いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて訪問して下さった方はよろしくお願いします。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「呼吸リハビリテーション、コンディショニング」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
近年の呼吸リハビリテーションの普及によって、呼吸リハビリテーションに関するガイドラインも数多く発表されており、呼吸リハビリテーションのエビデンスは徐々に確立されつつあります。しかし、確立されたエビデンスの多くは全身持久力トレーニングを中心とした運動療法によるものであり、呼吸練習、胸郭可動域練習、リラクセーションなどのコンディショニングについてのエビデンスは不十分となっています。
つまり、呼吸器疾患および肺の疾患であっても、強いエビデンスを認めるのは下肢筋を中心とした持久力トレーニングとなります。しかし、療養型病院や慢性期、生活期の臨床現場では、患者の状態から持久力トレーニングのような運動療法を実施することができないことも多く、コンディショニングを主体とした呼吸リハビリテーションが必要になることも少なくありません。そこで、この記事では呼吸リハビリテーションのコンディショニングについて、わかりやすくまとめていきたいと思います。
こちらの記事を読むことで呼吸リハビリテーションのコンディショニングについての理解が深まり、臨床における呼吸リハビリテーションの一助となれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【理学療法士の転職はマイナビコメディカル】
理学療法士は 2013 年頃より毎年 10,000 人程度が国家試験に合格し続けています。これは医療系の専門職の中では看護師に次ぐ有資格者の増加率となっており、1966 年にはじめての理学療法士が誕生した歴史の浅さを考えれば異例の勢いと言えます。
人数が増えることは組織力の強化として良い要素もありますが、厚生労働省からは 2019 年の時点で理学療法士の供給数は需要数を上回っていると報告されており、2040 年度には理学療法士の供給数は需要数の約 1.5 倍になると推測されています。このような背景もあり、理学療法士の給与、年収は一般職と比較して恵まれているとはいえず、多くの理学療法士の深刻な悩みに繋がっています。
しかし、給与や年収などは職場や企業に大きく左右されるものです。今、働いている環境よりも恵まれた、自分が納得できる労働環境は高い確率で身近にあります。100 歳まで生きるのが当たり前といわれる時代を豊かに生きるためには、福利厚生や退職金制度なども考慮して就職先を決定するべきです。しかし、理学療法士が増え続けていくことを考慮すると恵まれた労働環境も次第に少なくなっていくことが予想されます。だからこそ、今のうちに自分が理学療法士として働く上で納得できるような就職先を探すべきではないでしょうか?
こちらで紹介する「マイナビ」は人材紹介サービスとして超大手企業であり、誰しもが耳にしたことがあると思います。「マイナビ」は一般職向けの転職支援だけではなく、医療従事者を対象にした「マイナビコメディカル」を手掛けております。個人情報の取り扱いなども含めて厚生労働省に認可された「マイナビコメディカル」には安心感と信頼性がありますし、転職支援の質も確かなものになります。1分で登録可能であり、住んでいる地域の周辺の転職先情報を簡単に確認することもできるため、今の自分の待遇と比較してみる目的も含めて、一度ご利用してみるのはいかがでしょうか?
マイナビコメディカルについては、他の記事で詳しくまとめています!《【マイナビコメディカルの評判と退会方法】理学療法士の転職おすすめ》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
呼吸リハビリテーションの定義
呼吸リハビリテーションは 1950 年代に欧米で開始された手技であり、本邦においても 1950 年代後半に実施されたのが始まりになります。
その後も呼吸リハビリテーションの進展は続き、2006 年には疾患別リハビリテーションによる診療報酬体系となり、待望の「呼吸器リハビリテーション料」が 新設され、呼吸リハビリテーションの実践と普及活動がより一層充実することに繋がっております。
呼吸リハビリテーションの定義についても現在に至るまでの歴史の中で改訂が繰り返されています。
最新のものは、2018 年に日本呼吸ケア・リハビリテーション学会、日本呼吸理学療法学会、日本呼吸器学会の 3 学会共同のステートメントで提唱された以下の定義になります。
呼吸リハビリテーションとは、呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である。
出典:呼吸リハビリテーションに関するステートメント.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2018,27,p95-114.
