こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「サルコペニア診断基準」をキーワードに記事を書いていきます!
サルコペニアの予防や改善に向けた運動療法および食事療法の重要性は皆様もご存知の通りだと思います。サルコペニアを見逃さずに、予防や改善を効果的に図るためにはサルコペニアの判定を正確に行う必要があります。
そのサルコペニアの判定方法ですが、EWGSOPやAWGSなど様々なものが報告されており、正直どれを使えばいいのか分からない方もいらっしゃると思います。
また、サルコペニアの判定は骨格筋量の測定が必須となります。そのため、機器がないから評価することができないとお考えの方もいるかもしれません。
- サルコペニアとは?
- サルコペニア診断はどのような歴史を辿ってきたのか?
- AWGS2019を用いたサルコペニア診断方法
- 身体機能評価における基準値について
サルコペニアを評価する時や、AWGS2019等の診断基準を用いる上で色々と悩む方もいらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、特に関心が高い分野が「栄養」と「褥瘡」になります!
職場以外の活動としては埼玉県理学療法士会にて活動をさせて頂いております
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
最近は仕事をするにしても、育児を全うするにしても、自分の身体作りが重要ということを再認識しております。身体作りを効果的に行うためにはプロテイン等の健康補助食品が欠かせません。
最近頼りにしているのが、マイプロテインの元社長が立ち上げたサプリメント・プロテイン「Naturecan(ネイチャーカン)フットネス」になります。Naturecan(ネイチャーカン)のプロテインは他ブランドと比べても健康志向であり、安全性も高いといえると思います!
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サルコペニアとは
サルコペニアという用語が生まれたのは、割と最近の話になります。1989年、Rosenberg博士により”サルコペニア”という用語が提唱されました。
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量減少を意味し、各種有害健康転帰に影響することから、医療介護や健康、様々な場面において重視されるようになりました。
サルコペニアの原因や対応方法については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【サルコペニアの原因4つと対応方法についての記事はこちらから】
サルコペニア診断の歴史
サルコペニアという用語が誕生してから、サルコペニアの診断基準もより現代的にアップデートされてきています。判定には幾つかの国際基準があるため、代表的なものを以下で説明します。
EWGSOP
2010年、ヨーロッパにおけるサルコペニアワーキンググループがサルコペニアの診断基準を報告しました。
EWGSOPによる報告以前は、各研究者や臨床家が各々独自の基準によりサルコペニアを判定していたため、統一した基準での有病率調査や介入効果の検証などが出来ていませんでした。
しかし、EWGSOPの報告以降、統一した基準でサルコペニアを判定することが可能となり、サルコペニアに関する研究を加速させるターニングポイントとなりました。
EWGSOPでは、握力・歩行速度・骨格筋量の3指
標を用いてサルコペニアを判定します。握力もしくは歩行速度のどちらか一方でも基準値未満となり、加えて骨格筋量減少が認められる場合にサルコペニアと判定します。この考え方は現在の判定基準のベースとなっています。
- 歩行速度は正常(>0.8m/s)か?※正常であれば握力測定へ、低下していれば骨格筋量測定に進む
- 握力は正常(女性≧20、男性≧30)か?※正常であればサルコペニアではない、低下していれば骨格筋量測定に進む
- 骨格筋量(DXA)は正常(女性≧5.5、男性≧7.26)か?※低下(女性<5.5、男性<7.26)している場合にはサルコペニアと判定される
AWGS
2014年にアジアにおけるサルコペニアワーキンググループがサルコペニアの診断基準を報告しました。
AWGSもEWGSOPと同様に、握力・歩行速度・ 骨格筋量の3指標によりサルコペニアを判定します。
EWGSOPと異なる点は、基準値をアジア人用に見直した点と骨格筋量計測に生体電気インピー
ダンス法(BIA)を認めた点になります。
また、AWGSでは歩行速度を計測してから必要に応じて握力を測定する流れでしたが、EWGSOPでは初めから握力&歩行速度を計測することが標準となっております。
BIA法による計測が認められたことにより、特定の医療機関のみならず、サルコペニアの判定ができる施設が増えたことが特徴になります。
- 握力(男性≧26、女性≧18)と歩行速度(>0.8m/s)は正常か?どちらも正常であればサルコペニアを否定し、どちらか一方でも低下していれば、筋骨格筋量計測に進む
- BIAあるいはDXAを用いて筋骨格筋量を測定し、低下している場合にサルコペニアと判定される
EWGSOP2
2018年にEWGSOPは2010年に報告した診断基準の改訂版となるEWGSOP2を報告しました。変化した点は診断の流れになります。
今までは歩行速度の測定や握力測定のように身体機能評価から始まっていましたが、EWGSOP2では質問紙であるSARCFや臨床症状などから、サルコペニアの可能性がある高齢者をスクリーニングするところから始まります。
その後、握力もしくは立ち上がりテストによって、筋力低下の有無を判定します。
