NIHSSの評価方法|11項目を順番どおりに実施する手順
NIHSSは、項目の順番、指示、保持角度、規定時間を変えずに実施することが重要です。検査者の判断で順番を入れ替えたり、反応を見て何度もやり直したりすると、前回値との比較が難しくなります。
この記事では、NIHSSを実施する医療従事者向けに、評価前の準備、11項目の流れ、採点時の基本原則、記録方法を整理します。A4記録シートPDFと、スマートフォンでも入力しやすい自動計算ツールを利用できます。
なお、この記事は実施手順を確認するための補助資料です。各選択肢の正式な採点基準は、NINDSの公式NIH Stroke Scaleおよび所属施設の研修資料と照合してください。
脳卒中評価全体の中でNIHSSをいつ使うか確認したい場合は、病期別の評価項目から確認できます。
NIHSS記録シートPDFをダウンロードする
院内共有や再評価に使いやすいように、A4 1枚で評価条件、各項目の点数、根拠、再評価メモを記録できるシートを用意しています。合計点だけでなく、変化した項目と実施条件を残すために使用してください。
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NIHSS自動計算ツール
各項目の点数を選択すると、NIHSSの合計点が自動で更新されます。スマートフォンでは1項目ずつ縦に表示され、画面下部で合計点と未入力数を確認できます。
未入力項目は0点として計算されます。転記時の計算確認に使用し、最終的な点数と項目内訳は正式な評価票へ記録してください。
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NIHSSを実施するときの基本原則
NIHSSは、公式票に記載された項目順に実施し、各項目の実施直後に点数を記録します。前の項目へ戻って点数を変更したり、患者の反応が良くなるまで繰り返したりしないことが基本です。

| 原則 | 実施方法 |
|---|---|
| 項目順 | 公式票に記載された順番で実施する。 |
| 採点時点 | 各項目を実施した直後に、その時点の遂行を記録する。 |
| 再試行 | 最良値を得るための練習や繰り返しを行わない。 |
| 指示 | 公式手順に沿った指示を用い、不要なヒントや誘導を加えない。 |
| 観察 | 患者が「できるはず」ではなく、評価時に実際に示した反応を採点する。 |
| 既存障害 | 発症前からの障害があっても、評価時の遂行を採点する。既存障害と今回の変化は所見欄へ分けて記録する。 |
NIHSSは大きく11項目と表現されますが、意識レベルは1a〜1c、上肢運動は左右、下肢運動も左右に分かれています。合計点は0〜42点です。
評価前にそろえる条件
再評価では、可能な範囲で体位、補助具、周囲環境、実施時刻などの条件をそろえます。点数が変化したときに、神経症状の変化と評価条件の違いを区別しやすくするためです。
| カテゴリ | 確認事項 |
|---|---|
| 環境 | 必要な刺激へ反応できるよう、照明や周囲の騒音を確認する。 |
| 補助具 | 普段使用している眼鏡、補聴器、義歯などの使用状況を確認して記録する。 |
| 体位 | 上肢運動と下肢運動で規定された角度を確保できる体位に調整する。 |
| 全身状態 | 鎮静、疼痛、低酸素、循環動態、せん妄など、遂行へ影響する条件を確認する。 |
| 既存障害 | 失語、認知機能障害、視聴覚障害、運動障害など、発症前から存在した所見を確認する。 |
| 実施情報 | 日時、評価者、体位、補助具、意識へ影響する薬剤などを記録できるようにする。 |
患者が一部の課題を実施できない場合も、評価者の判断だけで一律に0点としたり、未実施扱いにしたりしません。各項目の正式な採点規則に従い、必要な理由を所見欄へ残します。
NIHSSを項目順に実施する流れ
評価は、意識レベルから消去現象・注意障害まで、公式票の順番に沿って進めます。上肢・下肢運動では角度と保持時間を守り、言語と構音障害は別の機能として評価します。
- 実施目的を簡潔に説明する:長い練習は行わず、必要な補助具と体位を確認します。
- 公式票の順に実施する:意識レベル、注視、視野、顔面麻痺、上肢運動、下肢運動、運動失調、感覚、言語、構音障害、消去現象・注意障害の順に進めます。
- 各項目の直後に記録する:後から前の項目へ戻って点数を変更しません。
- 規定条件を守る:上肢は座位90度または仰臥位45度で10秒、下肢は仰臥位30度で5秒の保持を確認します。
- 合計点と内訳を残す:合計点だけでなく、左右差、失語、無視、意識レベルなど、変化した項目を記録します。
NIHSS全11項目の要点
以下は、項目の流れと観察点を確認するための早見表です。各点数の厳密な選択条件は、NINDSの公式評価票で確認してください。
