位から90度に屈曲させる求心性収縮(短縮性収縮)による筋力トレーニングを実施するとします。このトレーニングにおける、この対象者の 1 RM(正しいフォームで 1 回だけ挙げることができる最大重量)は 10 kgとなります。
そのため、余裕をもって 5 kgの鉄アレイで設定します。この場合、筋収縮の力が重量に勝っているので、筋肉が収縮して関節が動き、重りが動きます。この一連の流れが短縮性収縮になります。
筋力トレーニングにおいて最も意識されやすいのがこの求心性収縮(短縮性収縮)で、運動や動作になれるためにとても重要な筋収縮になります。
しかし意外なことに、求心性収縮(短縮性収縮)は遠心性収縮(伸張性収縮)や等尺性収縮と比較すると筋肥大の効果は低いと考えられています。筋肉にかかる負荷は、遠心性収縮 > 等尺性収縮 > 求心性収縮といわれています。
求心性収縮(短縮性収縮)と遠心性収縮(伸張性収縮)のどっちが強いのか疑問に感じる人が多いかと思いますが、遠心性収縮(伸張性収縮)の方が筋肉に強い負荷をかけることができるため、筋肥大を目的にする場合の筋トレ効果は優れているという結論になります。
遠心性収縮(伸張性収縮)
遠心性収縮(伸張性収縮)は、筋肉が伸びながら収縮し力を発揮している状態を示します。「伸びながら収縮」と言うと矛盾しているような印象を受けるかもしれませんが、実は人間はこの遠心性収縮(伸張性収縮)を日常生活の様々な場面で発揮しながら生活を送っております。
スーパーで売っている10kgの米袋を想像してみましょう。スーパーで購入後、家まで持って帰ってきて、やっとの思いで腰を下ろして床に置こうとするその瞬間、上腕二頭筋は遠心性収縮(伸張性収縮)を発揮しております。
遠心性収縮(伸張性収縮)の長所は求心性収縮(短縮性収縮)の 1.5 倍程度の重量まで扱えるというところになります。
例えば、先ほど手に鉄アレイを持って求心性収縮(短縮性収縮)によって、肘を曲げるトレーニングの 1 RMが 10 kgと仮定しましたが、遠心性収縮(伸張性収縮)であれば 15 kgの鉄アレイまでブレーキをかけながら床に下ろすことができます。
「持ち上げる事は出来なくても、ゆっくり耐えながら降ろす事は出来る」という重量設定は筋肉に強烈な負荷をかけることができます。そのため、遠心性収縮(伸張性収縮)は筋肥大に極めて効果的な筋収縮とされています。
等尺性筋収縮
等尺性筋収縮は、筋肉の長さが変わらないまま収縮し力を発揮している状態になります。簡単に言うと、力を入れても対象となる物体が動かない時の筋収縮のことになります。
例えば壁を両手でどんなに強く押しても壁は動かなければ、胸や腕の筋肉も伸び縮みしません。しかしこの時、筋肉は収縮しており、自分が出せる範囲の筋力が発揮されています。
等尺性筋収縮は、自らの最大筋力以上の負荷が掛からない為、怪我や故障のリスクが少なく、高齢者などのリハビリテーションや体幹強化トレーニングなどの活用に向いております。その反面、筋肉の伸び縮みが重要視される筋肥大向けのトレーニングにおいては効果が得られにくい可能性があります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「筋肉の収縮様式」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事で筋肉の収縮様式における理解を深め、臨床におけるリハビリテーションの一助になると幸いです。
効率的な筋力トレーニングのためには筋肉の収縮様式を理解することも重要になりますが、RM法を用いた負荷量設定についても理解する必要があります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【理学療法士が解説する筋力トレーニングの方法についての記事はこちらから】
参考文献
- 市橋則明.筋力トレーニングの基礎知識一筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズムー.京都大学医療技術短期大学部紀要別冊.健康人間学,第9号,1997,p33-39.
- 津田英一.筋力増強の理論.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p740-745.