いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「LSNS-6」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
最近になって作られた言葉というわけではありませんが、地域で生活する高齢者の社会的孤立という状況が問題視されております。
社会的孤立とは、家族やコミュニティとほとんど接触がない状態をいいます。 人と会話する機会がなかったり、困ったときに頼る人がいない、日常的に会うような人がいない、この状態が続くと人は生きがいが低下し、抑うつや不健康になりやすいといわれています。
社会的孤立に陥る人が悪いという訳ではなく、時代の変化により、人は昔よりも孤立しやすい世の中になったと思います。
- 単身世帯の増加
- 近所付き合いの減少
- 地域活動の減少
- 新型コロナウイルスによる様々な影響
- コミュニケーションツール(SNS等)の進化
- 非正規雇用、パートなど働き方の多様化
- 考え方の変化(人との繋がりがなくても生活に支障がない)
上述したように、社会的孤立に陥る人が増える要因として様々なものが挙げられます。しかし、社会的孤立に陥りやすい状況であったとしても、やはり、社会的孤立は防がないといけないですし、地域で生活する高齢者がそのような状況であるなら尚更になります。
そこで、こちらの記事では社会的孤立における状況を評価する方法について、Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)という評価尺度をもとに説明させていただきます。
こちらの記事で社会的孤立における理解を深め、地域におけるリハビリテーションや高齢者支援の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【リハビリテーション専門職の転職サイト】
医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
社会的孤立とは
本邦は世界でも指折りの長寿国であると同時に、健康寿命も世界一となっています。多くの高齢者が健康で就労意欲も高く、家族や地域とのつながりを持ちながら生活しております。
その一方で、高齢者の中には「1人暮らし」「家族はいなかったり、いても簡単には会えない」「隣人や友人との付き合いも乏しい」などが組み合わさり、日常において人と交流の少なく社会的に孤立した生活を送る人もいることが現実になります。
人と交流の少ない生活では生きがいや張り合いを感じることが難しくなります。また、孤立死や高齢者による犯罪の増加、高齢者を対象とした悪質商法の蔓延といった問題も高齢者の社会的孤立と深く関係しております。
「社会的孤立」について一律な定義があるわけではありませんが、英国の社会学者ピーター・タウンゼントは「家族や地域とほとんど接触がないという客観的状態」と定義しております。
つまり、「社会的孤立」は他者との関係性が乏しいという客観的状態を意味します。孤立と似て非なる概念として「孤独」がありますが、孤独は「仲間がいなかったり、失ったというありがたくない感じをもっていること」を意味します。
「孤独」については主観面を捉えた概念、「孤立」についてはと客観面を捉えた概念といったように区別することができます。
社会的孤立は具体的に何が問題になるのでしょうか。高齢者を中心にした社会的孤立に関する先行研究によると孤立している高齢者は孤立していない高齢者に比べて、以下のような弊害が起きやすいと報告されています。
- 経済的困窮に陥りやすい
- 抑うつ傾向が強くなる
- 不健康になりやすい
こちらは高齢者をデータになりますが、恐らく若い世代であっても社会的孤立に陥れば、こうした問題が顕在化すると考えられます。そのため、人を社会的に孤立させないような対策をあらゆる場面で講じる必要があります。
ソーシャルサポートネットワーク
ソーシャルサポートネットワークという言葉を始めて耳にする人は、これはなんだろうと思うかもしれませんが、ソーシャルサポートネットワークとは要するに対象者(高齢者)の地域生活を支えるために、適切な援助をしてくれる人間関係の話になります。
「金銭関係のことで困ったときに相談することができる家族や親戚がいるかどうか」「住んでいる地域活動のことで分からないことがあったときに相談することができる近所の人がいるかどうか」「趣味の関係で行きたいところがあるときに相談することができる友人はいるかどうか」というように、目的に応じた人間関係が構築されているのか?というものになります。
地域社会の中での孤立は、ソーシャルサポートネットワークの概念を通じてこれまでに、社会学・心理学・公衆衛生学等の幅広い分野で研究の対象とされてきました。
しかしながら、研究者によってその概念規定が異なるために、現在になっても標準的な測定方法が確立されていない状況にあります。
ソーシャルサポートは社会的結びつきの機能的側面、主観的特性を記述する際に用いられるのに対し、ソーシャルネットワークは社会的結びつきの構造的側面、規模・頻度・密度などの客観的特性を表す際に用いられるとされています。
これまでの研究から、高齢者のソーシャルサポートネットワークの不足は、「抑うつ」「自殺リスク」「早期死亡」「心疾患や脳卒中の発症」「身体的健康状態の悪化」「主観的幸福感の低下」など様々な健康リスクと関連することが明らかにされております。
高齢者が地域で社会的孤立を防ぎながら生活していくためには、ソーシャルサポートネットワークが構築されているかどうかが重要になります。言い換えるとソーシャルサポートネットワークが構築できているのかどうかを評価する術が必要になります。
そこで、高齢者のためのソーシャルサポートネットワーク尺度として広く使用されている Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)について紹介させていただきます。
Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)
Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)は短縮版として後になって開発された尺度となります。LSNS-6 のもとになっているのは、1988 年に Lubben が開発した高齢者のためのソーシャルサポートネットワーク尺度であるLubben Social Network Scale(LSNS)になります。
Lubben Social Network Scale(LSNS) はネットワークのサイズや接触頻度とともに、情緒的・手段的サポートに関する 10 項目から構成されております。
高齢者の社会的孤立について、LSNS の得点と臨床家の評価との一致度は高く、LSNS についても様々な国で使用されていました。
2003 年に Lubben は、LSNS を上回る実用性と心理測定学的特性を有する短縮版スクリーニング尺度 Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を開発しました。
LSNS-6 評価方法
LSNS-6 は自己記入式の質問紙になります。
LSNS-6 の質問項目は、情緒的・手段的サポートとして、ソーシャルサポートにおいて特に重要なものをとりあげております。
家族ネットワークに関する 3 項目、非家族ネットワークに関する 3 項目の計 6 項目について、それぞれ 6 件法( 0 点〜 5 点)でネットワークの人数を回答してもらいます。
得点範囲は 0 点〜30 点となり、得点が高い方がソーシャルサポートネットワークが大きいとされています。得点が低いほどソーシャルサポートネットワークは小さく、12 点未満は社会的孤立を意味するとされております。
LSNS-6 評価項目
設問 1 〜 3 については、家族や親戚などについて考えて回答してもらいます。設問 4 〜 6 については、近くに住んでいる人を含む友人全体について考えて回答してもらいます。
- 少なくとも月に 1 回、会ったり話をしたりする家族や親戚は何人いますか?
- あなたが、個人的なことでも話すことができるくらい気楽に感じられる家族や親戚は何人いますか?
- あなたが、助けを求めることができるくらい親しく感じられる家族や親戚は何人いますか?
- 少なくとも月に 1 回、会ったり話をしたりする友人は何人いますか?
- あなたが、個人的なことでも話すことができるくらい気楽に感じられる友人は何人いますか?
- あなたが、助けを求めることができるくらい親しく感じられる友人は何人いますか?
回答方法は 6 件法( 0 点〜 5 点)からの選択方式になります。
- 0点:いない
- 1点:1人
- 2点:2人
- 3点:3〜4人
- 4点:5〜8人
- 5点:9人以上
上記の選択肢より適したものを選択します。6 項目の点数を加算した点数が LSNS-6 の総得点となります。
LSNS-6 評価用紙
Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)の評価用紙が必要な方はこちらからダウンロードすることができます☺
LSNS-6 カットオフ値
得点が高い方がソーシャルサポートネットワークが大きいとされています。得点が低いほどソーシャルサポートネットワークは小さく、12 点未満は社会的孤立を意味するとされております。
LSNS-6の有用性
LSNS-6 の有用性として、自記式でも聞きとり調査でも 3 分程度と短時間で調査できる点が挙げられます。
ソーシャルネットワークを得点として量的に表すことができるため、ソーシャルネットワークの側面をより正確に表現することが可能であり、その情報を共有することができます。
このように LSNS-6 は、高齢者の社会的孤立を短時間で簡便に調査することができるため、地域保健における有用性も高いと考えられます。
問診などで情報収集を行うときのひとつの項目として、LSNS-6 を用いることで、高齢者の社会的孤立をスクリーニングし、介入前後の変化をモニタリングすることができます。
また、LSNS-6 の認知度が高まり普及していくことによって、高齢者自身が自分の社会的健康に関心を持つようになることも期待されます。
介護予防のための生活機能評価などにおいても社会的孤立を評価するための尺度を組み込むことを検討する必要があると考えられます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「社会的孤立についてのスクリーニング尺度である LSNS-6」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事が社会的孤立における理解力向上をもたらし、地域におけるリハビリテーションや高齢者支援などに少しでもお力添えになれば幸いです。
LSNS-6 だけに留まらず、地域在住高齢者についてのアセスメントをすることは非常に重要なことになります。地域で生活する高齢者の行動範囲の指標として Life space assessment(LSA)という尺度がございます。LSA については、他の記事で詳しくまとめておりますので、興味があればご覧して頂けると幸いです☺️ 【LSA:ライフスペースアセスメントについての記事はこちらから】
参考文献
- 栗本鮎美,粟田主一,大久保孝義,坪田(宇津木)恵,浅山敬,高橋香子,末永カツ子,佐藤洋,今井 潤.日本語版 Lubben Social Network Scale 短縮版(LSNS-6)の作成と信頼性および妥当性の検討.日本老年医学会雑誌.48巻,2号,2011:3,p149-157.
- 斉藤雅茂.高齢者の社会的孤立に関する主要な知見と今後の課題.季刊家計経済研究.2012,SPRING,No.94,p55-61.