【記憶の仕組み】短期記憶と長期記憶:長期は更に4つの記憶に分類

認知症
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リハビリくん
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今回は、介護におけるケア技法として最近良く耳にするユマニチュードについて解説させて頂きます!情報量が多いため、全4回でまとめていきます。

  

私の勤める医療機関にも多くの介護士が勤めており、入院患者の介護をして下さっております。リハビリテーション専門職と介護士の連携というのは質の高いケアをする上で重要なものであり、助け合いながら一緒に仕事をさせて頂いております。

    

一緒に働いていることで気付くことも数多くあり、やはり介護の仕事は大変だと感じております。常に人手不足問題が発生しているため、1人あたりの業務量が増え、体力も非常に使う仕事です。そんな中で1人1人の患者様であったり、利用者様に向き合って介護をしますが、忙しすぎてケアの質を思うように高められないといった実情があると思います。

  

そんな方に、意識していただきたいのがユマニチュードです。ユマニチュードは技法は、単に介護することではありません。患者の「人間らしさ」を尊重することを重視しています。突き詰めれば「人間とは何か」「介護をする人とは何か」を問う学問とも言えます。または、そのような問いに基づく実践的な技術がユマニチュード技法です。

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です

現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!

  

主な取得資格は以下の通りになります

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!

  

3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!

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記憶の仕組み

記憶の仕組みについて正しく理解しておくことは、認知症を患う方の介護を行うときに大変役立ちます。ユマニチュード技法を用いるうえで記憶の仕組みについて理解しておくことは必須となります。

認知症の方を介護する場合、認知症という疾患を理解していないと、その介護はより大変なものとなります。

介護者の良くある悩み事としては「突然怒り出す」「何度も同じことをたずねられる」「お金の計算ができなくなった」「どうしてもごはんを食べてくれない」「お風呂に入ってくれない」等が挙げられます。

しっかりと介護をしてあげたいと思っていても、こういった事象の発生により、対立してしまい、介護をとてもつらく感じたり、つい怒ってしまって、その後「優しくできなかった」とご自分を責めてしまうことすらあります。

認知症をお持ちの方の介護をするときには、介護を受ける方がどんな状況にあるのかを知ることが役に立ちます。まずは、認知症の症状の中でも特に重要な記憶のしくみと特徴を理解しておくと、必ず介護に役立ちます。

「短期記憶」と「長期記憶」

私たちは周囲の状況を目や耳や鼻や舌、皮膚などの感覚器を通して情報として知覚します。人が知覚できる情報は膨大で、そのうち自分にとって必要なものだけがフィルターで選択されて脳に届きます。

例えば、私たちがテレビを見るのに夢中になっているときに横から話しかけられても気づかないのは、その声がフィルターを通過していないからです。フィルターを通過した全ての情報は、まず1つ目の記憶の箱に入ります。これを「短期記憶」と呼びます。

「短期記憶」はたくさん覚えておくことができず、長く保存しておくことも困難になります。ほとんどの「短期記憶」の内容はそのまま忘れられていきます。

「短期記憶」の中で「覚えておこう」と脳が判断した内容だけが「長期記憶」と呼ばれる記憶の倉庫に入ります。

認知症の特徴の1つは記憶の障害です。記憶の障害は、まず「短期記憶」から始まります。「短期記憶」が障害されると、今あったばかりの出来事を覚えておくことができません。

そのため、「ここはどこ?」とたずねて「埼玉の○○病院ですよ」と答えてもらったことを覚えておくことができずに、再び「ここはどこ?」とたずねてしまいます。

介護者にとってはもう10回も答えていることでも、ご本人にとっては「初めてたずねる」ことになっています。こういったことの積み重ねにより介護者のストレスは蓄積されてしまう訳です。

