脳卒中重症度スケールJapan Stroke Scale:JSS

脳卒中
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「脳卒中重症度スケール」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

脳卒中は、脳の血管が詰まるか破れることで、脳組織が損傷する病気になります。主な症状として「顔の半分が麻痺する」「一方の手足が動かなくなる」「話すことや飲み込むことが困難になる」なとが挙げられますが、全ての脳卒中が同じ症状を示すわけではなく、症状は損傷した脳の部位や程度によって異なります。

  

脳卒中の発症後、どのようなリハビリが必要かを判断するためには、正確な評価が特に重要となります。適切な評価を行うことで、「患者様の身体状態の把握」「最適なリハビリテーションプログラムの立案」「リハビリの進行度を定期的にチェックし、必要に応じてプランを調整」などに繋がると考えられます。

  

脳卒中評価については、症状も様々なものがありますし、評価方法についても複数の種類のものに分類されるため、いろいろとわからないこともあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

       

こちらの記事で脳卒中評価スケールについての理解を深め、臨床における脳卒中診療の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

脳卒中評価における問題点について

脳卒中患者の経過観察や治療効果判定を行うためには、脳卒中の重症度を客観的定量的に評価できる指標が必要になります。

脳卒中の重症度評価として、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)を始めとして数多くの評価指標が国内外から発表されてきましたが、定量的という観点からは課題が残るような状況でありました。

その原因としては、脳卒中の重症度を判定するのに必要な評価項目の重みづけが難しいことが挙げられます。

多岐に渡る脳卒中の症状について項目ごとに重症度による段階分けをすることは可能ですが、それらを総合して脳卒中の重症度を判定する為には各症状の相対的重要度を知る必要があります。しかし、既存の評価指標では、それを科学的に証明するところまでは達していない現状にあります。

NIHSS については、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【NIHSS:脳卒中神経学的重症度についての記事はこちらから

定量的な脳卒中評価法の開発

日本脳卒中学会は 1994 年に全国の脳卒中専門家の代表を集結し、ストロークスケール委員会を発 足し、1997 年に脳卒中重症度スケール(JSS)の開発に至っております。

脳卒中重症度スケール(JSS)は、脳卒中の様々な症状について科学的な重み付けがなされており、「信頼性」「再現性」「有効性」「反応性」の全てが多数の医師、看護師、患者によって検証され、定量性が確保されたストロークスケールとなっております。

従来の脳卒中における指標が定量的でない最大の要因は前項で説明した通り、重み付けの問題でありました。

それを解決するために、脳卒中重症度スケール(JSS)では Conjoint 分析の手法を用いて科学的根拠のある重み付けを行っております。この部分が、脳卒中重症度スケール(JSS)最大の特徴になります。

脳卒中重症度スケール(JSS)とは

脳卒中重症度スケール(Japan Stroke Scale)とは、脳卒中を発症した患者の急性期における重症度を判定するためのスケールになります。1997 年に日本脳卒中学会によって発表されて以降、急性期の脳卒中診療の場において広く活用されています。

脳卒中重症度スケール(JSS)は意識や神経症状に関する 12 項目についてそれぞれ 2 ~ 3 段階に評価を行い、それぞれに定められた(重みづけをされた)点数を出します。

得られた 12 項目の点数を足し算することで合計点を算出し、重症度を評価します。また、各項目の数値は統計的根拠に基づいて定められているため、合計された点数は重症度に比例するのが大きな特徴となります。

脳卒中重症度スケール(JSS)は意識障害の占めるウェイトが高くなっています。そのため、意識障害の程度がつよく出現することが考えられる重症ケース(急性期)の評価に適しているとされています。

脳卒中重症度スケール 評価項目

評価項目は全 12 項目となります。4 つめの設問(視野欠損または半盲)については、A か B の 2 件法、そのほかの 11 項目については A から C の 3 件法となります。

  1. 意識
  2. 言語
  3. 無視
  4. 視野欠損または半盲
  5. 眼球運動障害
  6. 瞳孔異常
  7. 顔面麻痺
  8. 足底反射
  9. 感覚系
  10. 運動系(手)
  11. 運動系(腕)
  12. 運動系(下肢)

脳卒中重症度スケール 評価方法

  • 項目ごと脳卒中の症状に適した選択肢(A 〜 C)を選択し、それに基づいた重みづけがなされた得点にチェックを入れます
  • 12 項目分の合計値を足し算で算出し、最後に constant の値 – 14.71 を加えます
  • 以上の計算で得られた数値が重症度スコアとなります
  • 数値は最低 – 0.38 最大 26.95 となり、数値が大きいほど重症度が高いことを示します
  • 意識の評価は 2 種類用意されていますが、原則として Glasgow Coma Scale を使用します。
  • やむを得ない場合に限り Japan Coma Scale で代用してもよいとされています

評価用紙や評価方法については日本脳卒中学会のホームページよりダウンロードおよび閲覧することが可能になります。

カットオフ値、結果の解釈

カットオフ値は特別定められていません。

得点(数値)は最低 – 0.38 最大 26.95 となり、数値が大きいほど重症度が高いことを示します。

JSS-M、JSS-D、JSS-E

脳卒中重症度スケール(JSS)の採点については、意識障害の占める割合が高くなっています。そのため、意識障害の程度が高い重症ケースの評価に適しているとされています。

