【高齢者に多い誤嚥性肺炎】誤嚥性肺炎の原因と3つの予防方法を解説

病態理解を深める
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「誤嚥性肺炎の原因」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

      

誤嚥性肺炎は恐ろしい病気の 1 つになります。近年、世界中に脅威をもたらした新型コロナウイルスと病態こそ異なりますが、大枠で捉えれば肺炎という疾患であることは同じになります。

   

そんな怖い肺炎ですが、高齢者が罹患する誤嚥性肺炎の生命予後は良好とはいえず、発生させないことが重要となります。

そのためには誤嚥性肺炎の病態を良く理解し、発生に早く気付き治療を開始すること、発生リスクが高い対象者に予防策を講じることがポイントになります。

 

誤嚥性肺炎については超高齢社会の日本だからこそ、今後長期間医療や介護を苦しめることになると思います。極めて重要な課題ですが、誤嚥性肺炎について、いろいろとわからないこともあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

       

こちらの記事で誤嚥性肺炎についての理解を深め、高齢者の誤嚥性肺炎予防の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

高齢者の肺炎について

本邦における超高齢化社会の進展により肺炎による死亡者数が年々増加しています。2016年における肺炎死亡者数は 119,300 人に達し、悪性新生物の 372,986 人、心疾患の 198,006 人に次いで死亡原因の第 3 位を占めています。また、死亡総数の 1,307,748 人に占める割合も 9.4 %と増加傾向を示しております。

このような高齢者肺炎の増加を背景として、2011 年に日本呼吸器学会は、医療・介護関連肺炎(NHCAP)という新しい肺炎の概念を提唱しています。

医療・介護関連肺炎(NHCAP)は、市中肺炎と院内肺炎の中間に位置する肺炎として提言されており、具体的には以下の項目に該当する人に発症した肺炎についてを意味します。

  1. 長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
  2. 90 日以内に病院を退院した
  3. 介護を必要とする高齢者および身障者
  4. 通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬等による治療など)を受けている

※ 1 については精神病床も含める

※ 3 の介護の基準については、限られた自分の身の回りのことしかできず、日中の 50 %以上をベッドか椅子で過ごすことを目安とする

つまり、長期療養型施設に入所中や要介護(支援)認定を受けている高齢者が主な対象者となります。高齢者肺炎の多くはこの範疇に入るものと考えられます。

市中肺炎(CAP)と院内肺炎(HAP)

医療・介護関連肺炎(NHCAP)は、市中肺炎と院内肺炎の中間に位置する肺炎として提言されています。市中肺炎(CAP)と院内肺炎(HAP)についても説明させていただきます。

肺炎には「誰に発生する肺炎か」「どういう特徴の肺炎か」によって、いくつかの分類がありますが、「誰に発生する肺炎か」については市中肺炎と院内肺炎、そして先ほど説明した医療・介護関連肺炎(NHCAP)が挙げられます。

市中肺炎とは普通の生活をしている(医療施設などに接触する機会が限られている)健康な人に発生する肺炎のことをいいます。そして市中肺炎は、原因となる病原微生物によって、細菌性肺炎と非定型肺炎に分類されます。

原因となる病原微生物の多くは細菌であり、特に頻度が高いのが肺炎球菌、インフルエンザ桿菌となり、これらが原因の場合は細菌性肺炎となります。マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどの細菌ではない病原微生物が原因となる場合には非定型肺炎となります。

次に院内肺炎とは、病気で入院している免疫力の低下している患者に発生する肺炎になります。入院してから院内に存在する病原菌に感染して肺炎を発症します。

病院内は消毒などにより衛生管理が施されていますし、外の生活と異なり接触する人も限られているため、市中肺炎の原因となるような毒性の高い病原微生物には基本的に接触することはないと考えられます。

しかし、入院していても自分自身の口腔内の菌は排除しきれないことや、免疫力が低下している人が多いため、自分の口腔内にいる細菌や健常時には問題にもならないような毒性の低い菌で肺炎を起こすことがあります。このように、毒性の低い菌で感染症を起こすことを日和見感染症とも言います。

成人肺炎診療ガイドライン2017

上記は肺炎診療ガイドライン 2017 による市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)の診療の流れになります。

高齢者肺炎の原因 → 結論は誤嚥

高齢者の肺炎は、若年者が患う市中肺炎(CAP)と比べて以下のような特徴を認めることが多いと考えられています。

  • 発熱は軽微で全く認めないこともある
  • 初発症状として食思不振や全身倦怠等の非特異的症状がみられることが多い
  • 精神症状が前面に出ることが多い
  • 普段より反応が鈍い
  • 訴えが少ないことから、周囲も気付かず重症化してから初めて医療機関を受診することになる
  • 脱水や電解質異常を起こしやすい


