GLIM 診断の記録と介入デザイン【判定アルゴリズム・記録シート付き】
本ページは、スクリーニング陽性後の GLIM 診断を「評価して終わり」にせず、重症度判定 → 介入方針 → 再評価 まで 1 本の線でつなぐための実務ガイドです。冒頭の A4 配布物 2 点(判定アルゴリズム・記録シート) を使うことで、病棟カンファレンスやリハ栄養カンファでそのまま共有できます。
GLIM そのものの定義や判定基準、カットオフ値の詳細は、解説総論である 「GLIM による低栄養診断の基本とリハ栄養」 にまとめています。本稿では「診断したあと何をどう記録し、どのような介入につなぐか」にフォーカスして整理します。
GLIM 判定アルゴリズム( A4 ) GLIM 記録シート( A4 )
GLIM 診断を「アルゴリズム+記録シート」で回す
実務では、まず スクリーニング陽性 を起点に、判定アルゴリズム A4 を見ながら「フェノタイプ評価 → エティオロジー評価 → GLIM 診断 → 重症度」の順に確認します。その結果を、記録シート A4 の該当欄に転記しておくと、誰が見ても判断の根拠が追える形になります。
判定アルゴリズムは「何をどの順に見るか」を示すフローチャート、記録シートは「いつ・誰が・どの値で診断したか」を残すカルテの補助として位置づけます。GLIM の評価手順自体は、前述の総論記事(GLIM 基本)を参照しつつ、数値・期間・計測条件を統一しておくことがポイントです。
記録シートの書き方:フェノタイプ × エティオロジー
記録シートでは、まず「体重・ BMI ・筋量」など フェノタイプ を、評価日と期間が分かるように記載します。例として、「3 か月前 52 kg → 現在 48 kg(− 7.7 %)」のように、数値と期間をセットで残すと、後日見直した際も重症度判定の根拠が明確になります。
続いて「摂取不足/吸収不良・炎症」の エティオロジー を記入します。ここでは「食形態の不適合」「嚥下障害による摂取不足」「慢性心不全による慢性炎症」など、できるだけ具体的な原因を書き出すことが重要です。GLIM 診断欄には「フェノタイプ ≧ 1 + エティオロジー ≧ 1 であり、低栄養あり」といった一文を添えておくと、多職種間での解釈のズレを減らせます。
診断結果から介入方針を組み立てる
GLIM で低栄養と診断したあとは、重症度とエティオロジーをもとに 栄養療法とリハ栄養の両輪 を設計します。例えば「軽度 × 摂取不足メイン」であれば、食形態調整やエネルギー・蛋白強化、食事環境の整備、運動負荷の微増など、経口中心の介入で回復が期待できます。
一方、「中等度〜重度 × 慢性炎症」を伴う症例では、疾患活動性のコントロールと並行して、高蛋白・高エネルギー処方やレジスタンストレーニングを長期的に組み込む必要があります。記録シートの「介入方針」欄には、誰が・どの目標に向けて・どの時点までに 介入するのかを簡潔に記載し、次回の再評価欄とセットで使うとカンファレンス時の合意形成がスムーズになります。
エティオロジー別にみる観察ポイントと介入の例
エティオロジー欄は「ただチェックを付ける場所」ではなく、介入の優先順位を整理する場と捉えます。例えば、摂取不足が主体 の症例では「喫食量・時間・食事時ポジショニング・嚥下機能」の観察が中心となり、介入も食形態調整や嚥下リハ、食事介助の工夫が軸になります。
急性炎症が主体 の場合は、原疾患治療と循環・呼吸状態を優先しつつ、早期経腸栄養の導入や離床・筋力低下予防を検討します。慢性炎症 が続くケースでは、炎症マーカーや体重・筋量の経時変化を追いながら、長期的な高蛋白・高エネルギー食と運動療法の両方をデザインします。こうした「エティオロジー別の観察ポイントと介入の方向性」をシートに簡潔にメモしておくと、次回カンファでの振り返りが行いやすくなります。
リハ栄養カンファレンスでの共有のコツ
判定アルゴリズムと記録シートを使う大きなメリットは、多職種で同じフレームを共有できる ことです。カンファレンスでは、まず記録シート上部の基本情報と GLIM 診断・重症度を確認し、その下に記載したエティオロジーと介入方針を順に追っていくと、議論の迷子を防げます。
特に「栄養療法」「リハ栄養」「炎症コントロール」「社会的要因」など、担当が分かれる領域は、記録シートの担当欄に職種名を明記しておくと役割分担が明瞭になります。再評価予定日をあらかじめ記入し、「2 週間後の体重・摂取量・歩行量で再評価する」といった形で合意しておくと、GLIM を単発の診断ではなく 継続的なマネジメントツール として活用しやすくなります。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
GLIM の数値閾値はどれを使えばよいですか?
FFMI を測れない施設では GLIM を使えませんか?
GLIM 診断だけでなく、MNA や MUST も残した方がよいですか?
おわりに
臨床では「スクリーニング → GLIM 診断・重症度判定 → 介入デザイン → 再評価」というリズムを崩さずに回すことが、低栄養マネジメントの質を左右します。判定アルゴリズムと記録シートをセットで使うことで、判断根拠と介入の狙いが 1 枚にまとまり、スタッフ交代や施設間連携の場面でも情報が引き継ぎやすくなります。
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


