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この記事は「今回は体圧分散マットレスの種類と選び方」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
褥瘡の予防や治療においては、皮膚の状態・本人の活動性・栄養状態・知覚・そして摩擦やずれなど本人の身体だけでなく、生活環境も含んで褥瘡対策に望む必要があります。
褥瘡対策において、褥瘡発生率を低下させるために体圧分散マットレスを使用することは強く推奨されています。しかし、体圧分散マットレスといっても、マットレスの製造技術が向上した今の時代、多種多様のマットレスが存在します。体圧分散マットレスであれば、どれでも良いわけではなく、褥瘡対策のためには対象者に応じた適切なマットレスを選定する必要があります。
そこでこの記事で体圧分散分散マットレスの知っておくべき知識について、まとめていきたいと思います!

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
マットレスに求められる機能
近年、ベッドマットレスは非常に多様化しており、家庭やホテルで使用されるスプリングマットレスやウレタンフォームマットレス、ウォーターマットレスのほか、医療・介護分野では特殊寝台に適合した高機能マットレスも普及しています。特に病院や介護施設、在宅介護で使用されるマットレスは、単なる寝具としての役割を超え、褥瘡予防や安楽な体位保持など、医療的機能が求められます。
一般的なマットレスにおいて最優先されるのは「寝心地」であり、適切な硬さや体圧分散性能により、安眠と身体のリラクゼーションを促します。これは家庭用・ホテル用・医療用を問わず共通する基本機能です。しかし、医療現場ではこれに加え、以下のような機能が重視されます。
- 【体圧分散性能】骨突出部への局所的圧迫を軽減し、褥瘡発生を予防する。
- 【安定した体位保持】患者のずれや沈み込みを防ぎ、安全かつ安楽な姿勢を維持する。
- 【温湿度調整】通気性や吸湿性により、皮膚マセレーションや発汗による不快感を防止する。
- 【耐久性と衛生管理】消毒や洗浄に耐える素材で、感染予防や長期使用に適応がある。
このように、マットレスは単なる快適性だけでなく、患者の健康状態や介護環境に合わせた機能性が重要です。医療従事者は、利用者の身体機能やリスク評価を踏まえ、最適なマットレスを選択する必要があります。
体圧分散マットレスの定義
日本褥瘡学会では「体圧分散用具」を、ベッドや椅子などの支持面と接触している際に単位体表面が受ける圧力を軽減する用具と定義しています。
具体的には、接触面積を広げて局所的な圧力を減らす方法、または圧力が加わる部位を時間的に移動させる方法によって、同一部位への持続的圧迫を防ぐものです。
臥位では特殊ベッドやマットレス、上敷きマットレス、交換用マットレスが用いられ、座位では車いすや椅子に敷くクッションや姿勢保持パッドなどが含まれます。材質にはエア、ウォーター、ウレタンフォーム、ゲル、ゴムなど多様な種類があります。
この定義に基づくと、体圧分散マットレスの基本機能は次の 2 点に集約されます。
- 【接触面積の拡大による局所圧の軽減】身体形状に沿って沈み込み、骨突出部への圧集中を防ぎます。
- 【圧力の時間的移動による負担分散】自動体位変換やエアセルの交互膨張などにより、同一部位の持続圧迫を回避します。
医療・介護現場では、褥瘡予防だけでなく、安楽な姿勢保持、呼吸・循環の負担軽減、介助者の作業負担軽減といった効果も期待されます。そのため、対象者の身体機能・褥瘡リスク・活動量に応じて、適切な種類や機能を持つ体圧分散マットレスを選定することが重要です。
体圧分散マットレスの種類
体圧分散マットレスは大きく 「静止型」 と 「圧切り替え型(エアー)」 に分類されます。両者は体圧分散の方法や適応対象が異なり、患者の身体機能や褥瘡リスクに応じた選択が必要です。
種類 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
静止型(ウレタン・ゲル等) | 面で身体を支え接触面積を拡大し局所圧を軽減 | – 電源不要・静音- 耐久性が高い- メンテナンス容易 | – 自動体位変換なし- 長時間同一姿勢では圧集中 |
圧切り替え型エアー | エアセルの膨張・収縮で支持面の圧を交互に切替 | – 圧迫部位を時間的に分散- 中等度〜高リスク者にも対応 | – 電源が必要- 作動音あり- 故障時は機能停止 |