| 項目 | 名称 | 点数 | 主な観察点 |
|---|---|---|---|
| 1a | 意識水準 | 0〜3 | 覚醒状態と刺激に対する反応を確認する。 |
| 1b | 意識障害に関する質問 | 0〜2 | 規定された質問への回答を確認する。 |
| 1c | 意識障害に関する従命 | 0〜2 | 規定された命令の遂行を確認する。 |
| 2 | 最良の注視 | 0〜2 | 水平眼球運動と共同偏視を確認する。 |
| 3 | 視野 | 0〜3 | 左右の視野欠損を確認する。 |
| 4 | 顔面麻痺 | 0〜3 | 顔面運動の左右差と麻痺の範囲を確認する。 |
| 5a・5b | 上肢の運動 | 各0〜4 | 左右別に、規定角度で10秒間の保持と落下を確認する。 |
| 6a・6b | 下肢の運動 | 各0〜4 | 左右別に、仰臥位30度で5秒間の保持と落下を確認する。 |
| 7 | 運動失調 | 0〜2 | 麻痺では説明できない四肢の運動失調を確認する。 |
| 8 | 感覚 | 0〜2 | 刺激に対する感覚低下と左右差を確認する。 |
| 9 | 最良の言語 | 0〜3 | 理解、表出、呼称、文章表現などから失語を評価する。 |
| 10 | 構音障害 | 0〜2 | 発話内容ではなく、発音の明瞭さを評価する。 |
| 11 | 消去現象・注意障害 | 0〜2 | 視覚・触覚などへの不注意や二重同時刺激での消去を確認する。 |
上肢・下肢運動は角度と時間を固定する
運動項目では、筋力の印象ではなく、規定された肢位で規定時間中にどのように落下したかを観察します。MMTの結果をNIHSSへ置き換えて採点するものではありません。
| 項目 | 開始肢位 | 保持時間 | 記録する所見 |
|---|---|---|---|
| 上肢運動 | 座位90度または仰臥位45度 | 10秒 | 左右別の保持、ドリフト、支持面への落下、運動の有無 |
| 下肢運動 | 仰臥位30度 | 5秒 | 左右別の保持、ドリフト、支持面への落下、運動の有無 |
疼痛、関節可動域制限、切断などがある場合は、独自判断で採点方法を変更せず、公式票の規則に従います。点数へ影響した背景は所見欄に併記してください。
失語と構音障害を分けて評価する
第9項目は言語機能、第10項目は発音の明瞭さを評価します。「話しにくい」という一つの所見だけで両者をまとめて採点しないことが重要です。
| 項目 | 主にみる機能 | 観察例 |
|---|---|---|
| 第9項目:言語 | 理解、表出、語の選択、内容のまとまり | 発音は明瞭でも、呼称できない、指示を理解できない、内容が成立しない。 |
| 第10項目:構音障害 | 発音の明瞭度 | 内容や語の選択は適切だが、発音が不明瞭で聞き取りにくい。 |
既存障害がある場合の記録方法
NIHSSは「今回の発症で増えた点数」ではなく、評価時点で観察された遂行を採点します。発症前から失語、認知機能障害、視聴覚障害、片麻痺などがある場合も、その影響を点数から差し引くのではありません。
一方で、臨床的な解釈には発症前の状態が欠かせません。点数とは別に、既存障害と今回確認された変化を記録します。
記録例
NIHSS合計:○点。内訳:1a=○、1b=○、1c=○、5a=○、5b=○、9=○、11=○。発症前から○○を認める。今回は家族情報と比較して○○の低下あり。評価体位は○○、眼鏡・補聴器は○○、鎮静・疼痛の影響は○○。前回から変化した項目は○○。
合計点と項目内訳の読み方
NIHSSの合計点は神経学的重症度を共有する指標ですが、合計点だけでは症候の内容を表せません。同じ合計点でも、意識障害、失語、無視、上下肢麻痺のどこで点が付いたかにより、必要な観察や介助は異なります。
| 合計点 | 便宜的な表現 | 確認すること |
|---|---|---|
| 0 | 明らかな得点なし | NIHSSで捉えにくい症候を含め、診察・画像・経過と統合する。 |
| 1〜4 | 軽症 | 失語、無視、手指機能など、合計点以上に生活へ影響する所見を確認する。 |
| 5〜15 | 中等症 | 主要な得点項目、左右差、経時変化を確認する。 |
| 16〜20 | 中等症から重症 | 意識、運動、言語、嚥下を含む全身管理上の課題を共有する。 |
| 21〜42 | 重症 | 神経症状と全身状態を継続して評価し、多職種で対応を共有する。 |
この区分は重症度を概観するための便宜的な整理です。治療適応、離床可否、予後を合計点だけで決定するものではありません。急な点数変化や新たな神経症状を認めた場合は、通常の再評価予定を待たず、所属施設の急変対応手順に従って医師・看護師へ共有します。
NIHSSの点数がぶれやすい場面
