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この記事は「パーキンソン病の評価方法」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
Hoehn & Yahrの分類はパーキンソン病の重症度を示すうえで以前から広く使用されています。また、Hoehn & Yahrの重症度分類が3以上かつ生活機能障害度2度以上の場合は、特定疾患医療費補助制度を使用することができる仕組みとなっているため、パーキンソン病患者とその家族にとって判定結果は重要なものとなります。
そのため、Hoehn-Yahrについて理解を深め、適切な判定ができるようにしておかなければなりません。そこで、この記事を読むことで下記の事項を理解できるようにしたいと思います。
- パーキンソン病の疫学について
- パーキンソン病の症状(4大症状)
- パーキンソン病の評価尺度について
- Hoehn & Yahrの重症度分類
- 生活機能障害度とは
こちらの記事がパーキンソン病のアセスメントの質の向上、症状の進行を防止させるための取り組みに少しでもお力添えになれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
パーキンソン病とは
パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで 2 番目に多い中枢神経変性疾患であり、本邦での有病率は人口 10 万人あたり 100 ~ 150 名と報告されています。また、進行性疾患でもあります。
罹病期間は長いことは特徴の 1 つとなり、罹病期間が数十年になることも少なくありません。近年では、新しい治療薬の開発など医療の進展により、パーキンソン病の予後が大きく改善しています。平均寿命についても、国民全体の平均寿命とさほど変わらない程、長生きができるようになってきています。
パーキンソン病の病因は中脳黒質変性症のドパミン作動性神経の変性であり、病変の細胞にはレビー小体といわれる蛋白質封入体を認めています。この蛋白質分解の経路においての障害が病態機序に関わるとされています。
パーキンソン病の症状は振戦、固縮、無動、姿勢反射障害の四大徴候が基本になりますが、これら運動症候以外にも自律神経障害、精神症状、疼痛、疲労などの非運動症候が合併し、進行とともに前傾姿勢やすくみ足が出現し、転倒のリスクが高くなります。
抗パーキンソン病薬による薬物治療による効果はみられるものの、経過とともに薬の効果が短くなる wearing-off 現象や、内服した時間に関係なく症状が良くなったり悪くなったりする on-off 現象がみられるようになります。
そのため、早期よりリハビリテーションを組み
合わせ、薬物治療の効果を最大に引き出し、ADL や QOL の維持・向上を図る必要があります。
パーキンソン病 評価のポイント
パーキンソン病の評価は、パーキンソン病の症状などを正確に把握し、最適な治療法を選択するために極めて重要になります。
適切な評価によって病気の進行度や特徴を把握し、パーキンソン病患者の生活の質を向上させるための適切な介入を行うことが可能となります。
パーキンソン病にみられる特徴的な所見としては、運動症状である以下の 4 大徴候になります。
- 安静時振戦
- 筋強剛(筋固縮)
- 無動、寡動
- 姿勢反射障害
これらの運動症状は一般的にパーキンソン病の進行とともに症状が重症化していきます。そのため、運動機能を始めとして生活に支障を来すこととなるパーキンソン病の症状になります。
また、パーキンソン病ではこれらの運動症状に留まらず、非運動症状として総称される様々な症状が出現する可能性があります。
非運動症状は多岐に渡り、便秘や流涎、脂顔、起立性低血圧、排尿障害、四肢冷感などの自律神経症状、抑うつ、不安、幻覚・妄想、衝動制御障害など精神医学的症状が病期の進行に伴って出現します。
さらに、パーキンソン病ではレビー小体型認知症の概念が確立されていることから、認知症や行動障害についての評価も重要となります。
パーキンソン病 評価方法
パーキンソン病の評価には古くから Hoehn & Yahr の重症度分類が用いられてきました。
最近は Hoehn & Yahr の重症度分類をさらに細分化した modified(修正版) Hoehn & Yahr 重症度分類も発表されています。
また、Hoehn & Yahr のようにパーキンソン病の重症度を段階づけした指標として、厚生労働省研究班が「生活機能障害度」という指標も開発されています。
Hoehn & Yahr や生活機能障害度は重症度を段階づける簡易的な評価になりますが、より詳しくパーキンソン病の病態や治療効果を判定する指標としては、パーキンソン病統一スケール(UPDRS)が Fahnらにより開発されています。
また、2008 年にはパーキンソン病統一スケール(UPDRS)の改訂版として MDS-UPDRS が発表されています。
パーキンソン病に特異的な評価方法ではありませんが、パーキンソン患者の ADL の評価方法としては、「Barthel Index」や「機能的自立度評価表(FIM)」も有効となります。ADL の評価においては機能だけではなく、福祉用具や住環境の評価も併せて行うことが重要になります。
QOL の評価には「PDQ-39」や 「SF-36®」が使用されています。PDQ-39 は、疾患特異的尺度として有用となります。一方、SF-36® は包括的尺度かつ国民標準値との比較が可能であり、国際的に最も普及している健康関連 QOL 尺度になります。
