ADL評価尺度の種類と使い分け|目的から選ぶ比較表

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ADL評価尺度は「何を知りたいか」で選びます

ADL評価尺度は、基本的な日常生活の介助量、在宅生活の自立度、活動頻度・社会参加、疾患特有の生活機能のどこを確認したいかで選びます。すべての症例に同じ尺度を使うのではなく、評価目的に合う尺度を選ぶことが重要です。

基本ADLの全体像を短時間で確認するならBI、介助量と認知面を詳しく共有するならFIM、在宅生活の手段的ADLを確認するならLawton IADL、生活期の活動頻度をみるならFAIが候補になります。

この記事では、理学療法士が臨床で使う代表的なADL評価尺度について、評価対象、特徴、所要時間、使いやすい場面を比較します。尺度を決めたあとは、合計点だけでなく、評価条件、介助が必要な項目、生活上のボトルネックまで記録することが大切です。

評価尺度全体から探したい方へ

運動機能、ADL、歩行、バランス、認知、嚥下など、領域別の評価尺度をまとめています。

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ADL評価尺度は3ステップで選びます

最初に評価する生活範囲を決め、次に必要な詳しさを確認し、最後に疾患特有の視点を追加します。尺度名から考え始めるのではなく、評価目的から逆算すると選択しやすくなります。

  1. 基本ADLの介助量を確認する:食事、更衣、排泄、移乗、移動などの介助量をみる場合は、BI、FIM、Katz Indexを検討します。
  2. 在宅生活や活動の広がりを確認する:買い物、服薬管理、金銭管理、家事などはLawton IADL、生活期の活動頻度はFAIを検討します。
  3. 疾患特有の生活機能を詳しく確認する:脊髄損傷、パーキンソン病、COPD、認知症、ALSなどでは、疾患特異的尺度の併用を検討します。
ADL評価尺度を基本ADL、在宅生活、活動頻度や疾患特有の生活機能の3ステップで選ぶ図
ADL評価尺度は、確認したい生活機能と評価目的に合わせて選びます。

基本ADLとIADLは優劣で選ぶものではありません。入院中の介助量を把握したあと、退院後の生活を考える段階でIADLや活動頻度の評価を追加するなど、病期と目的に応じて組み合わせます。

基本ADLとIADLの違い

基本ADLは身の回りの基本動作、IADLは地域や家庭で生活を続けるための複雑な活動を扱います。基本ADLが自立していても、買い物、服薬管理、金銭管理、交通手段の利用が難しい場合があります。

基本ADLとIADLの違い
比較項目 基本ADL IADL
主な対象 食事、更衣、整容、排泄、入浴、移乗、移動など 買い物、調理、家事、服薬管理、金銭管理、交通手段など
主な目的 身の回り動作の自立度と介助量を確認する 在宅生活を維持するための複雑な活動を確認する
代表的尺度 BI、FIM、Katz Index Lawton IADL、FAI
使いやすい場面 入院時、経過追跡、退院支援、介助量の共有 在宅復帰、独居支援、家族支援、生活期の評価

退院支援では、基本ADLの点数が高いことだけで在宅生活が可能とは判断できません。認知機能、住環境、介護力、服薬管理、家事、屋外移動なども合わせて確認します。

代表的なADL評価尺度の比較

短時間で基本ADLを把握するならBI、介助量を細かくみるならFIM、簡便な分類ならKatz Index、在宅生活ならLawton IADL、活動頻度ならFAIが候補です。

代表的なADL評価尺度の比較
尺度 主な評価対象 所要時間の目安 得点・分類 使いやすい場面
Barthel Index(BI) 基本ADLの自立度・介助量 5〜10分 0〜100点 短時間での全体把握、経過追跡、退院支援
FIM 運動項目と認知項目を含む介助量 15〜30分 18〜126点 回復期、詳細な経時比較、チーム共有
Katz Index 基本ADLの自立・依存 3〜5分 自立・依存の組み合わせによる分類など 高齢者の簡便な把握、スクリーニング
Lawton IADL 買い物、家事、服薬管理などのIADL 5〜10分 原著では対象者により評価項目数が異なる 在宅生活の自立度、退院支援、家族支援
FAI 家事、余暇、屋外活動などの実施頻度 約10分 0〜45点 生活期、活動性、社会参加の変化

