フレイルのリハビリ|J-CHS判定後の評価・介入・再評価

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フレイルのリハビリ|J-CHS判定後の評価・介入・再評価

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)でフレイルまたはプレフレイルに該当したあとは、点数だけで介入を決めず、該当項目の背景要因と安全性を追加評価し、優先課題を1〜2個に絞ることが重要です。

本記事では、J-CHSで身体的フレイルを把握したあとに、追加評価、介入、多職種連携、再評価へつなげる流れを整理します。運動だけに偏らず、栄養・口腔・薬剤・社会参加を含めて、病棟・外来・訪問リハで実践しやすい形にまとめました。

J-CHS判定後は4ステップで介入へつなげる

J-CHSはフレイルの状態を共有する基準ですが、判定だけでは具体的な介入内容まで決まりません。実務では、該当項目の確認、追加評価、優先課題の選定、再評価の4ステップで進めます。

J-CHS判定後に該当項目の確認、背景要因と安全性の追加評価、優先課題への介入、2〜3指標での再評価を行う4ステップ実践フロー
図:J-CHS判定後の4ステップ実践フロー
  1. J-CHSで該当項目を確認する
  2. 背景要因と安全性を追加評価する
  3. 優先課題を1〜2個に絞って介入する
  4. 同じ条件で測れる2〜3指標を再評価する

重要なのは、「歩行速度が遅いから歩行練習」「握力が低いから筋力トレーニング」と機械的に対応させないことです。同じ該当項目でも、低栄養、疼痛、呼吸循環器疾患、薬剤、抑うつ、転倒不安など、背景によって優先すべき対応は異なります。

J-CHSでは点数と該当項目の両方を確認する

改訂J-CHS基準は、体重減少、筋力低下、易疲労感、歩行速度低下、身体活動低下の5項目で身体的フレイルを評価します。0項目はロバスト、1〜2項目はプレフレイル、3項目以上はフレイルと判定します。

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)の5項目
項目 評価の目安 確認するときのポイント
体重減少 6か月で2kg以上の意図しない体重減少 食事制限などによる意図的な減量ではないかを確認する
筋力低下 握力が男性28kg未満、女性18kg未満 姿勢、肘の角度、左右、試行回数などの測定条件をそろえる
易疲労感 ここ2週間で、わけもなく疲れたような感じがある 睡眠、感染、貧血、抑うつ、薬剤などの影響も確認する
歩行速度低下 通常歩行速度が1.0m/秒未満 歩行距離、助走、減速、補助具、見守り条件を固定する
身体活動低下 軽い運動・体操と定期的な運動・スポーツが、いずれも週1回未満 運動の有無だけでなく、種類、時間、頻度、生活内活動を確認する

判定結果を共有するときは、「J-CHSで3項目に該当」だけで終わらず、体重減少、歩行速度低下、身体活動低下に該当のように、該当した項目まで記録します。

該当項目の背景要因を追加評価する

J-CHSの該当項目は、介入先を考える入口です。介入前には、なぜその項目が低下しているのかを追加評価し、運動で改善を狙う部分と、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・歯科職種などへ相談する部分を分けます。

J-CHSの該当項目から追加評価へつなげる視点
該当項目 追加で確認すること 介入を考える視点 共有・相談先の例
体重減少 食事量、食欲、口腔・嚥下、消化器症状、浮腫、疾患、薬剤 摂取不足の原因と運動負荷の釣り合いを確認する 医師、看護師、管理栄養士、歯科職種
筋力低下 下肢筋力、立ち上がり、疼痛、神経症状、栄養、廃用期間 筋力低下の部位と生活動作への影響を分ける 医師、看護師、管理栄養士、リハ職
易疲労感 睡眠、感染、貧血、呼吸循環状態、抑うつ、疼痛、薬剤 活動量を増やす前に、医学的要因と回復状況を確認する 医師、看護師、薬剤師
歩行速度低下 筋力、バランス、疼痛、息切れ、転倒不安、補助具、環境 速度だけでなく、どの場面で歩行が崩れるかを確認する リハ職、医師、看護師、福祉用具担当者
身体活動低下 生活範囲、役割、外出、転倒不安、認知・気分、介護環境 運動時間だけでなく、日常生活で動けない理由を探す リハ職、看護師、介護職、相談員、家族

運動介入前に安全性を確認する

フレイルのある高齢者では、運動能力だけでなく、その日の食事量、睡眠、血圧、感染、疼痛、服薬状況などによって実施可能な負荷が変わります。プログラムを開始・増量する前に、安全に実施できる状態かを確認します。