4つの記憶

「短期記憶」の中から「長期記憶」の倉庫へ入る記憶は、大きく4つに分けられます。「意味記憶」「エピソード記憶」「手続き記憶」「感情記憶」の4つです。

「意味記憶」とは、一般的な知識などに関する記憶です。一言でいえば「知識」になります。例えば、「大谷翔平は二刀流で野球が上手い」「カレーライスは辛い」などが意味記憶になります。

「エピソード記憶」は時間や場所・感情などの情報を持った個々の経験や体験のことです。一言でいえば「思い出」になります。例えば、「22歳の時結婚した」「3日前学校でカレーを作った」などがエピソード記憶になります。

「手続き記憶」は服を着たり、料理をしたり、大工仕事をしたり、自転車に乗ったりする動作に関
する記憶になります。

そして、最後に「感情記憶」と呼ばれる記憶があります。楽しかったこと、うれしかったこと、怖かったことなどが保存される記憶になります。

「長期記憶」が失われる順番

認知症によって「長期記憶」が失われていくときには、特徴的な順番があります。

まず、学んで身につけた「意味記憶」に変化が生じます。お金の計算が難しくなったり、字が読めなくなったり、散歩に出たけれど家がどこだったかわからなくなってしまったりすることなどがその例です。

次に失われやすいのは、出来事に関する記憶「エピソード記憶」です。「エピソード記憶」の失われ方の特徴は、新しい記憶から徐々に古い記憶に遡って忘れていくことです。

例えば介護現場で良くある話でいえば、「20分前にトイレ誘導を行なったのに、トイレに行ったことを忘れてしまい再びトイレに行きたいと訴える」といったことになります。

「意味記憶」や「エピソード記憶」が失われても、比較的残る記憶が「手続き記憶」になります。

エピソード記憶が障害されて、朝ごはんを食べたことをすぐに忘れてしまう方であっても、包丁を使ったお料理ができたり、自転車に乗れるなどの「手続き記憶」が反映された行動をとることができたりします。

介護をするときには、この特徴を生かして、できるだけ自分でできることは自分でやっていただくよう促し、生活する能力を保てるよう支援することが重要になります。

「感情記憶」は最後まで残る

最後まで残る記憶が「感情記憶」になります。ご家族の顔をみて名前を思い出せなくなっても、自分に何人子どもがいるのかを忘れてしまっても、過去によい時間を過ごした記憶は残り、「この人はいい人だ」という感情は残ります。

反対に、辛い思いをした記憶も同様です。お風呂に入ってもらおうと半ば無理やり服を脱がせてしまうと、「お風呂」と「嫌だったという感情」が関連づけられて記憶に残ってしまい、次の入浴がより困難になることがあります。

介護をするときにはこの記憶の特徴をよく考えて、「良い感情」の記憶を残していけるように工夫していく必要があります。

他の記憶と結びつく「感情記憶」

「感情記憶」とは、その人の人生の最期の日まで残ります。また、「感情記憶」は、しばしば他の記憶と結びついています。

例えばピラミッドについて学んだことは「意味記憶」になりますが、そのときに「ピラミッドって大きいな」と驚いたことは感情の記憶として残ります。つまり、このとき「意味記憶」と「感情記憶」は結びついています。

また、初めて自転車に乗れるようになったときの自転車の乗り方については「手続き記憶」ですが、それと同時に自転車で1人で乗れた!という嬉しい気持ちは「感情記憶」に残ります。ここでも「手続き記憶」と「感情記憶」が結びついています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では、ユマニチュードを取り入れた介護を行う上で必要となる「記憶の仕組み」についての基礎知識をまとめさせていただきました!

ユマニチュードについては全4回でまとめています! 第1回:【認知症の人の心をつかむケア技法】、第3回:【認知症の中核症状と行動・心理症状】、第4回:【ユマニチュード技法における4つの技術】の方も見ていただけると幸いです!

リハビリくん
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参考文献

  1. 藤井俊勝.記憶とその障害.高次脳機能研究.第30巻,第1号,p19-24.
  2. 小松伸一.エピソード記憶と意味記憶.失語症研究.第18巻,第3号,p2-8.
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