【CKD(慢性腎臓病)患者に対する運動の効果】腎臓リハについて

内部障害
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

こちらでは「CKD患者に対する運動療法の効果」をキーワードに記事を書いていきます!

   

腎臓病といえば、かつて安静にすることが治療の基本でありました。しかし、CKD患者においても、身体活動の低下は心血管疾患による死亡のリスクであることや、軽い運動がCKDを悪化させないことが明らかになり、近年ではCKD患者にも運動療法が適用されるようになってきています。

   

運動療法は腎臓リハビリテーションのの中核として考えられ、最近ではCKD患者における心大血管疾患発生予防効果や透析導入時期遅延効果の役割も期待されております。

腎臓リハビリテーションに対する考え方については、ここ近年で大きく見直されてきている項目になります。そのため最新情報を取り入れつつ、確かなリハビリテーションを提供していくことが重要です。

   

こちらの記事で腎臓リハビリテーションにおける理解を深め、臨床におけるCKD患者に対するリハビリテーションの一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

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CKD患者の運動可否について

かつて慢性腎臓病(CKD)患者の身体活動は、運動により腎血流量や糸球体濾過量(GFR)の低下が生じることから、慢性腎臓病(CKD)患者は「安静にさせる」ことが治療の常識でありました。

その後、多くの基礎的・臨床的なエビデンスが構築および超高齢社会の到来とも重なり最近では、慢性腎臓病(CKD)の治療は「運動制限から運動療法へ」というコペルニクス的転換を果たしました。

2009年1月には、身体活動の低下は心血管疾患による死亡リスクになるとして、CKD 患者への運動制限の可否を見直されています。

2011年には、日本腎臓リハビリテーション学会が発足し、腎臓リハビリテーションの実施にあたっては多職種との連携体制をとり、運動療法に加えてさまざまな生活指導を実践していくことの重要性が示されています。

CKD患者に生じる7つの機能低下

CKD 発症あるいは腎障害進行のリスクファクターは、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高齢などであり、超高齢社会の本邦では今後更なる CKD 患者数の増加が懸念されています。

CKD の進行に伴い、心血管疾患の発症率は加速的に高くなることが報告されています。実際に CKD 患者の死因の第1位は心不全となっております。

本邦の慢性透析患者数は、2011年に30万人を突破して以降増加し続けています。2021年で透析を受けている方の数は34万9,700人と過去最多になっており、国民358.9人に1人が透析を受けていることになります。

本邦の身体障害者の中では内部障害者数の増加が著しくなっていますが、その中でも透析患者を主 体とする腎臓機能障害者数は心臓機能障害者数に次いで2番目に多くなっています。また、高血圧や糖尿病治療の進歩や超高齢社会などを反映して、透析人口全体や新規透析導入患者は年々高齢化しております。

CKD患者の抱える問題を項目ごとに整理すると以下の7項目に分類することができます。

  1. 循環器系:死因の第1位は心不全、糖尿病性腎症・高血圧といった生活習慣病を基礎疾患に有する患者の比率が増加、高齢化
  2. 腎性貧血:エリスロポエチンの合成能の低下
  3. 代謝・免疫系:インスリン感受性の低下、筋肉 蛋白の異化亢進、栄養分の透析液への流出
  4. 筋肉 ・骨格系:筋力低下(廃用性筋力低下、尿毒症性ミオパチー、尿毒症性ニューロパチー)
  5. 骨・関節系:腎臓 性骨異栄養症、透析アミロイドーシス
  6. 心理・精神系:心理的ストレス、QOL低下
  7. 運動耐容能の低下

透析患者では、呼吸・循環器系、血液・消化器 系、骨・関節系、脳神経系などの様々な合併症や重複障害を呈しやすく、腎性貧血,protein energy wasting(PEW)、骨格筋減少・筋力低下、骨格筋機能異常、運動耐容能低下、易疲労、活動量減少、QOL低下などが認められます。

透析患者の運動耐容能は心不全患者や慢性閉塞性肺疾患患者のものと同レベルまで低下すると報告されています。

運動耐容能の低い透析患者や運動習慣のない透析患者の生命予後は悪く、透析患者にとっての運動不足は、低栄養や左室肥大と同程度の生命予後短縮の要因となっています。

透析患者の心血管疾患に対するK/DOQI 臨床ガイドラインには「医療関係者は透析患者の運動機能評価と運動の奨励を積極的に行う必要がある」と明記されています。

腎臓リハビリテーションの目的

腎臓リハビリテーションは、腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整・生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを実施します。長期にわたる包括的なプログラムとなり、まさにCKD患者のトータルケアを目的としています。