  • 安静時および動作時の胸痛、強い息切れ、動悸がないか
  • めまい、失神感、冷汗、著しいふらつきがないか
  • 発熱や感染徴候、明らかな体調悪化がないか
  • 血圧や脈拍に大きな変動がないか
  • 脱水、摂取不足、低血糖が疑われないか
  • 新しい疼痛や荷重困難がないか
  • 眠気、立ちくらみ、食欲低下など薬剤の影響がないか

注意:胸痛、強い呼吸困難、失神感、冷汗、意識状態の変化、著しい血圧変動などがある場合は運動を中止し、所属施設の基準に従って医師・看護師へ報告してください。

優先課題を1〜2個に絞って介入する

追加評価で複数の問題が見つかっても、最初からすべてに同じ強さで介入する必要はありません。まずは、安全性、改善可能性、生活への影響、本人の希望を踏まえ、優先課題を1〜2個に絞ります。

フレイル介入の優先順位を決める4つの視点
視点 確認すること 判断例
安全性 転倒、循環動態、呼吸状態、低栄養などのリスク 運動量を増やす前に医学的評価や環境調整を優先する
改善可能性 短期間の介入で変化が期待できる要因 廃用、活動不足、食事量不足への介入から開始する
生活への影響 移動、食事、排泄、外出、役割への影響 本人の生活で最も困っている動作を優先する
本人の希望 再開したい活動、避けたい負担、継続できる方法 本人が意味を感じられる課題に置き換える

介入は運動・栄養・口腔・薬剤・社会参加を組み合わせる

フレイルは複数の要因が重なって生じるため、運動だけで完結させず、栄養、口腔、薬剤、社会参加を含めた多面的な介入が基本です。ただし、すべてを一度に増やすのではなく、本人が継続できる範囲で優先度の高い領域から開始します。

フレイルに対する多面的介入の考え方
領域 介入例 個別に調整する要素 再評価の視点
運動 筋力、バランス、歩行、持久力、生活活動 疾患、症状、体力、回復状況、転倒リスク 実施状況、疲労、歩行、立ち上がり、生活範囲
栄養 食事量、主菜、間食、食事回数、栄養補助 疾患、腎機能、嚥下状態、食欲、栄養評価 体重、摂取量、食欲、浮腫、検査所見
口腔 口腔清潔、義歯、乾燥、咀嚼・嚥下への対応 口腔内環境、食形態、姿勢、食事時の症状 むせ、食べこぼし、食事時間、摂取量
薬剤 眠気、立ちくらみ、食欲低下、転倒との関連確認 服薬目的、服用時間、重複、多剤併用 意識、血圧、食欲、活動性、転倒状況
社会参加 外出、役割、交流、趣味、通いの場への参加 本人の関心、移動手段、家族、地域資源 外出回数、活動範囲、役割、生活リズム

運動療法は多要素で個別に調整する

フレイルに対する運動は、筋力トレーニングだけではなく、バランス、歩行、有酸素運動、日常生活内の身体活動を組み合わせます。固定された回数や強度を全員に当てはめるのではなく、開始前の能力と安全性、実施後の反応に応じて調整します。

筋力トレーニング

筋力トレーニングでは、立ち上がり、移乗、歩行、段差昇降など、生活動作との関連が強い下肢・体幹筋群を優先します。椅子立ち上がり、膝伸展、股関節伸展、カーフレイズなどから、本人が安全に反復できる課題を選びます。

  • 正しい動作を保てる負荷から開始する
  • 痛み、息切れ、ふらつき、代償動作を確認する
  • 回数だけでなく、翌日まで残る疲労も確認する
  • 容易になった場合は、負荷、回数、動作範囲などを段階的に調整する

バランス・歩行練習

歩行速度が低下している場合でも、歩行練習だけで解決するとは限りません。立ち上がり、立位保持、方向転換、障害物、二重課題、転倒不安など、歩行が崩れる場面を確認して課題を選択します。

屋外歩行や速度を上げる練習を行う場合は、循環・呼吸状態、疼痛、転倒リスク、補助具、介助量を確認し、短い距離から段階的に進めます。

有酸素運動・身体活動

有酸素運動では、歩行、自転車エルゴメーター、反復する立位活動などから、実施環境と本人の能力に合う方法を選びます。連続して行うことが難しい場合は、短時間に分けて実施しても構いません。

