【身体活動量に応じた高齢者の運動効果】介護予防、健康におすすめ

フレイル・サルコペニア
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

この記事では「活動量計と身体活動量」をキーワードに内容を整理していきます。

  

現在、日本だけではなく世界的に身体活動量が低下している人が増えております。様々な要因が絡み合った結果で、こういった状況になっていることが考えられ、近年の新型コロナウイルスの影響による行動制限も1つの要因になるかと思います。

   

身体活動量の低下は、やはり健康にとって良いこととは言えず、歳をとっても健康でいる確率を高めるためには、ある程度の身体活動量を保持していくべきだと言われております。

身体活動量とは身体を動かした量になりますので、イメージはつくと思いますが、その量については表しにくいところがあります。そこで活用すると便利な機器が活動量計になります。

   

活動量計については介護予防やウォーキングマイレージなど近年様々な方面で耳にする機会がありますが、実際どのような機器であるのか知らない方もいらっしゃると思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

    

この記事を読むことで、活動量計や身体活動量についての理解を深め、臨床で身体活動量を踏まえた介護予防を講じることができるようになることを目標にします。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

このような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠ですよね。

こんな悩みを抱えるリハビリテーション専門職の味方になってくれるのが「リハノメ」です!

    

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身体不活動パンデミック

現在、世界的に身体不活動というワードが着目されています。いくら健康であったとしても身体活動量が減ってしまい運動習慣がなかったり、家の中にほとんど閉じこもりになっているような状況は、健康にとって良い状態とは言えません。

近年の疫学研究により「身体活動量が不足している人が非常に多いこと」「身体不活動は健康上問題となる生活習慣病や移動機能の低下を引き起こす可能性が高いこと」「予後を悪くすること」が証明されています。

既に高齢である方、40 〜 50 歳くらいの方、まだまだ若い世代の方どなたにも言えることですが、できるだけ元気なうちから運動習慣を定着させ、生活習慣病や運動器の異常を引き起こさないようにする必要があります。

超高齢化社会となる日本では、要介護状態となる対象者をできるだけ少なくする努力が今後ますます必要になります。年をとっても、慣れ親しんだ地域で生き生きとした生活を送るためには、元気なうちから十分な身体活動を行うことが、何よりの介護予防活動となります。

身体活動とは

活動量計について話をする前に、身体活動にはどのような活動が含まれるのかを整理していきます。

Caspersen は、身体活動について「エネルギー消費をきたす骨格筋の収縮活動によりもたらされるあらゆる身体的な動き」と定義しています。

人は安静にしていても生命維持のために一定のエネルギーを消費しますが、この生命維持に使用するエネルギー以外の、エネルギーを消費する全ての動きが身体活動ということになります。

つまり、労働を含め日常生活の中で営まれる全ての身体的な動き(洗濯、料理、買い物、掃除、子育て、階段、立つ、しゃがむ )を伴う活動ということになります。

身体活動がもたらす健康上の効果

身体活動がもたらす健康上の効果についてのエビデンスは数多く示されています。

身体活動量が低い人と比較して、身体活動量が多い人や定期的な運動習慣がある人については、総死亡・虚血性心疾患・高血圧・糖尿病・肥満・骨粗鬆症・結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いことや、身体活動や運動がメンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められています。

更に高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや死亡を減少させる効果があることが示されています。

身体活動量の目安

「健康のためを思い運動を始めてみたけど長続きしなかった」このような悩みは多いのではないかと予想されます。

健康番組などで「運動習慣の定着が重要です」といったように説明があると思います。実際にその通りであり、運動習慣をつけることは健康のために重要となりますが、どのような運動をどの程度すればいいのかについては分かりにくいところがあると思います。

歩行でいえば 1 日 8,000 歩が目安と言われます。確かに 1 日 8,000 歩も歩くことができれば、身体活動量としても十分だとは思いますが、8,000 歩といっても歩幅や歩行速度は人それぞれですので、身体活動量としてはばらつきが出ることが考えられます。また、日常生活が忙しくて歩く時間が確保できない方も多いのではないかと予想します。

