【車椅子用クッションの選び方】使用目的に合った種類を選択しよう

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褥瘡対策
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「車椅子用クッション」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

         

車椅子用のクッションには、そのクッションの役割によっていくつかの種類に分類されています。大まかに説明すると、疲労や疼痛を軽減するための標準的なクッションなのか、姿勢保持を目的としたクッションであるのか、褥瘡リスクが高い人向けの褥瘡予防クッション等に分類されています。

   

クッションの選定は当然重要なものになりますが、意外と現場で行えていないのが適合評価になります。選定したクッションが適切に使えているのか、本当にそのタイプのクッションで相応しいのかを定期的に評価することは非常に重要となります。

  

この記事では、車椅子クッションについて、役割から種類、選定方法まで理解できるように、まとめていきたいと思います!

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

【リハビリテーション専門職の転職サイト】

医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。

実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。

このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。

また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。

このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。

最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

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車椅子用クッションが必要な理由

車椅子に長時間座っていると、身体が辛くなったり背中やお尻が痛くなることがあります。このような場合、人は身体を動かしたり、一度立ち上がったりすることで痛みや血流の阻害を解放しています。

しかし、誰しもが同じように痛みや血流の阻害を解放できる訳ではありません。車椅子を必要とする人の中には、身体機能の低下によって自由に動くことができなかったり、虚弱(痩せ)によって、股関節伸展筋群の軟部組織量が減少し、坐骨や尾骨、仙骨部などの骨突出部の褥瘡発生リスクが高くなっている人がいます。

また、お尻以外の部分でも、骨突出部位である脊椎棘突起や大転子、車椅子のパイプと接触して圧迫が加わる恐れのある背部外側面や腓骨頭などの部位については褥瘡発生リスクが高くなります。

車椅子乗車時の褥瘡好発部位は以下の通りになります。

  • 脊椎棘突起
  • 尾骨
  • 坐骨
  • 仙骨
  • 大転子
  • 膝窩
  • 腓骨頭
  • 踵骨

車椅子乗車時には上記の部位の局所圧や車椅子との接触状況について注意する必要があります。特にこの中でも尾骨、坐骨、仙骨については一段と褥瘡発生リスクが高くなります。

その理由は、ベッド上での仰臥位、側臥位などの寝姿勢と比較して、座位姿勢は身体を支える面積が小さく、その小さい面積に体圧が発生するためになります。乗車する車椅子の種類によっても異なりますが、車椅子乗車時に体重は以下のように分配されると報告されています。

  • 座シート:65 %
  • フットレスト:19 %
  • バックサポート:14 %
  • アームサポート:2 %

つまり、体重が 50 kg の対象者であれば 32.5 kg もの荷重が車椅子の座シートに発生することになります。このように車椅子乗車姿勢では、尾骨、坐骨、仙骨部などを中心に臀部に多大な負担がかかることになるため、車椅子用クッションが必要になります。

車椅子用クッションの使用目的と機能

医療・福祉領域において車椅子用のクッションは主に車椅子の座シートに敷いて使用します。車椅子用クッションは、車椅子乗車姿勢や機能性、快適性にも関わる重要な福祉用具の 1 つになります。

車椅子用のクッションは、福祉用具情報システム(TAIS)を確認してみると多彩な製品が登録されていることが分かります。定期的に新しい車椅子用のクッションが登録されていることからも、各メーカーでしのぎを削りながら質の高いクッションの開発を目指していることがわかります。

このような背景もあり、現在医療や福祉の場面で活用されている車椅子用クッションの材質や形状には様々なものがあります。

そこで、アメリカの医療共通治療行為コード化システムでは、クッションを一般用(座り心地の向上)・ポジショニング用・スキンプロテクション用・ポジショニング&スキンプロテクション用の 4 つに分類しています。

つまり、クッションの使用目的を大きく分類すると、以下の 3 つの機能から成り立っていることがわかります。

  1. 座り心地の向上
  2. 座位姿勢の保持(ポジショニング)
  3. 接触面の皮膚の保護(スキンプロテクション)

この 3 つの機能を意識して車椅子用クッションを選択することが重要になります。

座り心地の向上が主目的になるのであれば、ウレタンフォームで作成されたクッション、座位姿勢の保持を必要とするのであれば仙骨座りを防止するアンカー機能や背部、骨盤のサポートを付属させることで座位保持機能が向上する可能性があります。