しかし、このスケールは意識障害が軽度な患者さんは実際の重症度よりも低く評価されがちというデメリットもあるため、日本脳卒中学会は運動機能障害に評価に重点を置いた脳卒中運動障害重症度スケール(JSS-M)などの新たなスケールも開発されています。

他にも脳卒中高次脳機能スケール(JSS-H)、脳卒中感情障害(うつ・情動障害)スケール(JSS-D・JSS-E)が開発されております。

これらの評価用紙や評価方法についても日本脳卒中学会のホームページよりダウンロードおよび閲覧することが可能になります。

脳卒中のリハビリで有用なその他の評価スケール

こちらの記事で紹介した 脳卒中重症度スケール(JSS)も信頼性・妥当性が認められた脳卒中評価スケールになりますが、脳卒中重症度スケール(JSS)の他にも有用な脳卒中評価スケールがありますので、簡単に説明させていただきます。

SIAS(脳卒中機能障害評価法)

SIAS とは、Stroke Impairment Assessment Set の頭文字をとってできた略称になります。

SIAS は信頼性および妥当性の検証がなされた脳卒中後の機能障害に関する総合評価指標であり、脳卒中治療ガイドラインにおいても SIAS の使用が推奨されています。

SIAS は「麻痺側運動機能」「筋緊張」「感覚機能」「関節可動域」「疼痛」「体幹機能」「視空間認知」「言語機能」「非麻痺側機能」の 9 つの機能障害により構成されており、評価項目としては合計 22 項目あります。

判定方法については「麻痺側運動機能」についての 5 項目のみ 0 〜 5 点の 6 件法、他の 17 項目については 0 〜 3 点の 4 件法により判定を行います。

いずれも項目も点数が低いほど機能障害の重症度が高く、点数が高いほど機能障害が軽度であることを示します。

SIAS の合計点の得点範囲は 0 〜76 点になり、こちらも点数が高いほど脳卒中による機能障害の重症度が高いという判断になります。

SIAS については、他の記事で詳しくまとめています!《【脳卒中機能評価法:SIASとは?】22の評価項目|総得点76点》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

NIH Stroke scale(NIHSS)

NIH Stroke scale(NIHSS)は「National Institutes of Health Stroke Scale」の略称であり、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など脳卒中の神経学的重症度を評価することが可能であり、国際的に広く利用されております。

評価項目は 合計 11 項目から構成されており、評価結果に基づいて判定します。各項目は 0 点から 4 点までの範囲で評価されます。総得点は、最低 0 点から最高 42 点までとなり、合計スコアが脳卒中の重症度を示します。

NIH Stroke scale(NIHSS)については、他の記事で詳しくまとめています!《【NIHSS評価項目とカットオフ値】脳卒中・脳梗塞の評価方法とは》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

The Canadian Neurological Scale(CNS)

The Canadian Neurological Scale(CNS)とは、運動機能、精神状態の大項目から構成される標準的神経学的評価になります。

The Canadian Neurological Scale(CNS)の評価項目は、「精神状態」と「運動機能」の 2 つの大項目に分類することができます。

「精神状態」では意識レベル、見当識、従命の 3 つの設問から評価を行います。「精神状態」の得点範囲は 1.0 〜 5.5 点となり得点が低いほど脳卒中の重症度が高いことを示します。

「運動機能」では顔面、両上肢、両下肢の運動機能を評価します。「精神状態」の従命の設問の結果によって、評価方法が「A1セクション(理解力がある人)」と「A2セクション(理解力が欠如している人)」に分類されます。

The Canadian Neurological Scale(CNS)の得点範囲は 1.0 〜 12.0 となり、得点が低いほど脳卒中の重症度が高いことを示します。

カットオフ値は特別定まっておりませんが、脳卒中発症直後から評価することが可能であるため、発症直後の重症度を捉え、その後の重症度の変化を定量的に評価できることは有用であると考えられます。

The Canadian Neurological Scale(CNS)については、他の記事で詳しくまとめています!《【CNS】Canadian Neurological Scale》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

臨床的体幹機能検査:FACT

臨床的体幹機能検査(Functional Assessment of the Coordination of Trunk movement:FACT)は、脳卒中患者の体幹機能を評価するための指標になります。

脳卒中患者において体幹機能の重要性はかねてより指摘されておりました。脳卒中患者に対する評価尺度の SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)や TCT(Trunk Control test)の項目に体幹機能を評価する項目があるものの、体幹機能評価としては十分な評価には至らないのではないかという課題がありました。

そこで、より治療指向的な体幹機能の評価指標として、臨床的体幹機能検査(FACT)が開発されております。

臨床的体幹機能検査(FACT)は、10 項目の評価項目より構成されています。「可能」か「不能」で判定する項目が 8 項目、「両側可能」か「片側可能」か「不能」で判定する項目が 2 項目となっています。採点は各項目の得点を加算していき、得点範囲は 0 ~ 20 点、得点が高いほど体幹機能が高いことを示します。

臨床的体幹機能検査(FACT)については、他の記事で詳しくまとめています!《臨床的体幹機能検査(FACT)とは?脳卒中患者の体幹機能評価尺度》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「脳卒中重症度スケール」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が脳卒中評価スケールについての理解力向上をもたらし、臨床における脳卒中診療に少しでもお力添えになれば幸いです!

参考文献

  1. 日本脳卒中学会.脳卒中ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023].
  2. 寺山靖夫. JSSと従来の重症度スケールとの比較.脳卒中.21巻,4号,1999年,p402-407.
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