身体活動低下に対しては、「運動する時間」を設けるだけでなく、離床、食堂への移動、身の回り動作、家事、外出、役割など、1日の生活全体で動く機会を増やします。

栄養は運動負荷と並行して評価する

体重減少、食欲低下、食事摂取量の低下がある場合は、運動負荷を増やす前に栄養状態を確認します。運動量だけを増やしても、必要なエネルギーやたんぱく質を摂取できていなければ、体重減少や疲労を助長する可能性があります。

  • 最近の体重変化と、その変化が意図的かどうか
  • 主食・主菜・副菜の摂取量
  • 食欲、間食、栄養補助食品の利用状況
  • むせ、咀嚼困難、口腔乾燥、義歯の問題
  • 悪心、便秘、下痢、腹部症状
  • 浮腫、脱水、疾患、腎機能、薬剤の影響

必要なエネルギー量やたんぱく質量は、年齢だけで一律に決めず、疾患、腎機能、栄養状態、身体活動量、治療方針を踏まえて、医師や管理栄養士と検討します。

口腔・薬剤・社会参加も介入対象にする

運動プログラムを調整しても改善しない場合は、運動以外の要因が継続を妨げていないかを確認します。特に口腔、薬剤、社会参加は、食事量や活動量に直接影響します。

口腔・嚥下

口腔乾燥、義歯の不適合、咀嚼困難、むせ、食事時の疲労は、摂取量低下につながります。食べにくさがある場合は、食事姿勢、食形態、口腔内環境、食事時間を確認し、必要に応じて歯科職種や摂食嚥下に関わる専門職へ相談します。

薬剤

鎮静、立ちくらみ、食欲低下、脱水、便秘などを生じる薬剤は、身体活動や栄養状態に影響することがあります。理学療法士が薬剤を変更するのではなく、観察した症状と服用時間の関係を記録し、医師・看護師・薬剤師へ共有します。

社会参加

外出や役割の喪失は、身体活動量の低下につながります。社会参加は付加的な要素ではなく、活動量を維持する介入の一部です。本人にとって意味のある外出、家事、趣味、交流などから、再開可能な活動を選びます。

記録は評価・背景・介入・再評価日をセットにする

記録では、J-CHSの判定結果だけでなく、追加評価で分かった背景要因、優先課題、介入内容、再評価指標、再評価日までを一続きで残します。

記録例

評価:J-CHSは体重減少、歩行速度低下、身体活動低下の3項目に該当。

背景:退院後に外出機会が減少。1か月で体重1.5kg減少し、主菜摂取量も低下。4m通常歩行は杖使用・見守りで5.2秒。

優先課題:摂取量低下と生活内活動の減少。

介入:管理栄養士と食事内容を共有し、本人と昼食後の病棟歩行を設定。運動時の症状を確認しながら立ち上がり練習を実施。

再評価:1週間後に体重、食事摂取状況、歩行実施回数を確認。4週間後に同条件で4m歩行を再測定。

フレイルリハビリテーション記録シート

評価から介入、再評価までを1枚で管理したい場合は、フレイルリハビリテーション記録シートを使用できます。J-CHSの該当項目、追加評価、優先課題、介入内容、再評価指標を同じ紙面に記録できます。

フレイルリハビリテーション記録シート(A4 PDF)

初回評価から再評価までを1枚で整理できます。

記録シートPDFを開く

PDFを表示できない場合は、こちらからフレイルリハビリテーション記録シートを開いてください

再評価は2〜3指標に絞って同じ条件で行う

介入後に毎回すべての項目を測定すると、本人と評価者の負担が大きくなります。優先課題と介入内容に対応する2〜3指標に絞り、同じ条件で継続して測定します。

フレイル介入後の再評価指標
指標 確認できること 条件固定のポイント 実施時期の考え方
体重 栄養状態や摂取状況の変化 時間帯、服装、測定機器をそろえる 急な変化がある場合は早めに確認する
4m歩行 通常歩行速度と移動能力 助走、減速、靴、補助具、介助量をそろえる 介入内容と状態に応じて短期または節目で確認する
5回椅子立ち上がり 立ち上がり能力と下肢機能 椅子の高さ、上肢使用、開始姿勢をそろえる 立ち上がり練習の効果を追う場合に選択する
握力 全身の筋力低下を捉える代表指標 姿勢、肘角度、左右、試行回数をそろえる 短期間の細かな変化より一定期間後の確認に向く
SPPB バランス、歩行、立ち上がりの全体像 実施手順と各サブテストの条件をそろえる 介入前後の節目で全体像を確認する
活動量・実施回数 生活内で介入が継続できているか 何を1回と数えるかを事前に決める 週単位で振り返ると変化を把握しやすい