また、褥瘡対策に伴い接触面の皮膚の保護が必要であれば、ゲル状の素材のクッションや空気量バルブ調節式クッションが適応になります。このように、使用目的に合わせてクッションの選択を行うことが重要になります。

車椅子用クッションの種類について

車椅子用クッションの種類については時代の流れとともに変化を続けています。

一昔前では毛皮や円座などを使用していたこともあります。現在では、車椅子用クッションは主に材質や形状などによって分類されています。

各メーカーにより多様な製品が開発されているため、それらを詳細に分類することは難しいところもありますが、一般的には以下のように分類することができます。

  1. ウレタンフォーム等の単一素材のクッション
  2. ポリエステル繊維・ウレタンフォームの多層構造
  3. ゲルとウレタンフォームの組み合わせ
  4. 空気量バルブ調節式クッション
  5. フローテーションパット類
  6. 特殊空気室構造クッション
障害者総合支援法の補装具.2002.

車椅子用クッションについては、材質や形状の違いによって、機能性や特徴が異なります。代表的なものについて項目ごとに解説していきます。

ウレタンフォーム

発泡材(多孔質物質)を用いた、いわゆるプラスチックフォームのクッションになります。家具や梱包材をはじめ、私たちの生活においても使用しているような身近な素材になります。

軽量で、快削性や接着性が高いため、くり抜いて形を変えることや、重ねて厚くすることも可能となります。加工しやすいというのは大きな特徴となっています。

デメリットとしては、劣化の影響が大きいため使用限界の確認が欠かせないことになります。

空気量バルブ調節式クッション

ゴムで作ったセルの中に気体を閉じ込め、そのセルによって座面が形成されたクッションになります。

バルブでセル内の空気量を調整し、座面の高さを調節できます。圧分散性に優れているため、褥瘡リスクの軽減を図ることができます。

一方、その高い圧分散性のため殿部の位置や姿勢が安定しにくく、座位姿勢をしっかりと保持するような目的には向かないこともあります。

また、空気量の調整が必要な構造上、空気漏れの危険性があります。クッションに座った状態で殿部の下に手を入れて底付きの確認をしたり、空気量を調整したりといった管理作業が定期的に必要となるため、これをご自身あるいは介護者によって管理できる状況下でなければ使用を勧めることはできません。

半流体ゲルタイプクッション

ゼリーのような半流体を閉じ込めたパッドを用いたクッションになります。反発力が少なく身体形状に適合しやすいことから圧分散性に優れ、褥瘡リスクの低減を期待することができます。

その流動性ゆえに厚さを確保しにくいため、フォーム材のベースと組み合わせて、圧集中部位のみにパッドを置く製品が多くなっています。

ベースにフォーム材を使う場合、姿勢安定性は比較的高くなりますが、荷重によってパッドが変形しゲルが流れるため、そのままくり返し使用すると圧分散効果が得られなくなってしまいます。

そのため、使用毎にご自身あるいは介護者によってゲルを徒手的に寄せて戻し、効果を維持していく必要があります。

Hofferの座位能力分類を活用した車椅子用クッションの選定方法

車椅子用クッションの選び方については、クッションにどのような機能を求めるのかによって決まります。

  1. 座り心地の向上
  2. 座位姿勢の保持(ポジショニング)
  3. 接触面の皮膚の保護(スキンプロテクション)

上述した 3 つの使用目的に合致したものを選択することになりますが、対象者の身体機能によっては 3 つの機能を複合させた車椅子用クッションが必要になることもあります。

適切な車椅子用クッションが選定できるかどうかについては、対象者にとって非常に重要なことになるため、車椅子用クッションの選定は難しい作業であり、ある程度の経験値も必要になります。

そこで、車椅子用クッションを選定する時に有効な方法が Hoffer の座位能力分類(JSCC版)の活用になります。

Hoffer の座位能力分類とは、手の支持の有無で座位保持が可能か否かを評価する指標になります。評価はプラットフォーム上で実施し、器具なども使用しないため、非常に簡便な評価尺度といえます。

Hoffer の座位能力分類では、座位能力を 1 ~ 3 の 3 段階で判定します。評価の基準は以下の通りになります。

  • 座位能力 1:手の支持なしで座位可能(手を使わなくても 30 秒間座位を保持することができる)
  • 座位能力 2:手の支持があれば座位可能(身体を支えるために手で座面を支持することで 30 秒間座位を保持することができる)
  • 座位能力 3:座位不能(身体を支えるために手で座面を支持しても座位姿勢を保持することができない)

