【車椅子用クッション選び方】役割と材質の種類を理解し適切な選定を

褥瘡対策
記事内に広告が含まれています。
リハビリくん
リハビリくん

いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「車椅子用クッション」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

         

車椅子用のクッションには、そのクッションの役割によっていくつかの種類に分類されています。大まかに説明すると、疲労や疼痛を軽減するための標準的なクッションなのか、姿勢保持を目的としたクッションであるのか、褥瘡リスクが高い人向けの褥瘡予防クッション等に分類されています。

   

クッションの選定は当然重要なものになりますが、意外と現場で行えていないのが適合評価になります。選定したクッションが適切に使えているのか、本当にそのタイプのクッションで相応しいのかを定期的に評価することはとても大切であります。

  

今回は、車椅子クッションのことについて、役割から種類、選定方法まで理解できるように、まとめていきたいと思います!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

こちらの記事は検索ワードのランキング 2 位を獲得しております。"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

車椅子用クッションの基本情報

車椅子用クッションを選ぶ際には、以下 4 つの要素を考慮して選定します。

  • 体型や体重
  • 座位保持や姿勢矯正の必要性
  • 褥瘡の予防や治療の状況
  • 通気性や清潔さ

まず、体型や体重に合わせて、クッションのサイズや厚み、硬さを選ぶ必要があります。サイズが小さすぎると、クッションがずれたり、体圧が分散されなかったりします。

逆に、サイズが大きすぎると、車椅子に収まらなかったり、余分な圧力がかかったりします。厚みや硬さも、体重に応じて適切なものを選ぶことで、快適さや安定性を高めることができます。

次に、座位保持や姿勢矯正の必要性に応じて、クッションの形状や素材を選ぶ必要があります。座位保持とは、車椅子に正しく座ることをサポートすることになります。

姿勢矯正とは、脊椎や骨盤の歪みを改善することです。これらの目的には、凹凸のあるクッションや、体にフィットするジェルやエアーのクッションが適しています。また、腰や背中に負担がかかる方には、腰部や背部をサポートするクッションもおすすめとなります。

さらに、褥瘡の予防や治療の状況に応じて、クッションの機能や性能を選ぶ必要があります。褥瘡とは、長時間同じ姿勢で座っていることで、皮膚や筋肉に圧迫がかかり、血流が悪くなって起こる潰瘍のことを表します。

褥瘡を予防するには、体圧を分散させるクッションや、血行を促進するクッションが適しています。座位姿勢に関わる褥瘡を治療するには、患部に圧力がかからないようにするクッションや、消毒や保湿ができるクッションが適しおります。

最後に、通気性や清潔さにも注意する必要があります。通気性の高いクッションは、汗や湿気を逃がし、肌トラブルや臭いを防ぐことができます。清潔さの高いクッションは、カバーが取り外しやすく、洗濯や消毒ができるものが望ましいです。また、アレルギーのある方には、素材にも気を付ける必要があります。

クッションの役割

医療・福祉領域においてクッションは主に車椅子上で用いられ、その座位特性を左右する重要なパーツの1つになります。

福祉用具情報システム(TAIS)にも400点を超える製品が登録されており、この種類の多さは必要機能の重要性と多様性の表れとなっています。

しかし、その必要性については十分に理解されておらず、未だに普通型車椅子のスリングシートにそのまま座らされているケースが散見されています。

また、調整式の除圧効果が高いクッションを使用するも、調整が不十分で機能が活かされていないケースもあります。クッションを入れてはみたものの、正しく使用することができていないケースは予想外に多く、患者や利用者の不利益となっています。

アメリカの医療共通治療行為コード化システムは、クッションを一般用(座り心地の向上)・ポジショニング用・スキンプロテクション用・ポジショニング&スキンプロテクション用の4つに分類しています。

つまり、クッションの役割は「座り心地の向上」「座位姿勢の保持(ポジショニング)」「接触面の皮膚の保護(スキンプロテクション)」となります。

一般用クッション

ウレタンフォームなどの柔軟な素材を用いて、身体と座面との接触面における簡易な圧分散を行います。

長時間の座位が保持しやすくなり、疲労や疼痛などの悪影響を軽減することができます。

ただし、自分で姿勢を変えられないレベルの身体機能であったり、生活を送るうえで長時間の座位保持が必要な方を対象とした場合には、一般用クッションでは不十分な可能性があります。

ポジショニング用クッション

独力で座位を保つことが難しい方の場合、例えば車椅子であれば標準型車椅子ではなくティルト&リクライニング車椅子に変更したりしますが、クッションも座位姿勢を保持するうえで重要な役割を果たします。