自動体位変換機能付きエアー | 圧切り替え+傾斜や側方移動で自動体位変換 | – 介助負担の大幅軽減- 高リスク者の褥瘡予防に有効 | – 高価- 大型で移動困難- 作動音や振動が気になる場合あり |
静止型マットレス
静止型は主に高密度ウレタンフォームやゲルを使用し、身体を面で支えることで接触面積を広げ、局所的な圧力を軽減します。構造がシンプルで耐久性が高く、電源を必要としないため静音性やメンテナンス性にも優れています。
一方で、自動体位変換機能はないため、利用者自身の自発的な体位変換や介助者による定期的な体位変換が不可欠です。活動量がある利用者や軽度の褥瘡リスク者に適しています。
圧切り替え型(エアー)マットレス
圧切り替え型は一般に「エアーマットレス」と呼ばれ、内部のエアセル(空気の筒)を電動ポンプで交互に膨張・収縮させることで支持面の圧を切り替えます。これにより、同一部位への持続的な圧迫を防ぎ、褥瘡予防効果を高めます。
近年では、2 層・3 層構造による安定性向上、自動傾斜機能による体位変換、微細な圧変動(スモールチェンジ機能)など、機能は多様化しています。機種によって特性や適応が異なるため、導入時にはメーカー仕様や使用目的を確認することが重要です。
体圧分散マットレスの推奨度
日本褥瘡学会が発行している「褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)」では、体圧分散マットレスの使用は褥瘡予防および発症後の管理において高く評価されています。
特に「褥瘡発生率を低下させるために体圧分散マットレスを使用することは有効か」という臨床疑問に対しては、「使用するよう強く勧められる(推奨度A)」 とされています。これは、褥瘡の一次予防のみならず、既存褥瘡の悪化防止や治癒促進にも有用であることを示しています。
体圧分散マットレスの使用に加え、寝姿勢をポジショニングすると、より効果的な褥瘡対策となります。ポジショニングについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ポジショニングの基礎知識についての記事はこちらから】
体圧分散マットレスの選択方法
体圧分散マットレスの選択は、利用者の身体機能や全身状態だけでなく、介護者の介助技術や褥瘡予防に関する知識、さらに施設や在宅環境のケア体制(マンパワー)を総合的に考慮して行う必要があります。
対象者の身体機能に基づく選択
自力で定期的に体位変換が可能な利用者では、必ずしも高度な自動体位変換機能は必要ありません。この場合、静止型マットレスや低圧保持型エアマットレス、あるいはシンプルな圧切り替え型エアマットレスが選択肢となります。
一方、自力での体位変換が困難であり、他動介助が必要な場合は、褥瘡リスクが高まるため、圧切り替え機能や自動体位変換機能を備えた機種の使用が望まれます。
ケア環境とマンパワーの影響
介護職員の人数が限られ、特に夜間帯に 4 時間以内の体位変換が困難な場合は、自動体位変換機能付きのエアマットレスが有効です。
これは介護者の身体的負担を軽減するだけでなく、ケアの継続性を確保し、褥瘡予防効果を高めます。
総合的な判断

体圧分散マットレスの選択では、
- 個体要因(身体機能・褥瘡リスク・体格)
- 環境・ケア要因(介助体制・施設の設備)
- 共通要因(利用目的・予算・耐用年数)
を総合的に評価することが重要です。これらの要素を組み合わせて検討することで、対象者に最も適したマットレスを選択できます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
体圧分散マットレスの選択は、対象者の身体機能・褥瘡リスク・全身状態、介助体制や施設環境を総合的に評価して行います。
自力で体位変換可能な場合は静止型や低圧保持型を、高リスクで介助が限られる場合は圧切り替え型や自動体位変換機能付きが有効です。
機能や価格、メンテナンス性も考慮し、個体要因・環境要因・共通要因を組み合わせて最適なマットレスを選定できるようにしましょう。
参考文献
- 森口靖子,吉本知恵,滝川由美子,伊達裕子,中添和代.樗創予防とその看護に関する予備的研究.香川県立医療短期大学紀要.第1巻,1999,p39-44.
- 須釜淳子.褥瘡予防における体圧分散マットレスの評価法.看護理工学会誌.2(2),2015,p90-94.