このように、Hoffer の座位能力分類は非常に簡便な評価尺度となります。更に判定した座位能力によって車椅子用クッションを選定することができます。

  • 座位能力 1:ウレタンフォームで作成されたクッションが推奨される。脊柱の変形などを認める場合には、背クッションや骨盤サポートを併用することも検討する。
  • 座位能力 2:ウレタンフォームとゲル素材の組み合わせによって作成されたクッション、空気で調整が可能なクッションが推奨される。自身で除圧が困難な場合には、ゲル素材や空気で調整が可能なクッションを使用することで除圧と座位保持を両立することができる。
  • 座位能力 3:ジョル状の流動体クッションや空気調整式クッションが推奨される。座位能力 3 となる対象者の多くが身体機能が低下しており、同時に褥瘡発生リスクも高いことが予想されるため、除圧機能の高いクッションが必要になる。

このように、Hoffer の座位能力分類の判定を行うことで、車椅子用クッションの選定に役立てることができます。

車椅子座面シートのたわみには注意

車椅子用クッションを選定する前に、クッションの設置環境について注意すべきポイントがあります。

それは、クッションを設置する車椅子の座面に問題はないのか、ということになります。車椅子の種類や構造にもよりますが、車椅子座面シートはたわむことがあります。

この問題は、時としてクッションの性能を棄損する可能性があります。そのため、車椅子の座面シート部に問題が発生していないのか、についての確認作業は欠かさず行う必要があります。

車椅子の使用年数が長くなってくると、メンテナンスを行っていても、たわみが発生することもあります。そのような場合には、シートと車椅子用クッションの間に、撓まない硬さを有した板材を敷くなどの工夫が必要になります。

クッションの適合評価

適合評価の最も基本的なポイントは、クッションと身体の接触面における過度な圧集中の有無の確認になります。

次に、クッションの使用目的に照らし合わせた達成度の確認になります。座り心地の改善が目的であれば使用者の主観評価が重要になります。ポジショニングであれば目的姿勢が実現できているかどうかと、必要とされる時間にわたってその姿勢が維持できるかどうかが重要となります。

スキンプロテクションであれば、圧分散の程度が重要な指標となります。いずれにおいても、わずかな座位時間では正確な評価は困難であり、対象者にとって必要な時間を複数回の評価によって判定していく必要があります。

定性的評価

現場の評価の多くは、定性的なものに留まっていると考えられます。しかし、この定性的な評価は重要なものになります。

実際、多忙な現場において適合の程度を大まかに把握するためには、接触面に手を入れて過度の圧集中の有無を確認し、使用者に使用感を口頭で尋ねていくという方法は妥当だと考えられます。

寧ろ避けるべきは、それさえも行われないことです。なんとなく車椅子用クッションを選んで、なんとなく使い続けることはQOLの低下にも繋がりかねないため、注意しましょう。

定量的評価(接触圧計測)

近年、比較的低価格な計測機器が登場し座面の定量的な接触圧計測が可能となりました。

これにより、坐骨結節下や仙骨部などへの過度な圧集中の有無や、全体的な圧分散の状況を確認することができます。

クッションのタイプの違いや、各種の調整による圧分散性の変化を視覚的・定量的に評価できるため、選定に有力な手掛かりとなります。

筆者の勤務地ではニッタ株式会社が取り扱っている座圧分布測定システム(Conform-Light)を使用しています。

定量的評価(姿勢計測)

クッションの構造や形状によって、骨盤や大腿部、さらには上部体幹の姿勢も変わる可能性があります。

特に、座位姿勢において骨盤の傾きは重要になります。傾斜角度計を用いた計測や、ISOに準拠した座位姿勢計測システムを活用して計測することで評価の質は高まると考えられます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「車椅子用クッションの選定方法」をキーワードに記事をまとめさせていただきました。

車椅子用クッションは車椅子を必要とする対象者にとって、欠かすことができない福祉用具の 1 つとなります。

こちらの記事で、車椅子用クッションについての理解が深まり、日々の診療や車椅子のセッティングに少しでもお力添えとなれば幸いです。

参考文献

  1. 木之瀬隆.車椅子シーティングによる褥瘡予防.日本義肢装具学会誌.2017,Vol.33,No.1,p21-26.
  2. 小松佳明.褥瘡.リハビリナース.vol.14,no.01 ,2021,p21-22.
  3. 廣島拓也.リハビリテーション専門職が行う車椅子上での褥瘡対策.車椅子シーティング研究.5:2020,p37-41.

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