いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「OHスケール」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
褥瘡は発生してしまってから治すより、未然に発生を予防できればそれに越したことはありません。発生を防ぐためにはどうすればいいのか?そこで効果を発揮するのがリスクアセスメントスケールになります。
褥瘡の発生を防止するにはリスクアセスメントツールを活用し、様々な褥瘡発生要因からその対象者の褥瘡発生リスクを評価し、リスクに応じた予防策を実施することが重要になります。
今までに褥瘡発生リスクが高い患者および利用者を抽出するためにいくつものリスクアセスメントスケールが考案されてきました。その中で、日本でよく使用されていて、簡便で使用しやすい評価法の1つとしてOHスケールを推奨することができます。
こちらの記事では、OHスケールの評価方法を解説し、すぐにでも臨床でOHスケールを活用した評価ができるように、Excelファイルの評価表をダウンロードできるようにしてあります。是非ご活用して頂ければと思います!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。
主な取得資格は以下の通りです
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
褥瘡のアセスメント
褥瘡とは、身体いずれかの部位の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができた状態のことを指します。日本褥瘡学会は褥瘡について以下のように定義しています。
「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」
褥瘡ができてしまうと、患者に苦痛が生じるだけではなく、もとの原因疾患に対する治療が遅延したり、金銭的な負担の発生に繋がったり、転院先の選択肢が狭まったり、あらゆる弊害が生じます。
このような褥瘡を予防するためには、褥瘡のリスクアセスメントが必要になります。褥瘡のリスクアセスメントを適切に行うことで、褥瘡のリスクを評価し、予防策を講じることができます。
褥瘡の危険因子評価
褥瘡のリスクアセスメントには、褥瘡の危険因子評価が必要になります。褥瘡の危険因子評価には、以下のような項目があります。
- 基本的動作能力
- 病的骨突出
- 関節拘縮
- 栄養状態低下
- 皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)
- 皮膚の脆弱性(浮腫)
- 皮膚の脆弱性(スキン- テアの保有、既往)
OHスケールとは
OH スケールは 1998 年から 3 年間にわたる 厚生労働省長寿科学総合研究班による調査を基に作成された褥瘡発生の危険性を評価する指標となり、開発者の大浦・堀田スケールという名称をもとに、OH スケールと呼ばれています。
OH スケールは日本人の高齢者がもつ危険要因である 「自力体位変換能力」「病的骨突出」「浮腫」「関節拘縮」の 4 項目を 0 ~ 10 点満点で評価することで褥瘡発生の危険性を抽出することができます。
合計点によって、褥瘡発生の危険度を段階分けすることが可能であり、合計点数 0 点を危険因子なし、1 ~ 3 点を軽度レベル、4 ~ 6 点を中等度レベル、7 ~ 10 点は高度レベルと判定します。
評価項目が 4 項目と少ないため、短時間で評価することができることが最大の特徴になります。また、合計得点によって、どのようなタイプのマットレスを選択するべきなのかについての指標にもなります。
OHスケール 推奨度
日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度 C1」となっています。
OHスケール 評価項目
OH スケールの評価項目は以下の 4 項目により構成されています。
- 自力体位変換能力
- 病的骨突出
- 浮腫
- 関節拘縮
OHスケール 評価用紙
OH スケール
OHスケールの評価表をダウンロードできるようにしてあります。評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
OHスケール 評価方法
OHスケールの評価方法についてわかりやすく解説していきます。
自力体位変換能力
対象者本人の力で、身体の向きを変えることを指します。自力体位変換能力の低下が最も大きな褥瘡発生要因となります。
意識的か無意識的かは問わずに、身体に加わった圧力とずれ力に対して有効に体位を変え、軟部組織の血流を改善できるかどうかを判定します。
理由を問わず、まったく自分で動けない場合は「3 点」、動ける場合は「0 点」、その中間が「1.5 点」となります。