再評価日は、状態が変化したときだけ決めるのではなく、介入開始時に予定しておきます。短期では安全性、実施状況、疲労、摂取状況を確認し、一定期間後に機能指標やJ-CHSの該当項目を見直します。

フレイル介入でよくある失敗

フレイルのリハビリでは、評価尺度の選択よりも、評価後の運用で詰まることがあります。よくある失敗と修正方法をあらかじめ共有しておくと、判定から介入へつなげやすくなります。

フレイル介入で起こりやすい失敗と修正方法
失敗 問題点 修正方法 記録すること
判定だけで終わる 該当項目の原因や次の行動が決まらない 背景要因を追加評価し、優先課題を決める 該当項目、背景、優先課題
運動だけで対応する 低栄養、薬剤、口腔、生活環境を見落とす 多面的に評価し、必要な職種へ相談する 運動以外の阻害要因と共有内容
一律の強度で開始する 疾患や日差変動に合わず、過負荷や過小負荷になる 安全性と実施後の反応から個別に調整する 症状、実施量、疲労、翌日の反応
プレフレイルを経過観察だけにする 改善可能な段階で活動低下が進むことがある 小さな介入と再評価日を設定する 開始した行動と次回確認日
測定条件が毎回異なる 変化が介入効果か条件差か分からない 靴、補助具、姿勢、距離などを固定する 測定条件と変更点

よくある質問

各項目をタップすると回答が開きます。

J-CHSでプレフレイルだった場合も介入が必要ですか?

プレフレイルは1〜2項目に該当する状態です。全員に同じ運動を処方するのではなく、該当項目の背景を確認し、改善可能な活動低下、摂取不足、筋力低下などがあれば、小さな介入と再評価を開始します。

J-CHSで該当した項目に対応する運動をすぐ始めてもよいですか?

該当項目だけで機械的に運動内容を決めることは避けます。体重減少には疾患や摂取不足、歩行速度低下には疼痛や呼吸循環状態などが関係することがあるため、背景要因と安全性を追加評価してから介入を選びます。

運動強度や回数はどのくらいから始めますか?

全員に共通する回数や強度ではなく、疾患、症状、体力、転倒リスク、栄養状態、運動後の反応に応じて個別に設定します。正しい動作を保てる範囲から開始し、息切れ、疼痛、ふらつき、翌日まで残る疲労を確認しながら調整します。

再評価はどのくらいの頻度で行いますか?

状態や介入内容によって異なります。開始直後は安全性、実施状況、疲労、摂取量などを短い間隔で確認し、機能指標は変化が期待できる時期に合わせて評価します。重要なのは、再評価日と測定条件を開始時に決めておくことです。

再評価ではJ-CHSの5項目を毎回測定しますか?

毎回すべてを測る必要はありません。介入対象に対応した2〜3指標を継続して確認し、一定期間後や状態変化時にJ-CHS全体を見直します。測定条件をそろえることも重要です。

栄養は理学療法士がどこまで確認すればよいですか?

体重変化、食事摂取量、食欲、主菜や間食の状況、口腔・嚥下の困りごとなど、運動負荷に影響する情報を確認します。必要量の決定や栄養処方は独断で行わず、医師や管理栄養士と共有して検討します。

まとめ

J-CHS判定後のリハビリでは、点数だけで介入を決めず、該当項目の背景要因と安全性を追加評価することが重要です。そのうえで優先課題を1〜2個に絞り、運動、栄養、口腔、薬剤、社会参加を組み合わせます。

  • J-CHSは点数だけでなく、該当項目まで確認する
  • 該当項目から直接介入せず、背景要因を追加評価する
  • 運動前には循環・呼吸状態、疼痛、摂取状況などを確認する
  • 優先課題を1〜2個に絞り、多面的に介入する
  • 再評価は2〜3指標に絞り、同じ条件で比較する

評価、追加評価、介入、再評価を一続きで記録すると、フレイルの判定を多職種で共有しやすくなり、次の行動も明確になります。

次の一手

評価や介入の手順を整えても、教育体制、相談相手、記録方法、人員配置などによって運用が続かないことがあります。臨床で繰り返し同じ部分に詰まる場合は、個人の技術だけでなく職場環境も整理してみてください。

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参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

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