腎臓リハビリテーションの中核である運動療法は、透析患者に対して運動耐容能改善、protein- energy wasting(PEW)改善、蛋白質異化抑制、QOL 改善などを始めとして、以下の12の効果をもたらします。

  1. 最大酸素摂取量の増加
  2. 左心室収縮能の亢進(安静時・運動時))
  3. 心臓副交感神経系の活性化
  4. 心臓交感神経過緊張の改善
  5. PEW(protein-energy wasting)の改善
  6. 貧血の改善
  7. 睡眠の質の改善
  8. 不安・抑うつ、QOLの改善
  9. ADL の改善
  10. 前腕静脈サイズの増加
  11. 透析効率の改善
  12. 死亡率の低下

腎臓の血液循環量について

心臓から大動脈には1分間に約5Lの血液が送り出されます。そして安静時の腎臓には心拍出量の 1/5(1L)の血液供給を受けており、組織単位体重あたりの血液灌流量は他のどの臓器よりも多くなります。

これだけ多くの血液供給を受けているのは、腎臓が全身の臓器で作られた老廃物を尿に捨て、きれいになった血液を心臓に戻すという大切な役割を担っている為になります。

しかし運動時には、筋肉・心臓・肺への血液分配率が高まるため、腎血流量(RBF)は安静時の半分程度に減少することが報告されています。このことが、腎臓病患者(CKD)は安静にさせるべきと言われていた最大の理由になります。

実際、腎血流量(RBF)は運動により顕著な影響を受け、運動強度や心拍数と逆相関し、激しい運動時には RBFは 50〜75%も低下することがわかっています。

腎臓病患者(CKD)が強度の高い運動を行うと腎機能障害や腎病変が増悪する危険があります。また、腎機能障害者は心臓機能障害など他の障害を合併していることが多いため、運動強度は慢性心不全に対する運動療法に準じて行うことが推奨されています。

CKD患者において、嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)レベルの運動強度では、GFRは不変であるのに対し、ATの1.3倍の運動強度を行った際には腎組織重症度が高いほどGFRは低下すると報告されています。つまり高強度の運動は避けて、特にCKDの重症度が高い患者には過負荷のリスクに注意しなければなりません。

運動療法の標準的なメニューは週3〜5回、1回20〜60分の歩行やエルゴメータ運動が推奨されます。負荷量は中等度、あるいはボルグ指数12〜13(ややきつい)を指標として処方します。さらにレジスタンス運動や柔軟体操を主運動に追加して実施することが望ましいとされています。

腎臓病患者(CKD)にとって運動は重要

腎臓病患者(CKD)は運動療法により腎機能の改善に繋がらなかったとしても運動を継続し続けるべきと言えます。

その背景として、CKD の進行に伴って心血管疾患 の発症率が加速的に高まり、末期腎不全に至るよ りも心血管系の合併症で死亡する患者が多い事実があります。

腎臓病患者(CKD)はフレイルになる頻度が高いと考えられています。フレイルの発症には、栄養摂取不足に加え尿毒症、全身性の炎症、糖尿病や心血管病などの併存疾患、代謝性アシドーシスやインスリン抵抗性などの代謝・内分泌的異常も関与しております。

腎臓病患者(CKD)の生命予後は身体機能に関係します。具体的には、歩行速度が遅く、6分間歩行距離が短く、握力の弱い患者などでは死亡率が高くなることが報告されています。

透析患者でも同様 であり、運動をしない透析患者や運動耐容能の低い透析患者は生命予後が悪いと報告されています。

また、定期的な運動習慣のある透析患者は、非運動患者に比較して明らかに生命予後がよく、週あたりの運動回数 が多いほど生命予後が良くなります。施設単位で見てみても定期的な運動習慣をもつ透析患者の割合が多い施設ほど、施設あたりの患者死亡率が低いことが報告されています。

近年、運動による腎保護作用ばかりが注目されがちであり、運動によって腎機能が変わらない人は運動はやめてよいという風潮もあります。

運動で腎機能が悪くなるようであれば、運動強度や運動様式などの見直しや中止が必要ではありますが、運動で腎機能がよくならなくても維持されている限りは、運動を続けるべきだと考えられます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「CKD患者に対する運動療法の効果」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が腎臓リハビリテーションにおける理解力向上をもたらし、臨床におけるCKD患者に対するリハビリテーションに少しでもお力添えになれば幸いです!

参考文献

  1. 上月正博.腎臓リハビリテーションの効果と実際―運動制限から運動療法へ―.Jpn J Rehabil Med.2018,55,p682-689.
  2. 伊藤修.腎臓リハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2017,54,p788-792.
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