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パーキンソン病によって生じる機能障害と活動の制限
パーキンソン病は、主に中脳の黒質にあるドパミン産生細胞が変性・脱落することで発症する進行性の神経変性疾患です。パーキンソン病の症状は大別すると運動症状と非運動症状に分類されます。
運動症状
運動症状としては、振戦(安静時のふるえ)、筋強剛(筋固縮)、動作緩慢(ブラジキネジア)、姿勢保持障害が代表的で、これらの症状が日常生活動作に広範な影響を与えます。
運動症状による機能障害としては、まず移動能力の低下が挙げられます。歩行は小刻みで前傾姿勢となり、すり足となることが多く、転倒リスクが高まります。
歩行開始時や方向転換時に動作が止まってしまう「すくみ足」も見られ、屋外での移動や公共交通機関の利用などが困難になります。また、動作緩慢や筋強剛により、衣服の着脱や食事、整容動作といったセルフケアの自立が難しくなる例も少なくありません。
さらに、姿勢保持障害によりバランスを崩しやすく、転倒・骨折のリスクが増加します。これにより、活動性がさらに低下し、廃用症候群の進行につながる悪循環を生み出すこともあります。
進行に伴い嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎を起こすリスクも高くなるため、食事の形態調整や摂食嚥下リハビリテーションが必要になる場合もあります。
非運動症状
一方、非運動症状もパーキンソン病の大きな特徴であり、QOL の低下に直結します。例えば、起立性低血圧により立ちくらみが頻発し、移動や入浴などの日常場面での安全確保が課題となります。
便秘や頻尿といった自律神経症状は生活リズムを乱し、外出や社会参加を妨げます。また、うつやアパシー(意欲低下)、不安症状は活動性を低下させ、リハビリテーションへの参加意欲にも影響します。さらに、嗅覚低下や睡眠障害(レム睡眠行動異常など)も見られ、患者の生活全般に複合的な支障をきたすことになります。
加えて、認知機能の低下や幻覚・妄想などの精神症状が進行すれば、家族や介護者の負担が増し、在宅生活の継続が困難となるケースもあります。
このように、パーキンソン病は単一の症状にとどまらず、多様な機能障害とそれに伴う活動制限が複雑に絡み合い、生活全体に大きな影響を与える疾患であるといえます。
そのため、患者一人ひとりの症状や障害像に応じた多職種による包括的な評価と支援が重要です。運動機能だけでなく、心理・認知・環境要因なども考慮した個別性の高いリハビリテーションが求められます。
パーキンソン病の評価項目
パーキンソン病の症状は多様であり、それぞれの患者で現れ方や重症度が異なるのが特徴です。そのため、リハビリテーションの効果を最大限に引き出すためには、的確な評価とアセスメントが欠かせません。
単に全てのパーキンソン病患者に対して一律の定められた評価を実施するだけでは、個々の状態に合ったリハビリの提供は困難です。対象者の症状に応じて、必要な評価項目を選択し、個別性をもったプログラムを立案することが、効果的な支援につながります。
特にパーキンソン病は、疾患の進行に伴い症状が変化するため、リハビリの内容も時期に応じて見直す必要があります。そのためにも、評価は一度きりではなく、継続的に行うことが重要です。
パーキンソン病の重症度評価
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり、その症状や機能障害は時間とともに変化します。そのため、リハビリテーション介入においては、疾患の進行度や重症度を適切に評価することが極めて重要です。
重症度評価を行うことで、個々の患者に最適な治療戦略を立てることが可能となり、介入目標の設定や適切なタイミングでのアプローチが可能になります。
代表的な評価尺度である Hoehn and Yahr 重症度分類は、疾患の大まかな進行段階を捉えるのに有効であり、UPDRS(統一パーキンソン病評価尺度)は運動症状や ADL、精神・認知機能などを総合的に評価できる包括的な指標です。
これらの評価は、ベースラインの把握だけでなく、治療やリハビリの効果判定、将来的な生活支援の方針決定にも活用され、臨床現場における意思決定を支える基盤となります。
Hoehn & Yahr 重症度分類
Hoehn & Yahr の重症度分類ではパーキンソン病による症状に応じて I 度から V 度の 5 段階で重症度(進行度)を判定します。
片側の手足に症状が出始めたら I 度、両側に出現したら II 度のように、わかりやすく段階づけされているため非常に使用しやすい評価方法となります。
UPDRS(統一パーキンソン病評価尺度)
UPDRS(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)は、パーキンソン病の重症度や症状の進行を総合的に評価する国際的な尺度です。
1987 年に Fahn らによって発表され、統一パーキンソン病評価尺度とも呼ばれています。
UPDRS は運動症状に加え、日常生活動作や精神・認知面、治療による合併症などを含む 4 つの項目で構成されています。病状の変化を客観的に把握でき、治療方針やリハビリテーションの効果判定にも有用とされています。
運動機能評価
パーキンソン病の運動機能評価は、代表的な運動症状である振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害を踏まえて実施されます。
評価項目には関節可動域測定(ROM)、徒手筋力検査(MMT)、起居・移乗などの基本動作能力の評価が含まれます。
関節可動域においては、特有の前傾姿勢や筋緊張の亢進により体幹・股関節などに制限が生じやすく、転倒リスクやADL制限の一因となります。
また、運動量の低下や寡動によって廃用性筋力低下も生じやすく、筋力評価は活動性の把握に重要です。これらの評価を通じて、運動機能の維持・改善を目指したリハビリテーション計画に活かすことが求められます。
関節可動域測定(ROM)
パーキンソン病では、筋強剛(固縮)や無動・寡動といった運動症状により、関節の可動域制限が二次的に生じやすくなります。
特に頸部や体幹、肩関節、股関節、足関節では可動域の低下が目立ち、前傾姿勢やすり足歩行、動作の非対称性といった特徴的な姿勢・運動障害を助長します。
肩の可動域制限は更衣動作を、体幹・股関節の柔軟性低下は起居や歩行、転倒リスクの増加に直結します。さらに頸部・体幹の動きは嚥下機能とも密接に関連しており、摂食・嚥下障害を招く要因ともなります。
したがって、関節可動域検査は ADL 制限の要因を明らかにし、個別性の高いリハビリテーションを提供するうえで不可欠な評価項目です。