それぞれの評価方法についてわかりやすく解説していきます。
Hoehn & Yahr の重症度分類
古くから使用されているパーキンソン病の重症度を分類した評価方法になります。
日本語では「ホーン・ヤール」の重症度分類と読みます。
Hoehn & Yahr の重症度分類ではパーキンソン病による症状に応じて I 度から V 度の 5 段階で重症度(進行度)を判定します。
片側の手足に症状が出始めたら I 度、両側に出現したら II 度のように、わかりやすく段階づけされているため非常に使用しやすい評価方法となります。
Hoehn & Yahrの重症度分類を更に細分化した「modified(修正版) Hoehn & Yahr の重症度分類」も開発されています。
「modified(修正版) Hoehn & Yahr の重症度分類」はⅠ 度と Ⅱ 度の間、 Ⅱ 度と Ⅲ 度の間にそれぞれ 1.5 度と 2.5 度を追加したものとなっており、パーキンソン病の重症度を 7 段階で分類することができます。
生活機能障害度
「生活機能障害度」は Hoehn & Yahr の重症度分類と同様に、パーキンソン病の重症度(進行度)を判定するための指標となります。
Hoehn & Yahr の重症度分類は 5 段階で分類しますが、生活機能障害度は 3 段階の判定になるため、より簡易的な重症度分類となります。
本邦では、Hoehn & Yahrの重症度分類がⅢ度以上、かつ厚生労働省の生活機能障害度が 2 度以上が医療費助成の対象となる指定難病の要件になっています。
Barthel Index
Barthel Index(バーセルインデックス)の評価項目は、日常生活動作(ADL)の中でも特に重要性が高い 10 項目から構成されています。
各項目を自立度に応じて15点・10点・5点・0点で採点し、最高点 100 点、最低点 0 点となります。
FIM(機能的自立度評価法)
普段の日常生活で「している ADL 」を、18 項目、各 7 点満点で合計 18 ~ 126 点で評価する指標になります。パーキンソン病患者の ADL 能力を判定することにも優れています。
PDQ-39
PDQ-39 は活動性・ADL・情緒的健康・恥辱・社会的支援・認知・コミュニケーション・身体的不快感の 8 分野を 39 項目に分けた PD 患者の全般的な QOL を評価することができる質問票になります。
SF-36®
SF-36®(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)は、世界で最も広く使われている自己報告式の健康状態調査票になります。特定の疾患や症状などに特有な健康状態ではなく、包括的な健康概念を 8 つの領域によって測定するように組み立てられています。
36 項目の質問より構成されており、以下の 8 つの下位尺度に分類されます。1 ~ 4 は身体的健康度に強く関連し、5 ~ 8 は精神的健康度に強く関連します。下位尺度は 100 点満点でスコア化され、スコアが高いほど QOL が高いことを意味します。
- 身体機能:質問数 10 項目
- 日常役割機能(身体):質問数 4 項目
- 体の痛み:質問数 2 項目
- 全体的健康感:質問数 5 項目
- 活力:質問数 5 項目
- 社会生活機能:質問数 2 項目
- 日常役割機能(精神):質問数 3 項目
- 心の健康:質問数 5 項目
パーキンソン病のリハビリテーション
パーキンソン病のリハビリテーションは内科的かつ外科的な治療に加えて行うことで、症状の更なる改善や QOL の向上を期待することができる治療法になります。
リハビリテーションは多職種連携を図りながら実施することで、その有効性は高くなります。医師や看護師を始めとして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・義肢装具士・ソーシャルワーカー・音楽療法士の協業によって行うことが望ましいとされています。
特に運動療法については「パーキンソン病治療ガイドライン 2011」において推奨グレード A とされており、身体機能、健康関連 QOL、筋力、バランス、歩行速度の改善に有効であるとされています。適切な運動処方やリハビリテーションはパーキンソン病の治療の重要な一手段であるといえます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「パーキンソン病の評価方法」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事がパーキンソン病のアセスメントの質の向上や、症状の進行を防止させるための取り組みに少しでもお力添えになれば幸いです。
参考文献
- 久永欣哉,高橋信雄.パーキンソン病のリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2012,49,p738-745.
- 中馬孝容.パーキンソン病に対するリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2016,53,p524-528.
- 中西亮二,山永裕明,野尻晋一,出田透.パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2013,50,p658-670.