AND/ASPENの6特性とは?低栄養の診断・記録方法

栄養・嚥下
記事内に広告が含まれています。

AND / ASPENの6特性は何を判断する?

AND / ASPENの6特性は、成人の低栄養を同定・診断・記録するための臨床特性です。成因を飢餓関連、慢性疾患関連、急性疾患・外傷関連の3区分で整理したうえで、エネルギー摂取不足、体重減少、筋肉量減少、皮下脂肪減少、浮腫、握力低下を確認します。基本は6特性のうち2項目以上であり、該当数だけでなく、程度・期間・判断根拠を記録することが重要です。

栄養評価の入口から確認する
栄養スクリーニングの全体像を見る

2012年のコンセンサスで示された枠組みは、現在、ASPENの公式情報ではAcademy of Nutrition & Dietetics / ASPEN Indicators for Malnutrition(AAIM)とも表記されています。本記事では、検索時に使われることが多い「AND / ASPEN」と、現在の呼称である「AAIM」を同じ枠組みとして扱います。

一方、GLIMは別の低栄養診断枠組みです。AAIMの後に必ずGLIMを実施するという一本道ではなく、施設の採用基準や評価体制に応じて、AAIM、GLIM、SGAなどから使用する方法を決めます。

結論:成因を整理し、6特性のうち2項目以上を確認します

AND / ASPENでは、最初に疾患背景と炎症の程度から低栄養の成因を整理し、続いて6特性を確認します。成因3区分だけでは低栄養の診断は完結せず、反対に6特性だけを病態背景と切り離して判断することも避けます。

最初に押さえる3点
  • 低栄養の成因は、炎症と疾患背景から3区分で整理する
  • 低栄養の同定には、6特性のうち2項目以上を用いる
  • 重症度は該当項目の数ではなく、程度と期間を含めて判断する

「2項目以上」は単純な合計点ではありません。例えば、体重減少と摂取不足が確認できても、その期間、変化量、浮腫の影響、測定条件が不明であれば、重症度や介入方針まで適切に判断できません。何が該当したか、どの根拠で判断したか、何が未評価かをセットで残します。

低栄養評価の流れとAAIMの位置づけ

低栄養評価は、スクリーニング、包括的栄養評価、診断、介入、再評価の順に整理します。AAIMは、包括的栄養評価で得られた情報をもとに、6特性から低栄養を同定する枠組みです。

栄養スクリーニング、包括的栄養評価、AND・ASPENの6特性、GLIM、介入・記録・再評価の関係を示した図版
低栄養評価の流れと、AND / ASPENの6特性およびGLIMの位置づけ

図版は評価全体の流れを整理した概念図です。6特性の正式な項目名、該当根拠、重症度の判断は、以下の表と施設で採用している正式な基準を確認してください。

  1. 栄養スクリーニング:検証された方法で低栄養リスクを拾う
  2. 包括的栄養評価:食事、体重、身体所見、病歴、疾患負荷などを確認する
  3. 低栄養の同定:AAIMを使う場合は、6特性のうち2項目以上と成因背景を確認する
  4. 介入と再評価:栄養支援、疾患治療、活動・運動、記録、再評価へつなげる

AND / ASPENの6特性と確認ポイント

6特性は、エネルギー摂取不足、体重減少、筋肉量減少、皮下脂肪減少、液体貯留、握力低下です。各特性を「あり・なし・未評価」に分け、判断根拠を短く記録します。

AND / ASPENの6特性と実務上の確認ポイント
6特性 主に確認すること 記録する根拠 判断時の注意
エネルギー摂取不足 必要量に対する摂取量と継続期間 食事摂取率、経腸・静脈栄養、禁食期間、摂取低下の理由 「食べている」だけで十分量とは判断せず、必要量との関係を確認する
体重減少 減少量、減少率、経過した期間 通常体重、過去の測定値、測定日、測定条件 浮腫、腹水、輸液、水分出納によって減少が隠れることがある
筋肉量減少 部位ごとの筋の減少と左右差 視診・触診、身体計測、既存の画像・体組成評価など 測定方法を記録し、歩行能力や筋力だけで筋肉量を代用しない
皮下脂肪減少 脂肪組織の減少部位と程度 眼窩周囲、上腕三頭筋部、肋骨周囲などの視診・触診所見 元の体格や加齢変化を踏まえ、単独部位だけで判断しない
浮腫・液体貯留 局所または全身の液体貯留 浮腫の部位・程度、腹水、体重変化、水分出納、疾患背景 浮腫そのものだけで低栄養とは判断せず、体重や身体所見への影響をみる
握力低下 握力と測定条件 使用機器、測定肢、肢位、測定値、疼痛・麻痺・理解面の影響 歩行速度、立ち上がり、ADLは補助指標であり、握力低下の直接的な代替ではない

診断特性と補助的な観察項目を分けます

歩行速度、立ち上がり、ADL、活動耐容能、易疲労感は、低栄養に伴う機能変化や介入効果を追ううえで有用です。ただし、AAIMの6特性に含まれる機能項目は握力低下です。

