基本チェックリスト(KCL)25項目の判定基準と使い方

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基本チェックリスト(KCL)とは?

理学療法士のキャリアガイド|導入~評価の進め方を見る

基本チェックリスト( KCL )は、高齢者の生活機能低下を早期に拾い上げるための 25 項目の質問紙です。一次スクリーニングとして幅広い領域( IADL ・身体機能・栄養・口腔・社会性・認知・気分)を網羅し、地域支援や介護予防サービスにつなげる入口として活用されます。本記事では、介護予防での「基本チェックリスト 判定」の考え方を整理し、判定基準・判定方法・点数の見方を実務目線で解説します。

自治体により運用細則やカットオフの表現が異なる場合があります。本記事のしきい値は一般的な基準を初期値としており、最終判断は各自治体の手引きや基本チェックリストマニュアルに合わせてください。地域包括支援センターやケアマネジャーとの連携を前提に、チーム全体での活用場面を整理しておくと導入がスムーズです。

実施手順(だれが・いつ・どうやって)

対象者には「当てはまるものに✔をつけるだけ」と伝え、自己記入+面接補助のハイブリッド方式がおすすめです。所要時間は 5~10 分。本人の理解が難しい場合は家族同席で代筆可ですが、普段の様子を優先して聴取します。再評価は 3~6 か月ごと、介入開始・退院・転居などライフイベント時も実施すると変化を捉えやすくなります。

面接のコツは「最近 1~2 か月の具体例」を引き出すこと(例:外出頻度、むせの場面、食事量の変化)。チェック後は分野別の弱点に応じてフレイル予防(運動・栄養・口腔・社会参加)につなげます。KCL 単独では拾い切れない部分は、他のフレイルスクリーニングや身体機能評価を組み合わせて補完すると全体像が見えやすくなります。

現場の詰まりどころ(ありがちなつまずき)

よくあるつまずきは、基本チェックリストの合計点だけを見て「 8 点以上なら要支援予備群」と機械的に判断してしまうことです。実際には、どの分野で点数が入ったのか(身体機能か、栄養か、口腔か、気分か)を読み解き、優先すべき支援テーマを絞ることが重要です。特に、身体機能と栄養・口腔の両方で点数が高いケースでは、転倒と低栄養が同時に進んでいることが多く、早めの多職種連携が求められます。

もう 1 つの詰まりどころは、「一度きりで終わる」運用です。介護予防 基本チェックリスト 判定は、経過を見るための連続したデータとして活用してこそ価値があります。介入前後での点数や分野別プロファイルの変化を追い、調子を崩したタイミングで振り返ることで、「何が効いたのか/どこが抜けていたのか」をチームで共有しやすくなります。

判定基準と点数の目安(分野別カットオフ)

基本チェックリストの判定方法は、各項目の「はい/いいえ」による点数化と、分野別カットオフ・総合点を確認する 2 段階で考えると整理しやすくなります。下表は「介護予防 基本チェックリスト 判定」の一般的な目安です。自治体手引きに合わせて調整してください(記事下の配布ツールはしきい値を変更可能です)。

基本チェックリストの分野別カットオフ(成人・地域在住高齢者の一次スクリーニング目安)
分野 項目数 該当の目安 次の一手(例)
IADL(日常生活の手段的動作) 5 3 以上 生活支援の導入、家事タスク練習、送迎・買物支援の検討
身体機能 5 3 以上 転倒リスク精査( SPPB 等)、下肢筋力・バランス訓練
栄養 2 2 以上 体重変化の把握、 MST 等で追加評価、食支援
口腔機能 3 2 以上 嚥下スクリーニング( EAT-10 など)、口腔ケア・摂食訓練
社会性(閉じこもり) 2 1 以上 サロン等への参加、外出習慣づくり、見守り導線
認知機能 3 1 以上 記憶支援、服薬管理支援、必要時は専門受診へ
気分(うつ傾向) 5 2 以上 抑うつスクリーニング( SRQ-D 等)と生活リズム調整
総合 25 8 以上 包括支援センターと連携し、総合的介入を検討

記録用ツール(基本チェックリスト ダウンロード)

以下のツールは当サイトで原典を参考に再編集したものです。出所を明記したうえで、評価・説明・教育目的にお使いいただけます。

印刷用 HTML はブラウザの「🖨 印刷する」から PDF 化も可能です。複数回の再評価を同じ様式で記録しておくと、状態変化の把握に役立ちます。

FAQ(よくある質問)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

KCL の結果は「診断」ですか?
いいえ。KCL は一次スクリーニングであり、生活機能低下の気づきと支援の入り口です。結果のみで診断やサービス種別を決めず、必要に応じて詳細評価( SPPB ・ J-CHS など)や専門職による評価につなげます。
自治体ごとに判定条件が違うのですか?
表現や運用は自治体手引きで差があります。本記事と配布ツールのしきい値は汎用の初期値です。各自治体の基準を最優先し、必要に応じてしきい値を調整してください。
基本チェックリストは廃止されたのですか?
「基本 チェック リスト 廃止」という言葉が出てくることがありますが、実際には介護予防事業の見直しや新しいフレイル対策の枠組みの中で、名称や位置づけが整理されただけというケースが多いです。自治体によっては別のフレイルチェックシート(例:フレイルチェック 15 項目)に移行しているところもあるため、最新の地域ケア会議資料や手引きを確認するのがおすすめです。
フレイルチェック 15 項目との違いは?
フレイルチェック 15 項目は、よりコンパクトにフレイルの有無を把握するための質問紙です。一方、基本チェックリスト( KCL )は 25 項目で、IADL や口腔、気分など生活機能全体を網羅的にみる構成になっています。15 項目版でスクリーニング → KCL や詳細評価で深掘りという使い分けも可能です。
再評価のタイミングは?
3~6 か月ごと、もしくは介入前後・退院時・転居時・重大な健康イベント発生時を目安に再実施すると、変化が追いやすくなります。点数が同じでも、どの分野で点が入っているかが変化していないかを確認することがポイントです。

おわりに

KCL は「スクリーニング → 生活機能の整理 → 多職種カンファレンス → 支援内容の見直し」という流れの中で生きてくるツールです。合計点やフラグだけにとらわれず、「この人の日常生活のどこで困りごとが起きているのか」をチームで共有しながら、運動・栄養・口腔・社会参加を組み合わせた支援を組み立てていきましょう。

あわせて、職場選びや働き方の見直しも含めて自分のキャリアを整理しておくと、地域ケアや介護予防に関わるときの視野が広がります。転職や職場相談の際に使えるチェックリストと面談準備シートは、マイナビコメディカル活用ガイドでまとめていますので、必要に応じて活用してみてください。

参考文献

  • 厚生労働省. 介護予防マニュアル(改訂版). 介護予防・日常生活支援総合事業関連資料.
  • 厚生労働省. 地域支援事業の実施について(通知・事務連絡等). 介護予防・フレイル対策に関する各種通知.
  • Satake S, Arai H. Chapter 1 Frailty: Definition, Epidemiology, and Pathophysiology. Geriatr Gerontol Int. 2020;20(S1):7–13.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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