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低栄養診断の歴史
低栄養診断については 2018 年に GLIM 基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition)が開発されたことが記憶に新しいですが、GLIM 基準の他にも国際的に使用されてきた低栄養診断方法がございます。
こちらの記事では下記の 3 種類の低栄養診断について解説します。
- 成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)
- 低栄養の診断的定義(ESPEN)
- GLIM 基準
これら 3 種類のツール、それぞれの低栄養診断を学ぶことで、低栄養診断の理解が深まり、臨床における栄養管理の質が高まると考えられます。
用語整理
低栄養診断の詳細な説明に入る前に、これから使用する用語について簡単に整理させていただきます。
◯◯学会、その略称(ローマ字表記)が複数出てくるため、混乱しやすいところだと考えられます。
- 欧州臨床栄養代謝学会(the European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:ESPEN)
- 米国静脈経腸栄養学会(the American Society for Parenteral and Enteral Nutrition:A.S.P.E.N.)
- 米国栄養と食のアカデミー(the Academy of Nutrition and Dietetics:AND)
- ラテンアメリカ静脈経腸栄養学会(FELANPE)
- アジア静脈経腸栄養学会(Parenteral and Enteral Nutrition Society of Asia:PENSA)
- 日本栄養治療学会(Japanese Society for
Parenteral and Enteral Nutrition Therapy:JSPEN)
それでは本題に移らさせていただきます。
成人低栄養の成因別分類法(ESPEN / A.S.P.E.N.)
低栄養診断を解説する前に「成人低栄養の成因別分類法」について解説します。
低栄養に関しては、これからの日本にとって大きな課題となることが判明してきたこともあり、ここ数十年で急速に病態理解が進んでおります。
2010 年には欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)と米国静脈経腸栄養学会(A.S.P.E.N.)による国際ガイドライン委員会より、成人低栄養症候群の成因別分類法が提案されております。
「成人低栄養症候群の成因別分類法(ESPEN / A.S.P.E.N.)」
- 炎症反応が存在せず、栄養摂取不足によって生じる飢餓関連低栄養(starvation-related malnutrition)
- 軽度から中等度の持続的炎症により生じる慢性疾患関連低栄養(chronic disease- related malnutrition)
- 急性で強い炎症によって生じる急性疾患または外傷関連低栄養(acute disease or injury related malnutrition)
「成人低栄養症候群の成因別分類法」により、成人低栄養は 3 タイプに分類することができます。低栄養の成因に焦点を当てた分類方法になるため、栄養管理計画の立案、栄養状態の予後予測にも有用となります。
成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)
「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」とは、臨床現場で低栄養を適切に診断・介入することを支援する目的で作成された指標になります。
前述した欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)と米国静脈経腸栄養学会(A.S.P.E.N.)による「成人低栄養症候群の成因別分類法(ESPEN / A.S.P.E.N.)」に基づいて、低栄養診断基準の標準化を目的に 2012 年に公表されたものが「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」になります。
「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」では、低栄養を以下の 3 タイプに分類しています。
「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」
- Acute illness or injury(急性疾患 / 外傷)
- Chronic illness(慢性疾患)
- Social or Environmental Circumstances(社会生活環境)
「成人低栄養の成因別分類法(ESPEN / A.S.P.E.N.)」で飢餓関連低栄養と定義していたものを、病院のみでなく在宅を含めた幅広い状況で使用できる用語であるSocial or Environmental Circumstances(社会生活環境)に置き換えています。
また、低栄養のタイプを定めるだけではなく、「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」では、低栄養診断を行うことができます。
「成人低栄養の成因別特徴(AND / A.S.P.E.N.)」
- 摂取量不足
- 経時的な体重減少
- 骨格筋量減少
- 皮下脂肪減少
- 水分貯留(浮腫、腹水)
- 握力低下(身体機能の低下)
上記のの 6 項目のうち 2 項目以上該当した場合、低栄養と診断することができます。
低栄養の診断的定義(ESPEN)
欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)は、2015 年に低栄養の診断的定義 (Diagnostic criteria)を提唱しています。
低栄養の診断的定義(ESPEN)は 2 段階構成となっています。1 step が低栄養スクリーニング、2 step がアセスメントになります。
【1 step:低栄養スクリーニング】
低栄養スクリーニングツールは「MUST」「NRS 2002」「MNA®-SF」のいずれかを使用することが推奨されています。低栄養スクリーニングを実施した結果、「低栄養のリスクあり」という結果になった場合には 2 step へと続きます。
【2 step:栄養アセスメント】
2 step では「低栄養のリスクあり」と抽出された対象者を次の 3 つの基準に該当するかどうかを評価し、1 つでと該当項目があれば低栄養と診断されます。
- BMI < 18.5 ㎏/㎡
- 経時的な体重減少かつ BMI < 20 ㎏/㎡(70 歳以上の場合は BMI < 22 ㎏/㎡)
- 経時的な体重減少かつ除脂肪量指数 < 15.0 ㎏/㎡(女性)、除脂肪量指数 < 17.0 ㎏/㎡(男性)
除脂肪量指数とは FFMI(Fat Free Mass Index)と略され、体重から体脂肪量を除くことで「筋肉の量」を数値化する指標となります。
FFMI の算出式は「徐脂肪体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」となります。徐脂肪体重は「体重 − 体脂肪量」で算出します。
GLIM 基準
GLIM 基準は、2018 年に世界の主要な臨床栄養学会(ESPEN、PENSA、FELANPE、A.S.P.E.N.)が協力して開発した成人の低栄養診断基準になります。

GLIM基準による低栄養診断は、「1. 栄養障害リスクの同定」「2. 栄養障害診断」「3. 栄養障害重症度評価」の 3 つのステップからなる 3 段階構成となっています。
GLIM 基準については、他の記事で詳しくまとめています!《【GLIM基準とは】グリム基準の使い方|栄養障害診断|重症度評価》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「低栄養の診断基準」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで低栄養診断についての理解が深まり、臨床に欠かすことができない栄養管理への一助へとなれば幸いです。
参考文献
- 西岡心大.低栄養とリハビリテーション栄養管理の考え方-特にエネルギー必要量に関して-.日本静脈経腸栄養学会雑誌.3(14),p944-948,2016.
- 前田圭介.歯科医が知っておきたい低栄養の診かたとその対応.老年医学.第32巻,第3号,2017,p317-322.