所要時間は、観察、本人・家族への面接、情報収集の方法によって変わります。尺度を短時間で終えることよりも、採点根拠が追える記録を残すことを優先します。

Barthel Indexは基本ADLの全体像を短時間でみる

Barthel Index(BI)は、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段、更衣、排便管理、排尿管理の10項目を0〜100点で整理します。

短時間で基本ADLの全体像を把握しやすく、初回評価、入退院時の比較、退院支援、カンファレンスでの共有に使いやすい尺度です。一方で、認知機能やIADLの詳細は別に確認する必要があります。

Barthel Indexの10項目・点数の見方を詳しく確認する

FIMは介助量と認知面を詳しく共有する

FIMは、運動13項目と認知5項目の合計18項目を、各1〜7点で評価します。合計点は18〜126点で、介助者がどの程度関与しているかを細かく整理できます。

BIより項目数と採点段階が多く、認知項目も含むため、回復期の経時変化や多職種間での介助量共有に向いています。実施時は、補助具、時間、見守り、声かけ、身体介助の扱いを評価者間で統一することが重要です。

Katz Indexは基本ADLを簡便に分類する

Katz Indexは、入浴、更衣、トイレ、移乗、排泄管理、食事などの基本ADLについて、自立か依存かを簡潔に整理する尺度です。

短時間で状態を把握しやすい一方、部分介助や軽微な変化を細かく表現する用途には限界があります。採点結果だけでなく、どの工程に介助や見守りが必要かを補足します。

Lawton IADLは在宅生活に必要な複雑な活動をみる

Lawton IADLは、電話、買い物、食事の準備、家事、洗濯、交通手段、服薬管理、金銭管理などを扱います。基本ADLだけでは見えにくい在宅生活上の課題を整理できます。

原著では性別により評価対象とされた項目数が異なるため、使用する版、採点方法、満点を記録上で明確にします。また、本人が「できない」のか、入院環境などの理由で「行う機会がない」のかを区別することが重要です。

Lawton IADLを退院支援に活かす方法を確認する

FAIは生活期の活動頻度をみる

FAI(Frenchay Activities Index)は、家事、余暇、屋外活動、社会活動など15項目の実施頻度を評価します。合計は0〜45点で、点数が高いほど活動頻度が高いことを示します。

基本ADLが自立したあとに、実際の生活がどこまで広がっているかを追う場面に向いています。家庭内の役割、外出、余暇、社会参加の変化を捉えやすい尺度です。

疾患特異的なADL・生活機能尺度

疾患特異的尺度は、BIやFIMなどで生活機能の土台を確認したうえで、疾患特有の問題を詳しくみるために併用します。疾患名だけで機械的に追加するのではなく、評価結果を治療、環境調整、家族支援、補助具選定に活かせるかを考えます。

疾患特異的なADL・生活機能尺度の代表例
疾患・領域 代表的尺度 主な評価対象 使いやすい場面
脊髄損傷 SCIM セルフケア、呼吸・排泄管理、移乗、移動 脊髄損傷者の生活自立度を詳しく追跡する
パーキンソン病 MDS-UPDRS Part II 発話、食事、書字、更衣、歩行などの日常生活上の経験 生活機能と症状変動を経時的に確認する
COPD・呼吸器疾患 LCADL 日常生活中の呼吸困難と活動制限 呼吸リハ、在宅生活、活動制限の把握
認知症 DAD 日常活動の発動、計画、遂行 認知症による生活上の支障と家族支援を整理する
ALS ALSFRS-R 四肢、体幹、嚥下、呼吸を含む生活機能 病期の追跡、補助具、栄養・呼吸管理の検討