握力を測定できない場合は、歩行や立ち上がりを握力の代わりに「陽性」とせず、握力は未評価と記録します。そのうえで、歩行速度やADLなどは補助的な機能指標として別に残します。

成因は炎症と疾患背景から3区分で整理します

6特性を評価する前提として、低栄養の成因を3区分で整理します。ここでの目的は、分類名だけを決めることではなく、摂取不足と炎症のどちらが病態へ強く影響しているかを共有することです。

成人低栄養の成因別3区分
区分 炎症の位置づけ 代表的な背景 判断の焦点
飢餓関連低栄養 炎症が乏しい 長期の摂取不足、食料・生活環境の問題、摂食障害など 摂取不足が病態の中心であるか
慢性疾患関連低栄養 慢性的な軽度〜中等度の炎症 がん、COPD、心不全、CKD、慢性炎症性疾患など 疾患活動性や増悪と、体重・筋量・機能低下が連動しているか
急性疾患・外傷関連低栄養 急性で強い炎症 重症感染、大手術、外傷、熱傷、急性増悪など 急性炎症と異化亢進が病態の中心であるか

摂取不足は3区分すべてで起こり得ます。「食事量が少ないから飢餓関連」と即断せず、疾患の発症時期、増悪、炎症の経過、摂取不足の期間を合わせて判断します。

複数の成因が併存する場合は、無理に1つへ限定しません。現時点で影響が大きい成因、併存する要因、判断根拠、不足情報を記録し、病状の変化に合わせて見直します。

「2項目以上」をどう記録する?

6特性のうち2項目以上が確認された場合に、低栄養の診断を支持します。ただし、該当項目が多いほど重症とは限りません。重症度は、それぞれの特性の程度と期間を、採用している正式な基準に沿って判断します。

「あり・なし・未評価」を区別します

6特性を記録するときの判定区分
判定 意味 記録例
あり 確認した情報から特性への該当を判断できる 「1か月前から摂取量が必要量の約半分まで低下」
なし 必要な情報を確認したうえで、該当しないと判断した 「過去6か月の体重変化なし。浮腫なし」
未評価 情報不足、測定困難、測定条件不成立などで判断できない 「麻痺と疼痛のため握力は未評価」

測定していない項目を「なし」にしないことが重要です。未評価のまま残すことで、次に必要な評価が明確になり、再評価時の抜けを防げます。

記録例

例:慢性疾患関連低栄養を疑う場合

慢性心不全の増悪後。食事摂取量は約3週間、必要量の約50〜60%。通常体重からの減少が疑われるが、両下腿浮腫があり現体重のみでは評価困難。大腿部の筋量減少を視診・触診で認める。握力は上肢痛のため未評価。慢性疾患関連低栄養を疑い、摂取不足と筋肉量減少の2特性を根拠として共有する。

記録では、診断名だけでなく、疾患背景、該当した特性、判断根拠、未評価項目、次に確認する内容、再評価日まで残します。

AND / ASPENとGLIMの違い

AAIMとGLIMは、どちらも成人低栄養の診断に使用できる枠組みですが、構成する項目と重症度の考え方が異なります。GLIMをAAIMの必須後工程とせず、施設の方針に合わせて選択または併用します。

AAIMとGLIMの主な違い
比較項目 AAIM(AND / ASPEN) GLIM
基本構造 成因背景を整理し、6特性のうち2項目以上を確認する 表現型基準と病因基準をそれぞれ1項目以上確認する
主な身体項目 体重減少、筋肉量減少、皮下脂肪減少、浮腫、握力低下 体重減少、低BMI、筋量減少
摂取・病因 エネルギー摂取不足と、炎症を含む成因背景を評価する 摂取量減少または消化吸収能低下、疾患負荷または炎症を評価する
重症度 各特性の程度と期間を基準に判断する 表現型基準の程度を用いて判断する
実務上の使い方 6特性と身体所見を具体的に記録したい場合に使いやすい 国際的に共通した診断手順と重症度を整理したい場合に使いやすい

どちらを使用する場合も、スクリーニング結果だけで低栄養を確定せず、包括的な栄養評価を行います。また、使用した診断枠組み、該当基準、測定方法、重症度、介入、再評価条件を記録します。

判断に迷いやすい4つのポイント

AND / ASPENの運用では、体重、検査値、筋量、機能を混同すると判定がぶれます。特に次の4点を区別してください。

1.浮腫があると体重減少が隠れます

浮腫、腹水、輸液、水分出納の変化がある場合、現体重だけでは組織の減少を判断できません。体重の測定条件とともに、摂取量、身体所見、筋肉量、皮下脂肪、浮腫の部位・程度を確認します。

「体重が減っていない」ことと、「体組織が減っていない」ことは同じではありません。体重の解釈が難しい場合は、判断を保留した理由を記録します。

2.Alb低値だけで低栄養と診断しません

アルブミンやプレアルブミンは、炎症、毛細血管透過性、体液状態、肝機能などの影響を受けます。低値は病状や予後リスクを考える補助情報になりますが、低栄養や筋肉量の単独指標としては使用しません。