ポジショニングクッションにより、座位の土台である骨盤を支えることで座位姿勢の適正化を図ることができます。

殿部が前方に滑り、姿勢が崩れるのであれば、アンカーサポートのあるクッションが効果的となります。あるいは、クッションの坐骨結節や仙骨部分を大きくくり抜くことで、姿勢を安定させたり、大腿部の内外側を高くして股関節の内外転運動を制約させるクッションもあります。

スキンプロテクション用クッション

スキンプロテクション用クッションとは、いわゆる褥瘡予防用のクッションとなります。

通常であれば椅子に長い時間座っていると、無意識に姿勢を変えて局所への過度の圧集中を避けています。この動作を自力で行えない人が長時間車椅子に座る場合、皮膚にとって大きなリスクとなります。

このような場合、スキンプロテクション用クッションを用いる必要があります。スキンプロテクション用クッションは、身体との接触面に高い柔軟性を有し、接触面積を拡大させ、局所圧を分散させます。

最近では、様々な形態によって、高い圧分散機能を発揮する製品が多数供給されています。

ポジショニング&スキンプロテクション用クッション

前述の2つの機能を併せ持つように作られたクッションとなります。独力で座位を保つことが難しく、かつ荷重面の皮膚への配慮を必要とするようなケースに用いられます。機能の両立を目指していますが、両者の問題を完全に解決することはできていないのが現状になります。

クッションの種類

古くは毛皮、あるいは円座などが用いられた時代もありましたが、現在の車椅子クッションは主に材質や形状などによって大別されます。

フォーム材クッション

発泡材(多孔質物質)を用いた、いわゆるプラスチックフォームのクッションになります。家具や梱包材をはじめ、私たちの生活においても使用しているような身近な素材になります。

軽量で、快削性や接着性が高いため、くり抜いて形を変えることや、重ねて厚くすることも可能となります。加工しやすいというのは大きな特徴となっています。

デメリットとしては、劣化の影響が大きいため使用限界の確認が欠かせないことになります。

空気室タイプクッション

ゴムで作ったセルの中に気体を閉じ込め、そのセルによって座面が形成されたクッションになります。

バルブでセル内の空気量を調整し、座面の高さを調節できます。圧分散性に優れているため、褥瘡リスクの軽減を図ることができます。

一方、その高い圧分散性のため殿部の位置や姿勢が安定しにくく、座位姿勢をしっかりと保持するような目的には向かないこともあります。

また、空気量の調整が必要な構造上、空気漏れの危険性があります。クッションに座った状態で殿部の下に手を入れて底付きの確認をしたり、空気量を調整したりといった管理作業が定期的に必要となるため、これをご自身あるいは介護者によって管理できる状況下でなければ使用を勧めることはできません。

半流体ゲルタイプクッション

ゼリーのような半流体を閉じ込めたパッドを用いたクッションになります。反発力が少なく身体形状に適合しやすいことから圧分散性に優れ、褥瘡リスクの低減を期待することができます。

その流動性ゆえに厚さを確保しにくいため、フォーム材のベースと組み合わせて、圧集中部位のみにパッドを置く製品が多くなっています。

ベースにフォーム材を使う場合、姿勢安定性は比較的高くなりますが、荷重によってパッドが変形しゲルが流れるため、そのままくり返し使用すると圧分散効果が得られなくなってしまいます。

そのため、使用毎にご自身あるいは介護者によってゲルを徒手的に寄せて戻し、効果を維持していく必要があります。

臨床でのクッション選定方法

最も重要なことは、対象者に必要なクッションの機能を明確化し、そのうえで求める機能を有するクッションを選定していくことだと考えられます。

前項で述べたように、単純に座り心地が良ければ他は問わないレベルなのか、ポジショニングが必要なのか、スキンプロテクションが必要なのかを判断します。

単純な座位保持や褥瘡予防ではなく、食事などの各種ADL動作の向上や痛みの軽減、就業などにおける作業効率や安全性を高める目的、スポーツ場面で使用するケースとさまざまな状況が考えられるため、それに合わせた選択が必要となります。

クッションの選択基準について褥瘡予防の観点から考えれば、褥瘡発生リスクを評価し、褥瘡発生リスクが高い人に圧分散能力が高いクッションを提供するという考え方になると思います。

褥瘡発生リスクの評価方法については、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【OHスケールについての記事はこちらから】【ブレーデンスケールを徹底解説についての記事はこちらから

クッションの設置環境

すべてに共通する前提条件として、クッションの設置環境について注意すべきポイントがあります。

それは、クッションを置く土台のシート部に問題はないのか、ということになります。車椅子のスリングシートは基本的に、車椅子の折り畳みのための布材が撓むため、その上に置いたクッションも撓む可能性があります。