評価者間で点数が変わるときは、患者の変化だけでなく、順番、指示、体位、時間、補助具の違いを確認します。とくに運動、言語、構音障害は、実施条件を記録しておくと原因を振り返りやすくなります。
| 起こりやすい失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 項目の順番を変える | 疲労、学習、直前の課題による影響が変わる。 | 公式票に記載された順で実施する。 |
| 正答するまで繰り返す | 初回の遂行ではなく練習後の結果になる。 | 公式手順で認められていない再試行を行わない。 |
| 指示やヒントが評価者ごとに異なる | 課題の難易度が変わる。 | 公式手順の指示へ統一する。 |
| 保持時間を短縮する | 時間経過後のドリフトや落下を見逃す。 | 上肢10秒、下肢5秒を計測する。 |
| MMTを運動項目へ置き換える | NIHSSで規定された観察条件と異なる。 | 規定肢位での保持と落下を観察する。 |
| 失語と構音障害をまとめる | 言語内容の障害と発音の障害を区別できない。 | 第9項目と第10項目をそれぞれの規則で採点する。 |
| 既存障害の点数を差し引く | 評価時点の神経学的所見を表す点数ではなくなる。 | 評価時の遂行を採点し、既存障害は別記する。 |
再評価で比較しやすい記録の型
記録では、合計点、項目内訳、実施条件、前回から変化した項目をセットにします。「NIHSS○点」のみでは、変化の原因や必要な対応を共有しにくくなります。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 実施日時、評価者、評価目的 |
| 合計点 | NIHSSの合計点 |
| 内訳 | 各項目の点数、とくに左右差と高得点項目 |
| 評価条件 | 体位、補助具、酸素療法、鎮静、疼痛など |
| 既存障害 | 発症前から存在する失語、麻痺、視聴覚障害など |
| 経時変化 | 前回から変化した項目と変化量 |
| 対応 | 共有先、追加評価、観察強化、急変対応の有無 |
NIHSSの評価でよくある質問
Q1. 発症前から失語や片麻痺がある場合、その分を点数から差し引きますか?
A. 原則として差し引きません。NIHSSでは評価時点で観察された遂行を採点します。発症前からの障害と今回の変化は、合計点とは別に所見欄へ記録します。
Q2. 一度うまくできなかった場合、もう一度実施してよいですか?
A. 最良値を得るための練習や反復は行いません。公式手順で再提示が定められている場合を除き、その項目を実施した時点の遂行を記録します。
Q3. NIHSSが0点なら脳卒中症状はないと判断できますか?
A. NIHSSが0点でも、すべての神経症状を否定できるわけではありません。診察、画像所見、発症経過、NIHSSで捉えにくい症状を含めて判断します。
Q4. 複数職種で使用するとき、何を統一すればよいですか?
A. 公式票、項目順、指示方法、上肢・下肢の角度と保持時間、補助具の扱い、記録書式を統一します。独自の短縮手順を作るのではなく、正式な採点方法を共通基準にしてください。
次に確認する記事
NIHSSを安定して運用するには、この尺度の手順だけでなく、脳卒中評価全体での位置づけと、他の重症度尺度との役割分担を整理する必要があります。
- A(全体像):脳卒中リハの評価項目を病期別に確認する
- B(使い分け):脳卒中重症度スケールの違いを確認する
参考文献
- Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864–870. doi: 10.1161/01.STR.20.7.864. PubMed: 2749846
- National Institute of Neurological Disorders and Stroke. NIH Stroke Scale. NINDS. NIH Stroke Scale PDF
- Lyden P. Using the National Institutes of Health Stroke Scale: a cautionary tale. Stroke. 2017;48(2):513–519. doi: 10.1161/STROKEAHA.116.015434
- Powers WJ, Rabinstein AA, Ackerson T, et al. Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update to the 2018 Guidelines. Stroke. 2019;50(12):e344–e418. doi: 10.1161/STR.0000000000000211. PubMed: 31662037
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

