結論:「理学療法士は生活できない?」は “給料だけ” の話ではありません
不安が強いときほど、先に「詰まりどころ」を棚卸しすると早いです。 PT キャリアガイド|最短の進め方を見る
「生活できない/やめとけ」と言われる背景には、地域ごとの需給、働き方(病院・回復期・生活期など)、残業や記録の設計、物価・家賃、疲労の蓄積といった “複数の要因” が重なることがあります。
大事なのは、原因をひとまとめにせず、お金/時間/将来性/職場環境/心身の負荷のどこが詰まっているかを分けることです。分けられれば、打ち手はシンプルになります。
「生活できない」と感じやすい 5 つの要因(まずは切り分け)
同じ「理学療法士」でも、つまずき方はパターン化できます。まずは “どこが詰まっているか” を特定して、迷いを減らします。
| 要因 | 起こりやすいこと | 最初に見る場所 | 次の一手(方向性) |
|---|---|---|---|
| 固定費が重い | 家賃・通信・車・保険で手元が残らない | 固定費一覧(家賃・通信・保険・サブスク) | 固定費の最適化( “まず減らす” ) |
| 時間が残らない | 残業・記録で生活が崩れ、回復できない | 残業時間/記録・会議・移動の内訳 | 業務設計の見直し/職場選択 |
| 職場環境が消耗型 | 教育・裁量・人間関係でメンタルが削れる | 相談先/教育体制/裁量の範囲 | 配置転換/環境変更( “合う場” を探す ) |
| 将来像が描けない | 供給過多・将来性の不安で焦りが強い | 地域の求人母数/キャリアの分岐点 | 通勤圏・領域・役割の再設計 |
| 心身の負荷が高い | 疲労が抜けず、継続できる気がしない | 睡眠・休息・疼痛/ストレスサイン | 負荷を下げる(勤務・業務・相談) |
最初にやること: 10 分の棚卸しで「詰まり」を特定する
いきなり転職や勉強を増やす前に、まず “どこが詰まっているか” を 10 分で特定します。原因が曖昧だと、頑張る方向を間違えて消耗します。
なお、「給料(手取り)が原因かも」と感じる場合は、このページでは深掘りせず、「給料が低い」原因の見切りラインと対策で “給与に特化して” 確認すると早いです。
| 見る項目 | チェック観点 | 危険サイン | 次の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 固定費 | 家賃・通信・保険の合計が重くないか | 毎月 “削れない支出” が多い | 固定費の整理(まず 1 つ外す) |
| 残業・記録 | 残業の主因が “記録/会議/移動” のどれか | 毎日 30 分以上の常態化 | 業務の棚卸し/記録の型化 |
| 回復(睡眠) | 睡眠が 6 時間未満になっていないか | 休日も疲労が残る | 負荷を下げる(勤務・業務・相談) |
| 教育・裁量 | 相談できる先が明確か/裁量が極端でないか | “孤立” して抱え込む | 相談ルート確保/環境変更 |
| 将来像 | 1 年後の役割(強み)が 1 つ言えるか | 方向性がなく焦りだけ強い | 通勤圏・領域・役割の再設計 |
“生活できる” に寄せる具体策(優先度順)
おすすめは「棚卸し → 選択肢の整理 → 小さく変える → 再評価」の順です。先に “変えやすいところ” から触ると、気持ちが落ち着きやすいです。
| 優先度 | アクション | 狙える効果 | 確認ポイント(失敗回避) |
|---|---|---|---|
| 高 | 固定費を 1 つだけ減らす(家賃・通信・保険・サブスク) | “手元が残る” 体感が最速で変わる | 削る順番は「継続できるもの」から |
| 高 | 残業の主因を 1 つ潰す(記録/会議/移動のどれか) | 時間と回復が戻り、生活が整う | “全部改善” ではなく 1 点集中にする |
| 中 | 通勤圏の再設計(比較できる求人母数を持つ) | 選択肢が増え、条件・環境が整いやすい | 家賃・通勤コスト込みで考える |
| 中 | 役割(強み)を 1 つ決めて積む(例:生活期/回復期/呼吸/褥瘡) | 将来不安が減り、評価されやすくなる | 広げすぎず “ 1 本だけ濃く” する |
| 低〜中 | 学びを “成果に結びつく形” にする(発表・院内教育・仕組み化) | 自信と評価の材料になる | 疲れている時期は無理に増やさない |