近年の知見では、呼吸リハビリテーションは機能回復・維持に加えて予防的介入も重要視され、双方向性の医療、行動変容や健康増進への介入など新たな概念が導入されてきています。
また、シームレスな介入と捉えて治療介入することも重要となります。栄養療法やセルフマネジメント教育のエビデンスが構築、身体活動性の重要性が明らかなものになっております。
このように、呼吸リハビリテーションにおける有益性のエビデンスを得るための様々な臨床試験や疫学的な研究が行われたことにより、呼吸リハビリテーションの概念や手技は変貌を遂げ、現代の医療や福祉に必要不可欠なものとなっています。
呼吸リハビリテーション 対象疾患
現在、呼吸リハビリテーションのプログラムと効果に関してそのエビデンスが最も確立しているのは慢性閉塞性肺疾患(COPD)になります。
呼吸リハビリテーションのエビデンスの大半は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する臨床試験や疫学的研究からつくられたものになります。
そのため、呼吸リハビリテーションの最終目的は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および他の慢性呼吸器疾患患者の呼吸困難の軽減、運動耐容能の改善、身体活動の向上、そして健康関連 QOL と ADL 改善、抑うつと不安の軽減になります。
呼吸リハビリテーションの対象となる疾患は幅広く、様々な病態に対して効果が期待されます。
以下の疾患や病態が呼吸リハビリテーションの対象となります。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- ICU 入室時、入室後の患者
- 術前、術後の患者
- 間質性肺炎
- 肺結核後遺症
- 肺がん
- 肺高血圧症
- 気管支喘息
- 気管支拡張症
- 気管切開下にある患者
- 神経筋疾患
慢性呼吸不全を惹起する多彩な慢性呼吸器疾患すべてが呼吸リハビリテーションの対象となります。
呼吸リハビリテーション 実施内容
慢性閉塞性肺疾患(COPD)をはじめとした呼吸器疾患を有する人は呼吸困難によって ADL や QOL が障害されていきます。
呼吸困難は運動耐容能の低下や日常の活動量低下を引き起こしますが、その状態が継続されることで、呼吸器以外の廃用症候群の問題も生じるようになり、更なる活動量の低下や呼吸困難をきたすといった悪循環が呼吸器疾患の恐ろしいところになります。
呼吸リハビリテーションはこれらの悪循環を断ち切るために導入され、非薬物療法のなかで重要な役割を担っています。
また、呼吸リハビリテーションは薬物療法の効果が得られている患者においても上乗せの改善効果が得られることが報告されています。そのため、薬物療法と並行して両輪で実施することで、より高い効果を期待することができます。
呼吸リハビリテーションの実施内容としては以下の 3 種類のプログラムから構成されています。
- 運動療法
- コンディショニング
- ADL トレーニング
この中でも呼吸リハビリテーションの中核は運動療法になります。しかし、冒頭でも説明した通り呼吸リハビリテーションを必要としながら、運動療法や ADL トレーニングを実施するコンディショニングではない対象者も臨床には数多くおります。
そこで、軽症から重症の全ての呼吸器疾患の方に効果を発揮することができる「コンディショニング」について、わかりやすく解説していきます。
コンディショニングとは
呼吸リハビリテーションの中核は運動療法になりますが、闇雲に運動療法を進めれば良いという訳ではありません。
運動療法を実施できる対象者についても、そうでない方についても、コンディショニングとよばれる心身の準備調整を行うことが重要になります。
呼吸リハビリテーションにおけるコンディショニングでは、呼吸パターンの修正や柔軟性のトレーニングを行うことが望ましいとされています。
慢性の呼吸器疾患、特に重症の COPD や間質性肺炎では全身の筋肉や関節の柔軟性の低下(デ
ィコンディショニング)が発生します。
そのため、努力を要する呼吸運動、筋の萎縮や過 緊張、短縮などによる姿勢の悪さ、歩行動作の障害などのため身体のバランスが悪化し、身体運動が損なわれていきます。
コンディショニングとは、上述したディコンディショニングの状態を改善し、運動療法を効率的に行うために身体の状態を整え、運動のアドピアランスを高めるための介入をいいます。
具体的なコンディショニングの実施内容としては呼吸練習、リラクセーション、胸郭可動域練習、ストレッチング、排痰法などが含まれており、対象者の病態や重症度に合わせて実施することが重要になります。
呼吸練習
呼吸練習の目的は、息切れの改善やパニックコントロール、 および緩和換気パターンの改善になります。