症例像と目的から第一選択を決める

最初に取る尺度は、評価結果を何の判断に使うかで決めます。必要に応じてIADLや疾患特異的尺度を追加しますが、尺度を増やしすぎて再評価できなくならないようにします。

症例像・評価目的と尺度選択の目安
症例像・評価目的 第一候補 追加を検討する尺度・評価
短時間で基本ADLの全体像を把握したい BI 認知機能、IADL、住環境
介助量を細かく共有したい FIM 動作観察、介助方法、環境条件
高齢者の基本ADLを簡便に把握したい Katz Index BI、認知機能、転倒リスク
在宅復帰後の生活自立度を確認したい Lawton IADL FAI、家族の介護力、住環境
生活期の活動頻度や社会参加を追いたい FAI 目標活動、外出範囲、役割
脊髄損傷の生活自立度を詳しくみたい SCIM BI、環境、介助方法
COPDによる活動制限を把握したい LCADL 6分間歩行、mMRC、Borg Scale
認知症による生活上の支障を整理したい DAD 認知機能、行動・心理症状、家族支援

ADL評価は点数と評価条件をセットで記録する

ADL評価では、点数だけでなく、その点数になった条件と介助内容を残します。同じ点数でも、補助具、環境、時間帯、疲労、見守り、声かけの有無によって生活上の意味は変わります。

  • 評価場面:病室、訓練室、トイレ、自宅など
  • 実施条件:補助具、装具、手すり、酸素、家具配置など
  • 介助内容:見守り、声かけ、準備、接触介助、身体介助など
  • 情報源:直接観察、本人聴取、家族聴取、スタッフ情報など
  • 変動要因:時間帯、疲労、疼痛、呼吸困難、薬効、認知状態など
  • 次の対応:練習、環境調整、家族指導、サービス調整、再評価予定など

記録例

病棟トイレで評価。四点杖と手すりを使用し、立位保持と下衣操作に接触介助を要した。午前より夕方に疲労が強く、方向転換時のふらつきが増加する。次回は自宅トイレの手すり位置を確認する。

「できるADL」と「しているADL」が異なる場合は、両方を分けて記録します。訓練室では可能でも病棟で実施していない場合、能力だけで自立と判断せず、環境、習慣、安全性、スタッフ間の介助方法まで確認します。

再評価では合計点と項目別変化を確認する

再評価では、合計点の増減だけでなく、どの項目が、どの条件で変化したかを確認します。合計点が同じでも、移乗が改善して排泄管理が悪化しているなど、支援内容が変わる場合があります。

  1. 評価条件をそろえる:場所、補助具、時間帯、声かけ、介助方法を可能な範囲で統一します。
  2. 項目別に比較する:改善した項目、悪化した項目、変化のない項目を確認します。
  3. 変化の理由を考える:身体機能、認知機能、疼痛、疲労、環境、介助方法の影響を整理します。
  4. 支援計画へつなげる:練習内容、環境調整、家族指導、サービス、再評価時期を決めます。

状態が変化しやすい急性期では、定期日だけでなく、治療内容、離床範囲、病棟での介助量が変わった時点で再評価を検討します。生活期では、目標期間、サービス更新、福祉用具変更、家族状況の変化などに合わせます。

採点方法や記録の詳細は、各尺度の専用記事で確認してください。本記事は尺度選択の入口として使用し、実際に採用する尺度が決まったら、原著や正式なマニュアルを含めて運用方法を確認します。

  • Barthel Index(BI):10項目・0〜100点で基本ADLの全体像を整理します。
  • Lawton IADL:在宅生活に必要なIADLを退院支援へつなげます。
  • FAI:生活期の活動頻度や社会参加の広がりを確認します。
  • SCIM:脊髄損傷者のセルフケア、排泄、移動を詳しく評価します。
  • MDS-UPDRS:パーキンソン病の日常生活上の経験や運動症状を確認します。
  • ALSFRS-R:ALSに伴う四肢、嚥下、呼吸を含む生活機能を追跡します。

