結論:給料が低いと感じたら「相場→制度→交渉」の順で対処し、見切りラインで転職判断を
「給料が低い」は、地域の相場と自院の制度(賞与・固定残業・評価)、そして交渉の有無で印象が大きく変わります。まず相場と制度を可視化し、改善余地があれば交渉、難しければ見切りラインで転職を検討しましょう。
相場確認チェック(まず“今の立ち位置”を見える化)
スマホでは表を横にスクロールできます。
| 確認項目 | 目安/相場の例 | チェック方法 |
|---|---|---|
| 総支給の分解 | 基本給/手当/固定残業/賞与月数(例:年2回×各◯ヶ月) | 給与明細・就業規則・労働条件通知書 |
| 固定残業の有無・時間数 | 「◯時間分含む」表記の有無、時間数が過大でないか | 雇用契約・募集要項の記載 |
| 残業代の実支給 | 1分単位支給か/切り捨てがないか | 就業規則・実際の明細 |
| 賞与テーブル | 規程上の月数と実績が大きく乖離していない | 就業規則・過去実績の確認 |
| 休日・有給 | 年間休日・有給付与/取得率の現実性 | 就業規則・面談での確認 |
| 業務設計(訪問など) | 稼働目標/キャンセル時の保証の有無 | 面談での具体質問・同僚ヒアリング |
| 地域相場 | 同圏内の月給レンジ/時給レンジ | 公的統計・求人票の横比較 |
“見切りライン”7 指標(改善不可なら転職を検討)
| 指標 | NG サインの例 | 解説/対処 |
|---|---|---|
| 固定残業 | 固定残業時間が過大/超過分の追加支給が曖昧 | 根本が制度設計。交渉で是正できないなら早期に見切りを。 |
| 残業の取り扱い | みなし・サービス残業が常態化 | 労務姿勢の問題。改善見込み薄なら転職前提で動く。 |
| 賞与テーブル | 規程が低水準/実績が安定しない | 交渉対象だが、法人文化の影響が大。限界がある。 |
| 評価制度 | 昇給根拠が不透明/面談が形骸化 | 指標の開示を依頼。拒まれるならキャリア停滞リスク。 |
| 基本給と手当のバランス | 基本給が低く手当依存 | 将来の昇給・退職金へ不利。テーブル自体の改善が必要。 |
| 成長機会 | 配属の幅/教育・役職パスが閉じている | 経験の横展開ができないと市場価値が上がりにくい。 |
| 兼業・副業 | 全面禁止・ガイドライン不在 | 時間単価の最適化が困難。制度化の見込みがなければ転換も。 |
給与交渉の準備(成功率を上げる4 ステップ)
- 相場レンジの仮説化:地域相場と自分の経験年数・役割をもとに希望レンジを明文化。
- 根拠の棚卸し:加算寄与、稼働率、新人教育、院内企画、資格などの実績を定量で。
- 条件の優先順位:基本給/賞与/残業の取り扱い/配属・役割の順に希望を整理。
- 代替案と退路:面談までに外部求人を把握し、「改善なければ転職」の選択肢を確保。
交渉の具体手順と切り返し例は、こちらの交渉ガイドを参照してください(本文内リンクは本ページではこれ 1 本のみ)。
交渉テンプレ(面談/メール)
面談での言い回し(例)
「直近 1 年の担当件数・加算寄与・教育活動をこのメモにまとめました。相場と照らし、基本給◯◯円、賞与テーブル◯◯ヶ月への見直しをご相談したく、代替案として役割拡張(◯◯の企画推進)も併せて提案します。」
メールテンプレ(例)
件名:給与条件のご相談(◯◯部署/氏名) ◯◯部長 お世話になっております。◯◯部署の氏名です。 この一年の実績(稼働率・加算・教育)を添付資料に整理しました。 地域相場と役割を踏まえ、【基本給◯◯円/賞与◯◯ヶ月】への見直しを 検討いただけますと幸いです。代替案として、◯◯の役割拡張も可能です。 ご多忙のところ恐縮ですが、◯月◯週のいずれかで面談枠をご調整いただけ ないでしょうか。よろしくお願いいたします。
転職のサインとタイミング
- サイン:制度開示を拒む/不払いが是正されない/評価が恣意的/将来像が描けない。
- タイミング:年度切替前後、賞与支給後、配属改編期など。内定〜入職のズレも逆算。
- 次の職場選び:就業規則・残業運用・賞与テーブル・教育体制を事前に確認。
よくある質問(短答)
Q. 新卒・若手の見切りラインは?
A. 学びの密度を優先しつつも、固定残業と残業の実支給だけは早期に可視化。制度に改善余地がなければ 1〜2 年での転換も選択肢です。
Q. 地方と都市、どちらが有利?
A. 給与レンジは都市部が広がりやすい一方、生活コストと通勤時間のトレードオフがあります。可処分所得で比較しましょう。
Q. 資格取得は年収アップに有効?
A. 資格手当は職場依存です。手当の有無・金額だけでなく、役職・評価に反映されるかを確認してください。
参考文献
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」結果の概況(令和 6 年)公式ページ
- 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会/理学療法士・作業療法士需給分科会」資料一覧
- 公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」会員・分布データ
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」公式ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


