【認知症の種類と特徴】MCI(軽度認知障害)の概念と4大認知症

認知症
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リハビリくん
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こんにちは! リハビリくんです!

こちらでは「認知症の種類」をキーワードに記事を書いていきます!

    

超高齢化社会が進む中、認知症高齢者へのアプローチが医療・介護の課題になることは間違いないと考えられます。

病院や施設で働いていると認知症だと考えられる高齢者と関わる機会が多いと思います。実際に日本の高齢者は、およそ 3 割もの人が認知症もしくは MCI(軽度認知障害)の状態にあるのが現状になります。

   

認知症という言葉には馴染みがあると思いますが、MCI(軽度認知障害)の概念、どこから認知症でどこから MCI なのか、認知症の種類と特徴について、など知らないといけない情報は満載ですが、いろいろとわからないこともあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

       

こちらの記事で認知症についての理解を深め、臨床における認知症高齢者への支援に繋がると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

認知症高齢者は増え続けている

本邦の総人口は、1967 年に 1 億人を突破、2008 年には 1 億 2,808 万人とピークに達し、それ以降は減少の曲線を辿っております。

総人口減少の一方、65 歳以上の人口は緩徐に増加しているため、高齢化率は増加しております。総人口が減少しているのに、高齢者は増える、この人口動態こそが超高齢化社会と言われる所以になります。

更に、高齢化に伴い認知症高齢者は増加傾向にあります。認知症の有病者数は 2012 年で 462 万人でしたが、2025 年には約 730 万人まで増加するのではないかと推定されています。

特に認知症についての統計から考えると、75 歳以降の後期高齢者で女性優位に認知症有病率が増加することが報告されています。

近年では認知症の予備軍である MCI(軽度認知障害)についても注目されています。先ほど認知症の有病者数は 2012 年時点で 462 万人と説明しましたが、MCI(軽度認知障害)についても同等数(400 万人程度)存在すると考えられています。

日本全体で考えると、およそ 3 割の高齢者が認知症あるいは、MCI(軽度認知障害)ということになります。認知症という疾患のケアの難しさを考えると、この数字は本邦が抱える喫緊の課題かと考えられます。

認知症とは?診断基準について

認知症とは「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習・言語・判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群」と定義されています。

認知症と区別すべき状態として、加齢による認知機能の低下、うつ状態による仮性認知症、意識障害・せん妄、精神発達遅滞が挙げられます。認知症については、上記の状態との鑑別が必要となり、特に加齢による認知機能の低下との区別が必要となります。

これをもとにした診断基準は以下の通りになります。

  1. 記憶力の低下
  2. 認知能力の低下

上記 2 項目を原因として下記 4 項目を認める場合に認知症の診断基準を満たします。

  1. 日常生活動作や遂行機能に支障をきたす
  2. 6ヶ月以上存在している
  3. 意識混滑がない
  4. 情緒易変性、易刺激性、無感情、社会的行動の粗雑化のうち1項目以上を認める

軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害(MCI)とは、認知症の発症の前段階の時期を意味します。認知症ではないものの、いくつかの認知機能の低下を認め、認知症発症リスクの高まった時期とみなされます。

先ほども説明した通り、本邦では認知症患者数と同等数の軽度認知障害(MCI)と考えられる高齢者が控えております。

したがって、現時点での認知症予防対策としては、MCI と考えられる高齢者に対し、発症遅延あるいは発症抑制を目的として、科学的根拠に基づいて発症リスクを軽減あるいは削除するような適切な取り組みを講じることが最も重要な戦略であると考えられます。

本邦で最も使用頻度が高い軽度認知障害(MCI)の基準は、1996 年に Pe-tersen らが定義した内容になります。こちらについては、本来記憶障害に重点を置いた診断基準となっております。

  • 主観的なもの忘れの訴え
  • 年齢に比し記憶力が低下(記憶検査で平均値の 1.5 SD 以下)
  • 日常生活動作は正常
  • 全般的な認知機能は正常
  • 認知症は認めない

認知症の種類、4大認知症とは

認知症や認知症症状をきたす疾患は数多くあります。疾患ごとに細かく考えると以下のようなカテゴリーに分類されることになります。

  1. 中枢神経変性疾患
  2. 血管性認知症(VaD)
  3. 脳腫瘍
  4. 特発性正常圧水頭症
  5. 頭部外傷
  6. 無酸素性脳症、低酸素性脳症
  7. 神経感染症
  8. 臓器不全および関連疾患
  9. 内分泌機能異常症および関連疾患
  10. 欠乏性疾患、中毒性疾患、代謝性疾患
  11. 脱髄疾患などの自己免疫性疾患
  12. 蓄積病
  13. その他

このように多くの原因疾患がありますが、中でも代表的疾患として、記憶障害が主症状のアルツハイマー型認知症、脳血管障害による血管性認知症(VaD)、パーキンソン徴候や幻視を伴うレビー小体型認知症、自発性の低下や前頭葉徴候を認める前頭側頭型認知症が挙げられます。

認知症疾患の割合では、アルツハイマー型認知症が最も多く、認知症患者全体の約 70 %を占めます。次いで、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の頻度が多く、この 4 種類の原因疾患についてを 4 大認知症と呼ぶことがあります。

認知症高齢者を支援していくためには、認知症の症状を適宜評価し、支援方法や環境の調整していくことが重要になります。認知症重症度評価の 1 つとして臨床的認知症尺度(CDR)がございますが、このテーマについては他の記事で詳しくまとめております。こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【臨床的認知症尺度(CDR)についての記事はこちらから