呼吸練習の方法は、ロすぼめ呼吸と横隔膜呼吸(腹式呼吸)に分類されます。
口すぼめ呼吸
ロすぼめ呼吸は、ロをすぼめて「フー」、あるいは「スー」と言う音をさせながら息を吐き、 吸気と呼気の比は 「1:3 ~ 5」程度、呼吸回数「20 回/分」を目安に行う呼吸練習となります。
口すぼめ呼吸は、気道内圧を上昇させ末梢気道の虚脱を防ぐ効果があるとされており、呼吸困難の軽減にもたらす可能性があります。
また、呼気時間を延長させ呼吸数が減少、1 回換気量が増加、機能的残気量が減少することが示されています。また、これらの作用によりパニックコントロールにも活用することができる呼吸方法となります。
横隔膜呼吸(腹式呼吸)
横隔膜を意識的に活動させ、呼吸補助筋の動きを抑制する呼吸方法になります。
横隔膜呼吸(腹式呼吸)には 1 回換気量を増大させ、呼吸数を減少させる効果があります。
横隔膜呼吸はファーラー位(上体を 45 度起こした姿勢)あるいはセミファーラー位(上体を 15 ~ 30 度起こした姿勢)で実施します。
手を腹部と胸の上に置き、鼻からゆっくり吸って、ロをすぼめてゆっくりと空気を吐き出すようします。胸に動きが出るのではなく、お腹の手が上がったり下がったりするようにすることを意識して行う呼吸練習となります。
横隔膜呼吸を有効に行うためには横隔膜の可動性が保たれている必要があります。横隔膜の可動性が過度に低下していると換気効率を低下させる可能性もあるため、注意が必要になります。
リラクセーション
努力性呼吸(呼吸補助筋の動員)や浅速呼吸など呼吸運動の変化を認める場合にはリラクセーションの適応となります。
胸郭可動域練習
肺の過膨張や呼吸筋の短縮、胸郭の可動域制限は呼吸運動に伴う酸素消費量を増大させ、疲労や呼吸困難を増悪させます。
胸郭可動域練習は、胸郭の可動性・柔軟性を改善し、呼吸運動に伴う呼吸仕事量・呼吸困難を軽減することが目的となります。
胸郭可動域練習の方法としては以下のようなものがあげられます。
- 徒手胸郭伸張法
- 肋間筋ストレッチ
- 呼吸筋ストレッチ
- 棒体操
胸郭可動域練習に対する効果判定の方法としては、胸郭拡張差が有効な指標となります。
ストレッチング
ストレッチングの方法には様々なものがあります。用途に合わせて適切なものを選択し実施することが重要になります。
ストレッチングで大切なことは無理をせず苦痛のない範囲で継続できる程度から始めていくことになります。
排痰法
過剰な気道分泌物産生と気道抵抗の上昇により去痰困難をきたす場合、あるいは気道分泌物の量が多い場合に排痰法の適応となります。
排痰法の方法として、体位ドレナージ・強制呼出手技・ ハフィング・ACBT(アクティブサイクル呼吸法)・咳嗽があげられます。
体位ドレナージ
体位ドレナージは気道内にある分泌物を重力を利用して排出する手技になります。
体位が呼吸器に与える影響は大きく、臥位からのベッドアップで全肺気量・1 回換気量、肺活量、機能的残気量、1 秒量などの増加を認めます。
強制呼出手技
咳漱のタイミングに合わせて、呼気時に徒手的に下部胸郭を圧迫する手技になります。
ハフィング
ハフィングは、声門を開いたまま強く速い呼気を行う手技になります。
介助する場合は上部胸郭か下部胸郭を強制呼出に合わせて圧縮をかけると効果的となります。
ACBT(アクティブサイクル呼吸法)
ACBT(アクティブサイクル呼吸法)は、 排痰を促す自己排痰法になります。実施の手順は以下の通りになります。
- 安静呼吸 3 ~ 4 回
- ゆっくりとした深呼吸 3 ~ 4 回
- 安静呼吸 3 ~ 4 回
- 呼気に合わせて強制呼出手技を行う
- 上記の流れを繰り返す
咳嗽
咳漱は深い吸気の後に声門を閉じて吸気筋を収縮させてから、一気に声門を開けて呼出し、排痰を促す手技になります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「呼吸リハビリテーション、コンディショニング」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことでコンディショニングについての理解が深まり、臨床における呼吸リハビリテーションへの一助となれば幸いです。
参考文献
- 花山耕三.呼吸器疾患.臨林と研究.101巻,4号,p36-41.
- 足立仁志,吉田誠,中野博.呼吸リハビリテーション―理学療法の立場から―.日本臨床生理学会雑誌.Vol.49,No.5,2019,p161-167.
- 本田篤司.呼吸理学療法.呼吸ケアと誤嚥ケア.2017,No.10,Vol.1,p23-28.
- 田平一行.コンディショニングと運動療法.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.第21巻,第3号,p191-196.