身体活動量については、身体を動かすことが目的になりますので、必ずしも歩く(ウォーキング)という方法を選択する必要はありません。そこで歩数以外の方法として、METs やエクササイズを活用した身体活動量の目安について説明していきます。

身体活動量の定量的な評価方法としては、「身体活動の強さ:METs」×「行った時間」の合計値で示すことができます。

この合計値について、専門家でなくてもわかりやすく親しみやすいものにするために、健康づくりのための運動指針 2006 において、「身体活動の強さ:METs」×「行った時間」=「エクササイズ」と定義されています。

つまりエクササイズとは、身体活動量を示す単位であり、運動強度の指標である METs に活動時間(時)をかけた量の単位になります。

例えば、6 METs の身体活動を 30 分行った場合のエクササイズを計算すると、「6 METs × 1/2 時間=3エクササイズ」という結果になります。

エクササイズを算出することができれば、「エクササイズ × 体重 × 1.05」の計算式によってエネルギー消費量を算出することができます。実施した身体活動によってどのくらいのエネルギーを消費したのかを知ることは、モチベーションにも繋がると思います。

また、週に 23 エクササイズ以上の身体活動を行うことが生活習慣病の予防に繋がると言われております。

運動習慣の定着と言われても、どのような運動をどの程度すればいいのか、目標を設定するのが難しかったと思いますが、このように METs やエクササイズを活用することで、週に 23 エクササイズ分の身体活動を行うという具体的な計画を立てることができます。

身体活動基準 2013 メッツ表

各身体活動のメッツについては、厚生労働省が作成した「健康づくりのための身体活動基準 2013 」の p51-52でまとめられている「生活活動のメッツ表」と「運動のメッツ表」が参考になります。

同様に厚生労働省が 作成しているこちらの資料も大変参考になります。

例として私たちが日常生活で行うような身体活動は以下の数値(Mets)で設定されています。

  • 3.0 Mets:普通歩行(67 m/分)、台所の手伝い)
  • 3.3 Mets:カーペット掃き、掃除機の使用
  • 3.5 Mets:ほどほどの速さの歩行(75 ~ 85 m/分)、階段を下りる、風呂掃除
  • 4.0 Mets:階段をゆっくり上る
  • 4.3 Mets:やや速歩(93m/分)
  • 5.0 Mets:かなり速歩(107m/分)
  • 8.8 Mets:階段を速く上る

活動量計とは

活動量計とは、身体に身に着けて身体活動量を計測する機器になります。前項にて身体活動量の目安として、メッツやエクササイズの考え方を紹介しましたが、活動量計は身につけて運動するだけでも様々なデータが計測できるため、身体活動量を管理するうえで大変便利になります。

活動量計に似たものとして歩数計がありますが、歩数計は身体に身に着けて歩くことで、主に歩数を測定する機器になります。20 年前くらいは歩数計という名称よりも万歩計とよく言った覚えがあります。最近の歩数計は歩数だけではなく歩行距離や消費カロリーを測定できるモデルも開発されています。

活動量計に話を戻しますが、活動量計は歩数計よりも様々な記録を測定することができます。商品によりますが、歩数・走行距離・心拍数・消費カロリー・ストレス状態・血中酸素濃度・睡眠状態などを測定することができるモデルも販売されています。

そのため、健康管理やダイエット、ランニング・サイクリング・ヨガ・筋トレなど、屋外・屋内を問わずさまざまな運動のサポートにも活用されています。

また、活動量計は高齢者の健康づくりにも役立つと期待されており、近年では全国の各自治体や企業、健康保険組合などが健康マイレージというサービスを導入しております。

健康マイレージとは ウォーキングを楽しく続けることにより「健康かつ長生き」を目指すサービスになります。スマホアプリや歩数計、活動量計で簡単に始めることが可能であり、サービスによっては、ウォーキングを行うことで景品がもらえたりする場合もあります。