高齢者肺炎の原因の多くは誤嚥となります。誤嚥には、明らかなむせの認められる顕性誤嚥とむせの認められない不顕性誤嚥に分類されますが、高齢者の肺炎では、この不顕性誤嚥が問題になります。

  • 顕性誤嚥:気管内に飲食物が侵入することで、むせたり咳込んだりする反応を示す。私たちが食事中にむせ込んで気管に入ったものを咳反射で出そうとするときの誤嚥のこと。
  • 不顕性誤嚥:気管内に水分や食べ物が侵入しても咳やむせがない誤嚥を示す。飲食物は当然のこと、口腔内の唾液や痰などの分泌物、睡眠中にも誰も気付かないうちに誤嚥している。

誤嚥を起こす危険因子は、加齢、感染防御能低下、脳血管障害や慢性呼吸器疾患等の基礎疾患、中枢神経系の変性疾患、パーキンソン病、認知症、食道疾患、脱水・低栄養状態、口腔内不衛生、鎮静剤・睡眠剤などの薬物投与など多種類の内服薬による嚥下機能低下など多くが考えられます。

そして、高齢者はこれらの因子を複数有していることも多くあります。

厚生労働省による在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおいても高齢者肺炎の 7 割以上が誤嚥が原因と報告されています。

医療・介護関連肺炎(NHCAP)の定義でもある長期療養型施設に入所中や要介護(支援)認定を受けている高齢者の肺炎については誤嚥が原因だと、まずは疑うべきだと考えられます。

誤嚥については、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【高齢者むせ込みの対処方法と原因についての記事はこちらから

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎は誤嚥あるいは嚥下障害の存在が確認された患者に発症した肺炎と定義されます。

したがって、「誰に発生する肺炎か」という市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)とは本質的に定義が異なり、肺炎診療ガイドライン 2017 の臨床的予測は、誤嚥性肺炎では当てはまらないことがあります。

誤嚥性肺炎の 1 つの発生機序として、夜間の不顕性誤嚥が挙げられます。この不顕性誤嚥は日常的に起こり続けるものであり、予防は極めて困難であると考えられます。

また、一度の不顕性誤嚥がすぐに肺炎になるわけではなく、繰り返し生ずる不顕性誤嚥が気道で感染症として成立したときに誤嚥性肺炎となります。

誤嚥性肺炎のリスク管理

誤嚥性肺炎は 40 歳代までは発症数は 0 に近く、50 歳代から発症数が増えはじめ、その後歳を取るごとに発症リスクが高くなっていきます。

75 歳以上では若年者の約 10 倍罹患するといわれており、誤嚥性肺炎による死亡者は、2030 年には年間で男性 77,000 人、女性 52,000 人程度まで増加するのではないかと予測されています。

誤嚥性肺炎による死者を減少させるための手段として、「口腔ケア」や「摂食嚥下訓練」の重要性が示されております。そのため、質の高い口腔ケアや摂食嚥下訓練を実施していくことで、誤嚥性肺炎による死亡者数を減少させることができると考えられます。

誤嚥に関するリスクの分析は重要になります。誤嚥性肺炎については、「誤嚥するリスク」と「誤嚥することで肺炎を発症する」リスクは別に考える必要があります。

誤嚥のリスク因子と誤嚥による肺炎のリスク因子

嚥下機能の低下や胃食道機能不全といった病態で、むせや口腔内分泌物貯留、逆流感や胸焼けといった症状を認める対象者については、誤嚥のリスクが高いと言えます。

誤嚥のリスクが高いということは、言い換えると誤嚥性肺炎をきたすリスクも高く、繰り返し発症する可能性も高いといえます。誤嚥による肺炎のリスク因子に該当する患者は肺炎のリスク患者といえます。

繰り返す誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎を予防するためには以下の 3 つのアプローチが必要になります。