採点の注意点としては「できる:0 点」「できない:3 点」の間の状態については全て「どちらでもない:1.5 点」となります。
普段、体位交換を全介助で行っている対象者については「できない:3 点」という判定が多くなると思いますが、本当に全くできていないのか良く考える必要があります。
対象者によっては意識的な動きではなかったにしても、身体の僅かな動きや不随意運動が小さな体位変換や圧分散となり、軟部組織の血流改善に関与している可能性があるため、この部分を意識して評価を行います。
病的骨突出
ADL が低下し、寝たきりの状態に陥ると臀筋の使用頻度が少なくなります。そうすると臀筋が萎縮し、仙骨の骨突出が著明(病的骨突出)になります。
OH スケールの病的骨突出は仙骨部の骨突出の程度で判定します。仙骨部の骨突出の測定方法としては、下図のような専用の判定器を使用すると正確な判定を行うことができます。
健康な状態では,仙骨の中央部は左右の臀筋や皮下脂肪などが骨の突出部よりも飛び出しており、外力が仙骨部に集中しないようになっています。
判定器の真っ直ぐな方を当てたときに中央に空間が観察できる状態を 0 点とします。
そして仙骨を守る臀筋や皮下脂肪が失われ、凹みがなくなった状態(お尻の高低差がなくほぼ平らな状態)を 1.5 点(軽度)とします。
判定器の真っ直ぐではない方を当てたときに、両方の脚がつくような状態を 1.5 点(中等度)とします。
仙骨部が明らかに飛び出していて、骨突出部から左右の 8 cm 離れた部分と 2 cm 以上の高低差がある状態が 3 点(高度)とします。因みに判定器の真っ直ぐではない方を当てたときに、一方の脚でも浮くような状態であると 3 点になります。
仙骨部の骨突出が顕著な場合、この部分には圧迫力やずれ力が集中しやすいため、褥瘡の危険度が高くなります。
浮腫
浮腫を認める場合、その近辺の皮膚は脆弱で傷つきやすいため、褥瘡発生の危険度が高くなります。
身体のいずれかの部位に浮腫を認めるかどうかを判定します。浮腫の後発部位としては、瞼、顔面、上肢、下腿、足首、足背などがあげられます。
これらの部位で浮腫が疑われる部位があった場合、母指の腹で優しく約 5 秒間圧迫し、指を離しても皮膚の圧痕が持続するようであれば、「浮腫あり:3 点」と判定します。
関節拘縮
関節拘縮は、どの部位に発生しているかに関わらず褥瘡発生要因となります。
関節拘縮による直接的な褥瘡発生としては、関節の伸展側が拘縮の影響により関節内部から圧を受けて外傷が発生すること、関節拘縮により下肢が交差することなどで褥瘡が発生することがあります。
また、関節的な要因としては、股関節や膝関節が拘縮することにより、大転子部や仙骨部の骨突出の程度が強くなることや局所圧が高くなることが考えられます。
関節の可動域制限が 一ヶ所でもあれば「あり:1点」、可動域制限がなければ「なし:0点」と判定します。
OHスケール カットオフ値
OH スケールの合計得点により褥瘡発生の危険性を分類することができます。
- 0 点:危険因子なし
- 1 ~ 3 点:軽度レベル
- 4 ~ 6 点:中等度レベル
- 7 ~ 10 点:高度レベル
OHスケール以外のリスクアセスメントスケール
この記事で解説した OH スケール以外にも以下のようなリスクアセスメントスケールが本邦では使用されています。
- 世界的に最も使用:ブレーデンスケール
- 小児を対象:ブレーデン Q スケール
- 厚生労働省が開発:厚生労働省危険因子評価票
- 入院患者に使用:K 式スケール
- 在宅療養者に使用:在宅版 K 式スケール
- 脊髄損傷者:SCIPUS スケール
褥瘡のリスクアセスメントスケールについては、他の記事で詳しくまとめています!《褥瘡のリスクアセスメントスケール|褥瘡発生リスクを評価し褥瘡予防》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「OH スケール」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで OH スケールについての理解が深まり、臨床における褥瘡対策の一助となれば幸いです。
OH スケール以外のリスクアセスメントスケールについては、他の記事でまとめています!こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【褥瘡のリスクアセスメントスケールについての記事はこちらから】
参考文献
- 岡田克之.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌,50巻,5号,2013:9,p583-591.
- 南由起子.ブレーデンスケールとOHスケールについて.泌尿器ケア.2007,vol.12,no.11,p74-78.
- 三谷和江.OHスケール.整形外科看護 .2015,vol.20,no.10,p26-28.