FAI(Frenchay)とは:頻度でみる IADL
FAI(Frenchay Activities Index)は、在宅活動の頻度を 0–3 点×15 項目=0–45 点で評価し、継時変化と社会参加の広がりを追う IADL 尺度です。面接または質問票で基準期間 3–6 か月の頻度を判定し、再評価も同一期間で比較します。
項目と採点(0–3 点×15 項目=0–45)
原則は「できる/能力」ではなく実施頻度で判定します。頻度カテゴリの例は 0=していない、1=月 1 回未満、2=月 数回、3=週 1 回以上(施設で統一)。旅行など季節行事は同季で比較します。
| 点 | 頻度の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 0 | していない | 活動なし/中止中 |
| 1 | 月 1 回未満 | 稀な実施 |
| 2 | 月 数回 | 断続的な実施 |
| 3 | 週 1 回以上 | 定期的な実施 |
判定と解釈(屋内→屋外→社会参加)
合計点だけでなく、屋内家事→屋外用務→余暇/社会参加という回復段階を意識してプロファイルで評価します。ボトルネック(移動耐容能、不安、交通手段、同行の要否など)を分解し、行動レベルの週/月目標に落とし込みます。
| 領域/項目の趣旨 | 頻度スコアの目安(0–3) | 観察ポイント・注意 | 次アクション(週/月) | 記録例 |
|---|---|---|---|---|
| 屋内家事(料理・掃除・洗濯 など) | 0=していない/1=月1未満/2=月数回/3=週1以上 | 所要時間、疲労、自動化家電の活用、転倒不安 | タスク分割・家電導入で週1→週2へ段階目標 | 「屋内家事 2→3/週、所要15→10分」 |
| 屋外用務(買物・用足し) | 0〜3(上と同様)。同行の要否を備考に記録 | 移動耐容能(6MWT 等)、交通手段、不安の強さ | 同行練習→単独移動、外出 0→週1 を目標 | 「外出 月0→週1、同行→単独へ移行予定」 |
| 余暇・社会参加(サークル・趣味) | 0〜3。年次行事は同季で比較 | 参加の場の有無、対人不安、費用・移動障壁 | 近隣サークル選定→初回同行→月0→月2 | 「参加 月0→月2、初回同行〇/場所A」 |
| 園芸・DIY・家の手入れ | 0〜3。重作業は安全基準を確認 | 姿勢保持・持久力・疼痛、必要工具の可用性 | 軽作業→中等度へ段階化、15→30分を目安 | 「庭手入れ 月1→週1、連続作業15→30分」 |
| 旅行・外泊(季節影響大) | 0=なし/1=年1 程度/2=年数回/3=月1以上 | 季節差・行事の影響を備考へ。比較は同季 | 近距離半日→1泊へ段階的に拡大 | 「日帰り→1泊へ、夏季同季で比較」 |
| 代理/外注の扱い(重要) | 施設ルールで定義し、備考に明記 | 家族代行/配食・代行サービスの利用有無 | 本人実施へ移行手順を計画(例:下ごしらえのみ本人) | 「配食利用、本人は配膳のみ→週2 調理へ」 |
FAI に固定カットオフはある?運用の考え方
FAI は頻度の継時変化をみる性格が強く、一般的な固定カットオフは設定しにくいと解釈します。実務では、領域別プロファイルを見ながら、週〜月単位の段階目標(例:外出 0→週 1、洗濯 週 1→週 2)を設定し、再評価で進捗を確認します。研究や院内で閾値を仮設定する場合は、基準期間の固定、代理遂行/外注の取扱い定義、同一条件での再評価を徹底して再現性を担保します。
ケース別の使い分け(例)
- 退院直後:屋内家事の頻度回復を優先し、週次目標で段階化。外出は同行練習から再開。
- 独居・介護負担高:家事の委託/代替と参加の場づくりを並行。代理/外注は備考に明記。
- フレイル併存:活動量の底上げと疲労・不安のマネジメントをセットで。
実施・記録テンプレ
記録例:「FAI 18/45(基準:過去 3 か月)。屋内家事=週次、屋外用務=月 1 未満、社会参加=月 1 未満。6MWT 420 m。同行支援と近隣サークル参加で外出を週 1 へ。」
印刷は A4/余白 12 mm/ヘッダ・フッタ非表示を推奨。同一の基準期間(3〜6 か月)で再評価してください。
よくある誤り(OK/NG)
| 場面 | OK | NG/要修正 | 理由/対策 |
|---|---|---|---|
| 基準 | 実施頻度で判定 | 能力で判定 | 過大評価の恐れ→質問を頻度に限定 |
| 期間 | 同一期間(例:過去 3–6 か月)で比較 | 評価ごとに期間がバラバラ | 季節差の影響→期間を固定 |
| 解釈 | 屋内→屋外→社会参加の段階で評価 | 合計点のみで判断 | 介入に落ちない→領域別に週/月目標を設定 |
| 代理/外注 | 施設ルールで扱いを定義し備考に明記 | 都度判断でブレる | 再現性確保→記録テンプレに欄を設ける |
よくある質問(FAQ)
基準期間はどれくらいが良いですか?
季節要因を平準化しやすい3–6 か月を推奨します。再評価も同一期間で比較してください。
点数が伸びないときは?
移動耐容能、不安、交通手段、同行の要否などのボトルネックを分解し、週/月の段階目標(例:外出 0→週 1)を設定します。
FAI にカットオフはありますか?
一般的な固定カットオフは適しません。領域別プロファイル+段階目標で運用し、必要に応じて施設内で仮閾値を定義します。
代理遂行や家事外注はどう扱いますか?
院内 SOP で扱いを事前定義し、記録時に備考へ明記します。解釈時は過大評価に注意します。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
参考文献
- Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age Ageing. 1983;12(2):166–170. doi:10.1093/ageing/12.2.166
- 国内の運用例:日本語版様式/研究報告に準拠(頻度カテゴリ・代理/外注の扱いは施設で統一)。
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