この問題は、時としてクッションの性能を棄損する可能性があります。そのため、車椅子のシート部に問題がないか定期的にメンテナンスを行い、どうしても撓むようであれば、シートと車椅子用クッションの間に、撓まない硬さを有した板材を敷くなどの工夫が必要になります。

筆者の経験では、使用しなくなった教科書をシートと車椅子用クッションの間に敷いて、撓みを解消させたことがあります。

クッションの適合評価

適合評価の最も基本的なポイントは、クッションと身体の接触面における過度な圧集中の有無の確認になります。

次に、クッションの使用目的に照らし合わせた達成度の確認になります。座り心地の改善が目的であれば使用者の主観評価が重要になります。ポジショニングであれば目的姿勢が実現できているかどうかと、必要とされる時間にわたってその姿勢が維持できるかどうかが重要となります。

スキンプロテクションであれば、圧分散の程度が重要な指標となります。いずれにおいても、わずかな座位時間では正確な評価は困難であり、対象者にとって必要な時間を複数回の評価によって判定していく必要があります。

定性的評価

現場の評価の多くは、定性的なものに留まっていると考えられます。しかし、この定性的な評価は重要なものになります。

実際、多忙な現場において適合の程度を大まかに把握するためには、接触面に手を入れて過度の圧集中の有無を確認し、使用者に使用感を口頭で尋ねていくという方法は妥当だと考えられます。

寧ろ避けるべきは、それさえも行われないことです。なんとなく車椅子用クッションを選んで、なんとなく使い続けることはQOLの低下にも繋がりかねないため、注意しましょう。

定量的評価(接触圧計測)

近年、比較的低価格な計測機器が登場し座面の定量的な接触圧計測が可能となりました。

これにより、坐骨結節下や仙骨部などへの過度な圧集中の有無や、全体的な圧分散の状況を確認することができます。

クッションのタイプの違いや、各種の調整による圧分散性の変化を視覚的・定量的に評価できるため、選定に有力な手掛かりとなります。

因みに、筆者の勤務地ではニッタ株式会社が取り扱っている座圧分布測定システム(Conform-Light)を使用しています。

定量的評価(姿勢計測)

クッションの構造や形状によって、骨盤や大腿部、さらには上部体幹の姿勢も変わる可能性があります。

特に、座位姿勢において骨盤の傾きは重要になります。傾斜角度計を用いた計測や、ISOに準拠した座位姿勢計測システムを活用して計測することで評価の質は高まると考えられます。

車椅子用クッション 介護保険

車椅子用クッションは、介護保険の対象となる場合があります。介護保険の対象となるクッションは、以下の条件を満たすものとなります。

  • 介護保険の要支援または要介護の認定を受けていること
  • 医師の処方箋があること
  • 介護保険の備品貸与の申請を行うこと
  • 介護保険の指定を受けた販売店から購入すること

介護保険の対象となるクッションは、貸与という形で利用することができます。貸与とは、一定期間(通常は 6 ヶ月)借りることができる制度となります。

貸与期間が終了すると、返却するか、更新するか、買い取るかの選択ができます。貸与の場合、自己負担は10%です。買い取りの場合、自己負担は30%です。ただし、所得に応じて自己負担が減免される場合もあります。

介護保険の対象となるクッションは、種類や価格によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。

  • 体圧分散クッション:体圧を均等に分散させることで、座瘡の予防や治療に効果的なクッションです。ジェルやエアー、ウレタンなどの素材があります。価格は約1万円から5万円程度です。
  • 座位保持クッション:車椅子に正しく座ることをサポートするクッションです。凹凸のある形状や、サイドサポートなどの機能があります。価格は約2万円から10万円程度です。
  • 姿勢矯正クッション:脊椎や骨盤の歪みを改善するクッションです。腰部や背部をサポートする機能があります。価格は約3万円から15万円程度です。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では車椅子用クッションの選定方法についてまとめさせて頂きました!

様々な研究結果から、安静臥床が及ぼす悪影響は明らかなものとなっています。そこで、離床の重要性が見直され、今では多くの病院や施設で離床を促進する取り組みがなされているとおもいます。

非常に重要な取り組みだと思いますが、ただ闇雲に車椅子に乗せればいいという訳ではありません。対象者に適した車椅子用クッションを選定し、適切な姿勢で、苦痛なく安全に車椅子乗車することで離床による運動効果も効率的に得られると考えられます。

参考文献

  1. 木之瀬隆.車椅子シーティングによる褥瘡予防.日本義肢装具学会誌.2017,Vol.33,No.1,p21-26.
タイトルとURLをコピーしました