振り子式と加速度センサー式

歩数計と活動量計の説明をしましたが、歩数や活動量のカウント方法は、振り子式と加速度センサー式に大別されます。

子供の時にズボンに着けて使ったような万歩計が振り子式であり、近年の様々な項目が測定できる高性能の活動量計は、基本的には 3 軸加速度センサー式となります。それぞれについてご説明していきます。

振り子式

本体内部に振り子を取り付けたバネが固定されており、歩くとともに、その体の上下振動に応じてバネが伸縮、そのバネに取り付けられている振り子も動くことで歩数をカウントします。

比較的構造が単純であるため、安価な製品で広く採用されています。ただし、バネが水平方向を向いていると歩数をカウントできないため、利用時には本体を正しい向きで体に装着する必要があります。

また、椅子に座っている状態から立ち上がった時や、電車バスなどの乗りものに乗っているときの振動など、歩行時以外の振動にも反応して歩数として計測してしまう場合があります。

さらに、振動の強さによって反応の違いが発生する場合があり、静かに歩くと計測できなかったり、走ると歩数を多めに計測してしまうことも考えられます。

1軸加速度センサー

上下方向の揺れを感知するセンサーでカウントします。加速度が加わると内部で解析し、歩数としてカウントします。

2軸加速度センサー

上下方向・左右方向の揺れを感知する 2 つのセンサでカウントします。加速度が加わると、内部で解析して歩数としてカウントします。

3軸加速度センサー

上下方向・左右方向・前後方向の揺れを感知するセンサと 3 軸のセンサでカウントします。加速度が加わると、内部で解析して歩数としてカウントします。

退院後の運動習慣の定着が課題

活動量計を用いて身体活動量を計測することは健康づくりのために有用となりますが、一般の人だけではなく、いわゆる虚弱高齢者(フレイル)の介護予防としても有効に活用されることが期待されています。

医療の基本的流れとしては、急性期の病院で病気に対する治療を受けつつ、リハビリテーションを実施し、回復期病院にバトンを渡します。回復期病院では、より一層リハビリテーションに力を費やし、身体機能やADLの改善を図り在宅復帰に繋がります。

在宅に無事に退院した高齢者に発生する課題が身体活動量の低下になります。回復期リハビリテーション病院では 365 日リハビリテーションが実施されており、1 日最大 3 時間もの訓練が行われております。これが、家に帰るとなくなりますので、急激に運動量が低下することはよくあることになります。

在宅では介護保険を利用して訪問リハビリテーションを利用したり、通いのサービスに出ることもできますが、1 日の中でリハビリテーションを行う時間は多くても 1 時間くらいになります。更に入院中と違って毎日これらのサービスを使用することは難しいと考えられます。

リハビリテーションを 1 日 1 時間実行できるとしても、実際の機能回復には、残りの 23 時間をどう過ごすかが大事になります。こんな時に、活動量計を使用できるのではないでしょうか。

活動量計を身につけて生活していただくことで、対象者の 1 日の活動状況を正確に把握することができます。問診により活動における話を聞くのもいいですが、やはり活動量計から得られたデータの方が正確な身体活動の把握に繋がります。

活動量計から得られたデータは、目標設定や効果判定にも有効に活用できます。理学療法ガイドライン第 2 版によると、フレイルの判定基準となる身体活動によるエネルギー消費量は、1 週間当たり男性 383 kcal、女性 270 kcal以下とされております。このあたりの数値と見比べていくことも介護予防において重要になるのではないかと考えています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「活動量計と身体活動量」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事で活動量計や身体活動量についての理解を深め、臨床で身体活動量を踏まえた介護予防を講じることに繋がれば幸いです。

参考文献

  1. 田畑泉.身体活動の増加は健康増進にどこまで貢献できるか.学術の動向.2006年5月,p14-19.
  2. 小熊祐子.身体活動と健康.KEIO SFC JOURNAL.Vol.14,No.2,2014,p86-102.
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