  1. 抗菌薬による肺炎自体のコントロール
  2. 摂食嚥下訓練
  3. 口腔ケア

反復する誤嚥性肺炎の治療と予防のためには、抗菌薬による肺炎自体のコントロールと誤嚥を生ずる原因となっている嚥下障害に対するアプローチの両方が必要になります。

感染症として、適切な抗菌薬を選択することは誤嚥性肺炎の治療に必須となりますが、これだけでは誤嚥性肺炎の予防に繋がらないことが予想されます。

そのため、嚥下障害に対し誤嚥自体を減らすアプローチ(摂食嚥下訓練)と誤嚥が肺炎という感染症を発症する経路を予防するアプ ローチ(口腔ケア)が必要になります。

摂食嚥下訓練

摂食嚥下機能は日常で使わないと機能が低下していきます。

臨床において、何らかの原因があり経口摂取が行えないために、禁食中(点滴管理)の患者、経鼻経管栄養管理となっている患者は数多くおります。

短期的には必要となるこれらの管理方法ですが、長期的な管理となり、食べる機能を長い間使用しないことになると、この状況は不顕性誤嚥の悪化因子に繋がります。

摂食嚥下機能の維持や向上が、直接的に肺炎予防に繋がるのかと言われると、そういう訳ではありませんが、摂食嚥下機能を低下させることにメリットは 1 つもありません。

そのため、食事を行える状況でなかったとしても、嚥下リハビリテーションとして嚥下の間接訓練や直接訓練を行うことが重要になります。

例え、言語聴覚士などの専門職がいなかったとしても、日々の生活の中で嚥下を意識し、機能訓練に繋げることはできます。

特に、発声の筋肉群と嚥下の筋肉群については、多くがオーバーラップしているため、声をだすこと、会話をすること、歌を歌うことは摂食嚥下訓練となり、誤嚥性肺炎の予防に結びつきます。

摂食嚥下のスクリーニング検査については、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下障害のスクリーニング検査についての記事はこちらから

口腔ケア

口腔ケアを適切に定期的に実施したとしても、口腔ケアによって嚥下機能が劇的に改善することは期待できないため、誤嚥自体は防げないと考えられます。

しかし、誤嚥しても肺炎に至るのを予防するために、やはり口腔ケアが重要になります。口腔ケアによって誤嚥量を激減することはできなくても、誤嚥内容物の細菌量を減少させることができるため、誤嚥内容物の質を改善することが可能になります。

口腔ケアの実施により、以下のような観点から誤嚥性肺炎の予防に繋がることが期待されます。

  • 不顕性誤嚥対策の意義
  • 肺炎予防策の意義
  • 誤嚥の質(誤嚥内容細菌量)の改善効果
  • 唾液分泌の改善効果
  • 歯周の細菌叢の改善効果

胃瘻増設で誤嚥性肺炎は減少しない

経皮内視鏡的胃瘻増設術(PEG)留置は、近年急速に増加しています。

経皮内視鏡的胃瘻増設術(PEG)は安全性が高く、技術も向上しており、栄養補給方法の優れた選択肢の 1 つとなりますが、肺炎を予防したエビデンスについては不十分と考えられています。

その理由としては、経口摂取を中止とし、栄養補給方法を経皮内視鏡的胃瘻増設術(PEG)管理にしたとしても、誤嚥性肺炎の原因となる不顕性誤嚥の頻度は減少しないということが挙げられています。

誤嚥性肺炎で急変し、末期症状となる可能性も

誤嚥性肺炎の主な症状としては発熱・咳・黄色い痰など、いわゆる風邪のような症状となります。

健常人、特に若い人の場合には、免疫力のおかげでそもそも肺炎に至らなかったり、数日間で症状が軽快したりしますが、高齢者だと体力・免疫力の低下から、全身状態が急変して命の危機に晒されることがあります。誤嚥性肺炎で急変した場合の対応策の一例を以下にあげます。

救急車の呼び出し 急変が起きた場合は、すぐに119番に通報し救急車を呼びます
人工呼吸や酸素投与 呼吸が困難な場合は、人工呼吸や酸素投与を行います
抗生物質の投与 誤嚥性肺炎の原因菌によっては、抗生物質の投与が必要となります
症状に応じた治療 症状や病態に応じて、適切な治療を行います
重症の場合には、集中治療室での治療が必要となることがあります

誤嚥性肺炎による急変後の対応が追いつかない場合には、発熱・咳・黄色い痰などの初発症状に留まらず、更に重篤な症状に移行します。症状の一例として、呼吸困難、酸素不足、意識障害、低血圧、心拍数の増加、体温の上昇などを認めることになります。酸素不足から呼吸困難へ移行すると意識レベルが低下し、次第に血圧が下降して最悪の場合、死に至る可能性があります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「誤嚥性肺炎の原因」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が誤嚥性肺炎についての理解力向上をもたらし、高齢者の誤嚥性肺炎予防に少しでもお力添えになれば幸いです!

参考文献

  1. 大類孝,海老原孝枝,荒井啓行.高齢者肺炎・誤嚥性肺炎.日本内科学会雑誌.第99巻,第11号,p88-93.
  2. 野原幹司.嚥下からみた誤嚥性肺炎の予防と対策.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2019年,第28巻,第2号,p179-185.
  3. 石田直.高齢者肺炎の診断と治療.日本内科学会雑誌.第102巻,第11号,平成25年11月10日,p2990-2997.
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