摂取量、体重推移、身体所見、筋肉量、浮腫、疾患背景を合わせて判断します。

3.炎症をCRPだけで決めません

CRPは炎症評価の補助になりますが、単独値だけで成因区分を決めるものではありません。感染、大手術、外傷、急性増悪などのイベント、疾患の活動性、発症からの期間、臨床経過を合わせて確認します。

記録では「CRP高値」だけで終わらず、「肺炎発症後の急性期」「慢性心不全の増悪後」など、病態の時間軸を残します。

4.握力と一般的な身体機能を混同しません

握力はAAIMの6特性に含まれますが、疼痛、麻痺、関節可動域、意識状態、理解力、測定肢位の影響を受けます。測定できない場合は、その理由を記録して未評価とします。

歩行速度、立ち上がり、ADL、活動耐容能は、介入効果や身体機能の経過を追う指標として活用します。ただし、これらを握力低下や筋肉量減少の直接的な代替として扱わないようにします。

AND / ASPEN低栄養記録シートPDF

成因、評価条件、6特性、判断根拠、再評価予定をA4用紙1枚で整理できる記録シートです。患者IDなどの個人情報の取り扱いは、所属施設の規定に従ってください。

AND / ASPEN低栄養記録シートPDFを開く

使用時の注意

本シートは情報整理を補助するrehabilikunblog独自様式であり、公式の診断用紙ではありません。現行版では「握力低下/機能低下」を同じ欄にまとめていますが、診断特性としては握力低下を確認し、歩行や立ち上がりは補助的な機能指標として分けて解釈してください。

PDFを記事内でプレビューする

PDFを表示できない場合は、こちらから開いてください

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

AND / ASPENでは6特性をすべて評価する必要がありますか?

可能な範囲で6特性を確認しますが、測定困難な項目を無理に陰性へ分類する必要はありません。評価できなかった項目は「未評価」とし、理由と次に確認する条件を記録します。診断を支持する基本条件は、6特性のうち2項目以上です。

2項目に該当すれば重度の低栄養ですか?

該当項目の数だけでは重症度を判断できません。重症度は、摂取不足や体重減少などの程度と期間を、施設で採用している正式な基準に沿って判断します。2項目に該当した根拠と、各項目の程度を分けて記録してください。

握力を測れない場合は、歩行速度で代用できますか?

AAIMの診断特性として、歩行速度を握力低下へそのまま置き換えることは避けます。握力は「未評価」とし、歩行速度、立ち上がり、ADLなどは補助的な身体機能指標として別に記録します。

成因3区分のどれか1つに決める必要がありますか?

いいえ。摂取不足と炎症が併存する患者は多く、成因が重なる場合があります。現時点で影響が大きい成因を仮置きし、併存する要因、判断根拠、不足情報を記録して、病状の変化に合わせて見直します。

AND / ASPENとGLIMは両方実施する必要がありますか?

必須ではありません。AAIM、GLIM、SGAなどは、それぞれ低栄養診断に使用できる枠組みです。施設で採用している方法、専門職の配置、記録・診断手順に合わせて選択します。併用する場合も、どの枠組みで何を判断したのかを明確にします。

AlbやCRPは6特性に含まれますか?

含まれません。Albは炎症や体液状態などの影響を受け、CRPは炎症の補助指標です。どちらも病態理解には役立ちますが、6特性の代わりに単独で低栄養を診断する項目ではありません。

次の一手

6特性を確認した後は、成因3区分の判断根拠を詳しく整理するか、施設でGLIMを採用している場合は診断と重症度判定へ進みます。


参考文献

  1. Jensen GL, Mirtallo J, Compher C, et al. Adult starvation and disease-related malnutrition: a proposal for etiology-based diagnosis in the clinical practice setting from the International Consensus Guideline Committee. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2010;34(2):156-159. doi:10.1177/0148607110361910
  2. White JV, Guenter P, Jensen G, Malone A, Schofield M. Consensus statement: Academy of Nutrition and Dietetics and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition: characteristics recommended for the identification and documentation of adult malnutrition (undernutrition). JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2012;36(3):275-283. doi:10.1177/0148607112440285
  3. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: a consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002
  4. Evans DC, Corkins MR, Malone A, et al. The use of visceral proteins as nutrition markers: an ASPEN position paper. Nutr Clin Pract. 2021;36(1):22-28. doi:10.1002/ncp.10588
  5. Jimenez EY, Lamers-Johnson E, Long JM, et al. Predictive validity of the Academy of Nutrition and Dietetics/American Society for Parenteral and Enteral Nutrition indicators to diagnose malnutrition tool in hospitalized adults: a cohort study. Am J Clin Nutr. 2024;119(3):779-787. doi:10.1016/j.ajcnut.2023.12.012
  6. Academy of Nutrition and Dietetics. Global Leadership Initiative on Malnutrition Statement. Academy of Nutrition and Dietetics公式ページ. Accessed August 3, 2026.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール編集・引用ポリシーお問い合わせ