- 質問紙(SARC-F)もしくは臨床的疑いにてサルコペニアを疑うような所見があるのか評価する。※SARC-Fにて4点以上あればサルコペニアを疑う
- 筋力低下があるのかを握力、立ち上がりテストを行い評価する。筋力低下を認めるのであれば、サルコペニア疑いということになり、骨格筋量の測定に進む
- DXA、BIA、CT、MRIにより骨格筋量の低下を認めるのか評価する。筋量・筋質が低下しているのであれば、サルコペニア確定となる。サルコペニアが確定した場合は重症度の評価に進む
- 歩行速度、SPPB、TUG、400m歩行を測定して身体機能の評価を行う。身体機能が低下しているのであれば重度サルコペニアと判定される
AWGS2019
2019年にAWGSは2014年に報告した診断基準改訂版となるAWGS2019を報告しております。2014年の診断基準と大きく変更した点は、EWGSOP→EWGSOP2での変更と同様に流れを大幅に変更したこと、基準値の見直しがなされたこと、さらにコミュニティーとクリニカルの2つのセッティングからサルコペニアの判定が進められるようになったことを挙げることができます。
判定指標は、筋力・身体機能・骨格筋量であり、低骨格筋量かつ低筋力もしくは低身体機能でサルコペニアと判定します。
現在、日本サルコペニアフレイル学会で推奨しているのはこのAWGS2019の診断基準となっています。
握力や歩行速度の基準値について
AWGS2019では、AWGS2014以降の様々な研究報告および臨床経験を参考に基準値の見直しがなされています。
握力は、日本およびアジア各国のデータを統合し、男女それぞれの第一四分位を参考に基準値を作成しております。その結果、男性が28kg、女性が18kgとなりAWGS2014と比較して男性が26kgから28kgへ引き上げられております。
歩行速度は、EWGSOPから0.8m/secと設定されてきましたが、1.0m/secに引き上げられております。握力と歩行速度の基準値が変更されているため、注意が必要になります。
- 握力:男性<28kg、女性<18kg
- 5回椅子立ち上がり:≧12sec
- 歩行速度:<1.0m/sec
- SPPB:≦9
- BIA:男性<7.0kg/㎡、女性<5.7kg/㎡
- DXA:男性<7.0kg/㎡、女性<5.4kg/㎡
コミュニティーセッティング
- スクリーニング検査(SARC-F、下腿周径)を行う。サルコペニアをうたがうような所見があれば下記に進む
- 筋力(握力)測定あるいは身体機能検査(5回立ち上がりテスト)を行う。どちらかにでも異常があればサルコペニアを疑う。
AWGS2019では、コミュニティーセッティングとクリニカルセッティングの2つのセッテイングから判定が可能な経路を準備しています。
サルコペニアは医療現場だけでなく地域でも問題となるため、地域で広くスクリーニングすることを重視するためにコミュニティーセッティングからの経路が準備されました。
コミュニティーセッティングではサルコペニア疑いまでを判定し、サルコペニア改善に向けた介入に結びつけることが目的となっております。
クリニカルセッティング
- 臨床症状の確認(機能低下、体重減少、認知機能低下、うつ症状、易転倒、低栄養、慢性疾患)と、スクリーニング検査(SARC-F、下腿周径)を行う。サルコペニアをうたがうような所見があれば下記に進む
- ①筋力評価(握力)、②身体機能評価(6m歩行・5回立ち上がり・SPPB)、③骨格筋量(DXAあるいはBIA)の測定を行う
- 骨格筋量低下に加えて筋力低下あるいは身体機能低下のどちらかを認めれば、サルコペニアと判定される
- 骨格筋量低下に加えて筋力低下も身体機能低下の両方を認めれば、重症サルコペニアと判定される
クリニカルセッティングは、臨床症状やスクリーニング検査より、サルコペニアの可能性のある高齢者を発見するところから始まります。
臨床症状としては機能低下や体重減少、スクリーニング検査としてはSARC-Fや下腿周径が挙げられています。
その後、筋力・身体機能(歩行速度、5回立ち上がり、SPPB)・骨格筋量(DXAもしくはBIA)の計測を行います。
サルコペニアの判定には、骨格筋量の減少が必須条件となり、これに加えて筋力低下もしくは身体機能低下が認められる場合にサルコペニアと判定します。
骨格筋量減少、筋力低下、身体機能低下の3指標ともに該当する場合には重症サルコペニアと判定します。
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まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「サルコペニアの診断基準」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
健康を脅かすサルコペニアやフレイルについては、身体の変化に早期に気づき、適切な対策を講じることが最も重要になります。医療従事者としての専門性を活かし、今後の超高齢化社会でますます問題となるであろうサルコペニアフレイル対策に臨んでいきましょう!
サルコペニアとフレイルの違いについてはご存知でしょうか。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【フレイルとサルコペニアの違いについての記事はこちらから】
参考文献
- 山田実.サルコペニア新診断基準 (AWGS2019)を踏まえた高齢者診療.日本老年医学会雑誌.58巻,2号,2021:4,p175-182.
- 吉村芳弘,田中智香,齊藤智子.骨格筋疾患(筋障害)としてのサルコペニアの定義と診断―EWGSOP2 と AWGS 2019 を中心に―.Jpn J Rehabil Med.Vol.57,No.5,2020,p439-448.