
こんにちは!リハビリくんです!
今回は、パーキンソン病のQOL評価となるPDQ-39について解説させて頂きます!
QOLとは「Quality of Life」の略称で、日本語では「生活の質」などと訳され「生きがい」や「満足度」という意味合いとなります。
医療や介護など患者・ご利用者の望む生活を支える上で重要な考え方になることは、皆様もご存知の通りかと思いますが、QOLを評価するにはどのような方法があるでしょうか?
そこで今回こちらの記事で、QOLの基礎知識とパーキンソン病のQOL評価となるPDQ-39についてまとめていきたいと思います!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
ここ近年はコロナ禍の影響もあり、外部の研修会などにも気軽に参加できなくなりましたよね。私の勤務先では、職場内での勉強会も規模が縮小していまいました。あらゆる方面で、以前と比較して自己研鑽する機会が減少してしまったように感じております。
そのような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠になります!
そこで、私自身も活用しており、大変役立っているのが下記の「リハノメ」です!
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QOLの評価について
QOLの評価は、人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念になります。まずは、QOLについておさらいしていきます。
医療におけるQOL
QOLという概念は、医療のあり方とともに発展してきました。従来の西洋医学では、病気の原因を取り除いて人の身体を治すことに重きを置かれていたために、「病気は治ったが患者は死んだ」と揶揄されるような問題が生じました。
そこで、病気を治すために患者の人間らしい生活を著しく損なうことは本末転倒であるという考えから、QOLが重要視されるようになったのです。たとえば、効果が同じであれば、機能をできるだけ温存するために縮小手術を選択するなど、治療効果だけではなくQOLも考慮した医療が行われるようになってきています。
QOLとADLの関連性について
QOLと密接な関わりがある用語にADL(Activity of Daily Life)があります。ADLは、日常生活を送るために必要な基本動作のことで、食事や更衣、排泄、入浴などがこれにあたります。
多くの人が、自分で食事ができたり、また家族や友人など親しい人と会食したりすることに幸福感を抱きます。また、排泄を自力で行うことは、個人の尊厳を守ることに繋がります。
こういったことから、ADLとQOLは密接な関係があり、ADLの維持はQOLを向上させるために大きな役割を担っているといえます。
QOL評価の種類
医療関係でQOL評価をする際は、健康と関連したQOLを評価すると思います。このことを健康関連QOLといいます。
健康関連QOLとは、「疾患や治療が、患者の主観的健康感(メンタルへルス・活力・痛みなど)や、毎日行っている仕事・家事・社会活動にどのようなインパクトを与えているかを定量化したもの」であると言われています。
健康関連QOLを分類すると、包括的尺度と疾患特異的尺度の2つの尺度があります。それぞれ長所・短所があるので、自分が使う時にどれが良いのか検討する必要があります。
包括的尺度について
包括的尺度とは、測定対象を特定の疾患患者に限定しないQOL尺度です。疾患を患っていない、いわゆる「健康な人」を評価することができます。
包括的尺度の代表的なものに、SF-36とEQ-5Dなどがあります。
たとえばSF-36と呼ばれる代表的な評価法は、科学的な信頼性の高さから国際的に広く使用されています。SF-36は、36の問いによって8つの健康概念「身体機能」「日常役割機能(身体)」「体の痛み」「全体的健康感」「活力」「社会生活機能」「日常役割機能(精神)」「心の健康」のスコアを算出し、QOLを評価します。
疾患特異的尺度について
疾患特異的尺度は、病気ごとの評価票です。他の疾患の患者では使用できず、また一般人と比較することはできません。
一方で疾患の症状に起因する状態をしっかりと測定できるように質問項目が並んでいるので、治療などの効果判定には、敏感に反応します。
今回はパーキンソン病に特異的なQOL尺度として有名なPDQ-39(Parkinson ’ s Disease Questionnaire-39)について紹介します。
PDQ-39の基礎知識
前述した通り、PDQ39(Parkinson ’ s Disease Questionnaire-39)はパーキンソン病に特異的なQOL評価法になります。対象者への質問または自己記入によって行います。
PDQ-39は活動性・ADL・情緒的健康・恥辱・社会的支援・認知・コミュニケーション・身体的不快感の8分野を39項目に分けたPD患者の全般的な QOLを評価することができる質問票になります。
1項目を0 点から4 点とし総得点は156点となります。総得点と8分野における各得点率で評価します。8分野における配点は、活動性(40点)ADL(24点)情緒的健康(24点)恥辱(16点)社会的支援(12点)認知(16点)コミュニケーション(12点)身体的不安感(12点)となっています。得点率が高いほどQOLの低下を示します。
Schragらは この尺度を用いてパーキンソン病患者のQOL評価を行い、抑うつ・不安定姿勢、認知力の低下がQOLに影響を及ぼすことを報告しています。
また、河本らは日本語版 PQD-39を作成し、日本人への適用の妥当性を検討し、内的整合性や妥当性を有するとしております。