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、潜在性に発症し緩徐に進行します。アルツハイマー型認知症の主な症状は、近時記憶障害及びエピソード記憶障害による物忘れ症状になります。

臨床経過は、70 歳頃から病的ではない物忘れが主症状の軽度認知障害(MCI)が出現し、75 歳頃 から認知症の初期症状として、記銘力障害や時間の失見当識を認めます。

そのため、アルツハイマー型認知症初期の MMSE、HDS-R による認知機能検査では、時間の見当識と単語の遅延再生での減点の頻度が高くなります。

その後、アルツハイマー型認知症中期に進行し、中核症状として失行・失認や BPSD である妄想等が出現するようになり、悪化傾向となることが予想されます。

アルツハイマー型認知症は社会性が保たれていることが多く、集団での会話などでも愛想がよく、もっともらしい相槌を打ったり、その場に合わせた態度をとることができたりします。このような部分も特徴的な反応と考えられております。

血管性認知症(VaD)

脳血管障害の後遺症で認知症に至った状態を、血管性認知症と呼びます。血管性認知症の病型は、以下の 3 つに分類されます。

  • 大脳皮質及び皮質下領域の大・中梗塞の多発が原因の多発梗塞型
  • 視床・海馬・角回等の単発梗塞による限局梗塞型
  • 大脳皮質下領域の多発小梗塞およびビンスワンガー病による小血管障害型

血管性認知症は段階的に進行していくことが有名な所見となり、大脳皮質及び皮質下領域の大・中梗塞の多発が原因の多発梗塞型などでは、この傾向が認められます。

注意点として、多発性ラクナ梗塞やビンスワンガー病といった深部白質の虚血性病変によるものについては、脳卒中発作との関連がはっきりせずに緩徐に進行する傾向があります。

血管性認知症は、血管障害による病変の数・大きさ・場所によって症状は多彩となりますが、血管障害の病巣による運動麻痺等の局所神経症状や歩行障害、アパシーと実行機能障害が多くの症例で認められると考えられております。

アパシーについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【意欲の評価方法についての記事はこちらから

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多く、認知症の 10 %以上を占めていると考えられます。

発症と進行は緩徐であり、認知症状はアルツハイマー型認知症に似ております。異なる点は、記憶障害が比較的軽度で、視空間認知や構成障害は早期から出現する傾向があります。

レビー小体型認知症でみられる症状のうち、注意機能をはじめとした認知機能が激しく変動する場合があることが特徴の 1 つになります。状態のよいときには認知症なのか全く分からない程度でありますが、悪いときには認知機能の検査にならない程、状態に波があります。

その他には、鮮明で生々しい幻視(人・動物・虫など)や錯視が出現することや、パーキンソン症候群が、認知障害の出現する前からみられることもあれば、認知障害が目立ってきた後に出現することもあります。

なお、嗅覚障害・便秘や起立性低血圧等の自律神経症状・レム睡眠行動異常症・うつ病等がこれらの中核的症状に先行することもしばしばあります。また誤認妄想や嫉妬妄想もみられることがあります。

前頭側頭型認知症(FTD)

前頭側頭型認知症(FTD)とは、従来の Pick 病という臨床診断に該当するものであり、2000 年以降広く浸透した概念になります。前頭側頭型認知症(FTD)は人格変化や行動障害、言語障害を主徴とし、大脳の前方部(前頭葉、前部側頭葉)に病変の主座を有します。

前頭側頭型認知症(FTD)は、変性性認知症を包括した疾患概念であり、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)、意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語(PNFA)という臨床症候群に区分されています。

前頭葉に病変の主座がある行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)では人格変化(脱抑制)、常同行動(時刻表的生活、滞続言語、反復行動)や食行動異常(過食、嗜好の変化)等の行動異常が前景に立ちます。

そのため、接遇や社会通念が欠如し、他の人からどう思われるかを気にしなくなり、自己本位的な行動や万引きや盗食などの反社会的行動を行ってしまうことがあります。診断がついた場合は、直ちに生活の対策(車の運転の中止等)が必要になります。

側頭葉に病変の主座がある意味性認知症(SD)は、比較的早期から行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)と同様の行動障害が出現するとともに、単語の呼称障害と理解障害を中心とする語義失語が出現します。

例えば、鉛筆を使用して名前を書いてくださいとお願いしたときに「えんぴつって何ですか?」、あるいは語頭音ヒントを伸ばしていったときに「えんぴっていうのですか?」と語頭部をあたかも語とみなして反問する症状が認められます。

このような失語(意味記憶障害)を本人や家族が物忘れと捉えて受診することも多いため、鑑別が必要になります。

2015 年に前頭側頭型認知症(FTD)のうち、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)と意味性認知症(SD)が指定難病に認定されております。65 歳以下の場合には公的支援が受けられることもあり、認知症の正確な診断がますます求められております。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「認知症の種類」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が認知症についての理解力向上をもたらし、臨床における認知症高齢者の支援に少しでもお力添えになれば幸いです!

認知症診療において長谷川式簡易知能評価スケールは欠かすことができない評価指標となります。長谷川式簡易知能評価スケールについては、他の記事で詳しくまとめています!《【認知症簡易テスト】長谷川式簡易知能評価スケール:HDS-Rとは》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

参考文献

  1. 池田学.認知症.高次脳機能研究.第29巻,第2号,p30-36.
  2. 遠藤英俊.認知症の薬物療法の実際とその効果.日医雑誌.2012年, 第141巻,第3号,p555-559.
  3. 太田康之.内科医による認知症診療.日本内科学会雑誌.111巻,3号,p478-483.
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