ADL評価を点数づけだけで終わらせず、動作観察、介助、生活支援までつなげたい方に向けて、役割の異なる2冊を選びました。まずは実際の動作評価と介助方法を学び、さらに深く学ぶ段階でADL全体を体系的に整理する流れがおすすめです。

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ADL評価でよくある失敗

ADL評価は尺度を実施することが目的ではなく、生活上の課題と支援方法を共有するために行います。次のような使い方では、点数が臨床判断につながりにくくなります。

  • 合計点だけを記録する:介助が必要な項目と理由が分からず、介入方針を決めにくくなります。
  • 評価条件を残さない:補助具や環境が異なると、再評価で変化を正しく比較できません。
  • できるADLだけで判定する:実生活で実施しているか、安全に継続できるかを確認できません。
  • 基本ADLだけで退院可否を考える:服薬、家事、金銭、屋外移動などのIADLを見落とします。
  • 尺度を増やしすぎる:結果が重複し、再評価や記録の負担が大きくなります。
  • 点数の変化をそのまま機能改善と捉える:環境、介助方法、学習効果、症状変動の影響を検討する必要があります。

FAQ|ADL評価尺度でよくある質問

各項目をタップすると回答が開きます。

BIとFIMはどちらを選べばよいですか?

基本ADLの全体像を短時間で把握するならBI、介助量を細かく整理し、認知項目を含めて共有するならFIMが候補です。評価目的、病期、使用できる時間、施設内の運用方法から選びます。

基本ADLが自立していればIADL評価は不要ですか?

不要とは限りません。食事や移動が自立していても、買い物、服薬管理、金銭管理、調理、交通手段の利用が難しい場合があります。在宅復帰や独居生活を検討する場合はIADLを確認します。

Lawton IADLとFAIはどう使い分けますか?

買い物、家事、服薬管理など、在宅生活に必要な手段的ADLの自立度を確認する場合はLawton IADLが候補です。家事、余暇、外出、社会活動などの実施頻度を確認する場合はFAIが向いています。

疾患特異的尺度はいつ追加しますか?

BI、FIM、IADLなどで生活機能の土台を把握したあと、疾患特有の問題を詳しく確認し、治療や支援へつなげたい場合に追加します。脊髄損傷ではSCIM、COPDではLCADL、認知症ではDAD、ALSではALSFRS-Rなどが候補です。

ADL評価はどのくらいの頻度で再評価しますか?

一律の頻度ではなく、病期、状態変化、目標期間、施設内ルールに合わせます。介助量、活動範囲、治療内容、住環境、福祉用具、家族状況が変わった場合は、予定日を待たず再評価を検討します。

まとめ|ADL評価尺度は目的・生活範囲・病期で選ぶ

ADL評価尺度は、基本ADL、IADL、活動頻度、疾患特有の生活機能のどこを確認したいかで選びます。

  • 基本ADLを短時間で把握するならBI
  • 介助量と認知面を詳しく共有するならFIM
  • 基本ADLを簡便に分類するならKatz Index
  • 在宅生活に必要な複雑な活動をみるならLawton IADL
  • 生活期の活動頻度や社会参加をみるならFAI
  • 疾患特有の生活上の問題には疾患特異的尺度を追加する

尺度を選んだあとは、合計点だけでなく、低得点項目、介助内容、評価条件、できるADLとしているADLの違いを整理します。評価結果を介入、環境調整、退院支援、家族指導、再評価へつなげることで、ADL評価を臨床で活かしやすくなります。

ほかの評価尺度も目的別に確認できます

評価名が決まっていない場合は、確認したい機能や臨床目的から探してください。

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参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下

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