パーキンソン病 診療ガイドライン
パーキンソン病の疾患特異的評価指標においてPDQ-39の推奨グレードは「A」となっています。パーキンソン病患者の健康関連 quality of lifeを測定する質問票で、内的整合性についてクロンバックのα係数 0.59〜0.94、テスト-再テスト法による級内相関係数 0.67〜0.87の報告があります。
妥当性として EuroQoL-5D とのスピアマンの相関係数は 0.53 〜0.71 と報告されています。PDQ-39 の運動に関する項目とH&Y stageとのスピアマンの相関係数は 0.63 でありました。
パーキンソン病については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【パーキンソニズムの症状と鑑別方法についての記事はこちらから】
PDQ-39 評価項目
可動性(運動能力)
1 やりたい余暇の活動を行うのに支障を感じましたか
2 家の事をするのに支障を感じましたか、例えば日曜大工、家事、料理など
3 買い物の荷物を持つのに支障を感じましたか
4 1000mを歩くのに困難を感じましたか
5 100mを歩くのに困難を感じましたか
6 好きなように家の周りを歩くのに支障を感じましたか
7 人込みの中で移動するのに支障を感じましたか
8 外出の際に付き添いが必要でしたか
9 人前で倒れるのではないかと恐ろしくなったり、心配になりましたか
10 望む以上に家にひきこもらなければなりませんでしたか
日常生活活動(ADL)
11 自分の身体を洗うのに不都合を感じましたか
12 着替えをするのに不都合を感じましたか
13 ボタン掛けや靴ひもを結ぶのに苦労しましたか
14 字をきれいに書くのに苦労しましたか
15 食べ物を切るのに苦労しましたか
16 飲み物をこぼさないように持つのに苦労しましたか
精神的な健康観(情緒的健康)
17 気分が落ち込みましたか
18 疎外感、孤独を感じましたか
19 涙ぐんだり、泣きたくなったりしましたか
20 怒ったり、憤慨したりしましたか
21 心配(不安)になりましたか
22 自分の将来が心配になりましたか
病気であることによる精神的負い目(スティグマ:恥辱)
23 自分がパーキンソン病であることを人に隠さなければならないと感じましたか
24 人前で食べたり飲んだりするような状況を避けましたか
25 パーキンソン病であるために人前で恥ずかしい思いをしましたか
26 他人の自分に対する反応を心配しましたか
社会的支援
27 人間関係に問題がありましたか
28 妻/夫や同棲者からあなたが必要とする支えが得られないという事がありましたか
29 家族/親しい友人からあなたが必要とする支えが得られないという事がありましたか
認知
30 日中気が付かない(予期せぬ)うちに眠ってしまったことがありましたか
31 注意力に問題がありましたか。例えば、読書やテレビを見ているときなど
32 記憶力が悪くなったと感じましたか
33 いやな夢や幻覚を見ましたか
コミュニケーション
34 話をするのに支障がありましたか
35 適切に他人と会話ができないと感じましたか
36 他の人から無視されたと感じましたか
身体的不快感
37 苦痛を伴う筋肉のけいれんやひきつけがありましたか
38 関節や、体に痛みを感じましたか
39 不快に寒さや、暑さを感じましたか
評価方法
計39項目から構成された各質問に対し、以下の 5 件法で採点していきます。
- まったくなかった:0点
- たまにあった :1点
- ときどきあった :2点
- しばしばあった :3点
- いつもあった :4点

PDQ-39の評価法をダウンロードできるようにしておきました!☺︎
評価表が必要なかたはこちらからどうぞ!
結果の解釈
計39項目から構成される0〜4点の5段階評価ということで、合計点は0〜156点で表します。点数が低いほど、QOLが高いことを示しています。
総得点、分野ごとの得点率で評価することができます。PDQ-39を活用した評価結果から、パーキンソン病の方が何に困っているか、また何に引け目を感じているか、どこを改善したいかなどの気付きにも繋がると考えられます。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます!
こちらの記事では、QOLの基礎知識とパーキンソン病のQOL評価となるPDQ-39についてまとめさせていただきました!
パーキンソン病の方に対して、評価法を用いてADLやIADLを評価することは重要になりますが、それらに加えて疾患特異的な評価尺度を用いることで、より対象者の状態を正確に捉えることができます。
特にPDQ-39についてはパーキンソン病に特徴的となる身体機能・運動能力から精神面まで細かく評価することができます。是非、評価法をダウンロードして、活用して頂ければと思います!
今回はパーキンソン病に得意的となるQOL評価について解説させて頂きましたが、ADL評価については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ADL評価法はどれを使えばいい?についての記事はこちらから】

参考文献
- 久永欣哉,高橋信雄.パーキンソン病のリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2012,49,p738-745.
- 中西亮二,山永裕明,野尻晋一,出田透.パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2013,50,p658-670.