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
よくあるのは、「不安だから勉強や資格を増やす」→「生活がさらに崩れる」というパターンです。やる順番だけ固定すると、外しにくくなります。
| 場面 | OK | NG | 理由 |
|---|---|---|---|
| 不安が強い時 | 棚卸し(固定費・残業・睡眠)を先にやる | 勉強・資格・副業をいきなり増やす | 回復が削れ、生活が先に崩れる |
| 転職検討 | 比較できる母数を確保してから決める | 1 社だけ見て即決する | “相対比較” がないと判断がブレる |
| 残業対策 | 記録・会議・移動の主因を 1 つ潰す | 自宅持ち帰りで帳尻を合わせる | 拘束が増えて疲弊が加速する |
| 将来性不安 | 強みを 1 本だけ決めて積む | 焦って方向転換を繰り返す | “積み上げ” が分散して自信が削れる |
よくある質問( FAQ )
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Q1. 「やめとけ」と言われるのは、どこがつらいから?
A. 典型は「時間が残らない」「環境が消耗型」「将来像が描けない」の 3 つです。給料の話に見えても、実際は残業・記録・通勤や、相談先の不在で “回復できない” 状態が根っこにあることが多いです。
Q2. 供給過多が不安です。将来性はありますか?
A. 将来性は “地域差” と “役割差” が大きいです。悲観よりも、比較できる求人母数を持つ通勤圏を確保しつつ、強みを 1 本だけ積むほうが現実的です。
Q3. 新卒は何から始めれば、後で詰まりにくいですか?
A. まずは「安全・基本動作・ ADL ・チーム連携」を回せる経験を優先し、その上で “足せる強み” を作るのが堅実です。焦って方向転換を繰り返すより、 1 本だけ濃くするほうが長期で効きます。
Q4. 心身がしんどいとき、まず何を変えればいいですか?
A. 最優先は “回復の確保” です。睡眠が削れている場合は、固定費の整理や業務の棚卸しなど、生活を整える手を先に打つほうが、結果的に判断も良くなります。
Q5. 転職で失敗しないために、最低限どこを見ればいいですか?
A. ①教育・相談ルート ②残業の主因(記録・会議・移動) ③裁量の範囲 ④通勤と生活の整い方 ⑤キャリアの分岐(役割)が見えるか、の 5 点です。 “回復できる設計” があるかを最優先で見てください。
おわりに
「生活できない」と感じるときは、棚卸し → 小さく改善 → 比較 → 決断 → 再評価のリズムで回すと、感情に引っぱられずに前へ進めます。構造は変えにくいですが、生活の整え方と環境の選び方は今すぐ変えられます。
面談の準備で迷う場合は、チェックと比較を一気に進められるので、面談準備チェック&職場評価シート(ダウンロード)もあわせて使ってみてください。
参考文献
- 厚生労働省.理学療法士・作業療法士需給分科会(資料一覧).
- 厚生労働省.令和 6 年 賃金構造基本統計調査 結果の概況.
- Venturini E, et al. Prevalence of burnout among physiotherapists: a systematic review and meta-analysis. Physiotherapy. 2024;124:164-179. doi:10.1016/j.physio.2024.01.007. (PubMed)
- Burri SD, et al. Risk factors associated with physical therapist burnout: a systematic review. Physiotherapy. 2022;116:9-24. doi:10.1016/j.physio.2022.01.005. (PubMed)
- Roth L, et al. Factors associated with intent to leave the profession for allied health professionals: a systematic review. (PMC)
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