徒手筋力検査(MMT)
パーキンソン病では、筋固縮により動作が制限され、活動量の低下が筋力の二次的な低下を引き起こします。特に四肢や体幹の筋力低下は、起居動作や歩行能力を著しく損ない、ADL の自立度を低下させる要因となります。
MMT(徒手筋力検査)は、随意的な筋出力を定性的に評価できるため、疾患の進行度や生活機能に与える影響を把握するうえで重要な指標となります。
また、介入効果の判定やリハビリテーション目標の設定にも有用であり、他の評価(可動域・バランス能力等)と組み合わせることで、包括的な運動機能評価が可能となります。定期的な MMT の実施は、適切な運動療法の立案に不可欠です。
基本動作能力
パーキンソン病は、運動緩慢(動作開始や継続の困難)、筋固縮、姿勢反射障害などの運動症状により、寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行といった基本動作能力に支障をきたす進行性疾患です。
初期には些細な動作のしづらさや転倒リスクの増加といった症状に留まることもありますが、病状の進行とともに日常生活動作(ADL)への影響が顕著になります。
基本動作の評価は、患者の自立度を正確に把握し、リハビリテーション目標の設定や介入方針の決定に不可欠です。特に非運動症状も併存しやすい本疾患においては、全身状態や認知機能と合わせた多面的な評価が求められます。
臨床で有効となる基本動作能力の指標として Basic Movement Scale(BMS)とABMS-2(Ability for Basic Movement Scale)の 2 つを紹介します。
Basic Movement Scale(BMS)
Basic Movement Scale は、寝返りや乗り移りなど 9 項目の基本動作から構成されています。
上肢活用有無による動作遂行可否および 5 点から 1 点の 5 段階評定を判定尺度に用いるとともに、イラストによる動作の視覚化によって使用者および第三者の理解が得られやすいことが特徴の一つに挙げられます。

ABMS-2(Ability for Basic Movement Scale)
ABMS-2 は基本動作能力を簡易的に評価するスケールになります。「寝返り」「起き上がり」「座位保持」「立ち上がり」「立位保持」の 5 つの基本動作をそれぞれ、1 ~ 6 点で評価します。
基本動作(起居動作)のみで構成された評価尺度であり、ベッドやプラットフォーム等の横になる環境さえあれば、評価において特別な道具は不要となります。短時間で評価することができる点も特徴になります。

自律神経障害の評価
パーキンソン病は運動症状が中心の疾患とされがちですが、自律神経障害も高頻度に認められ、臨床上見逃せない要素となります。代表的な症状には便秘、排尿障害、起立性低血圧、発汗異常などがあり、これらは患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。
特に起立性低血圧は、離床や歩行時のふらつき・転倒・失神を引き起こすリスクが高く、臥床時間の増加や活動制限につながることがあります。こうした症状はリハビリテーション中にも現れやすく、バイタルサインの変化を常に把握しながらの介入が不可欠です。
パーキンソン病患者の全身状態を適切に管理するためには、医師をはじめとする多職種による連携体制のもとで、自律神経障害を含む全身評価を実施することが求められます。特に高齢者では循環系の予備力が低いため、慎重なモニタリングと段階的な介入が重要となります。
筋緊張(固縮)の評価
パーキンソン病における筋緊張異常、特に「固縮」は、四肢や体幹の筋に持続的な抵抗が生じる現象であり、運動緩慢とともに日常生活動作の制限を引き起こす主要因です。
固縮により持続的な筋緊張が生じると、拮抗筋間のバランスが崩れ、関節周囲の柔軟性が低下します。その結果、関節可動域(ROM)の制限が進行し、関節運動に必要な滑らかさが失われます。
これにより、動的な姿勢制御が困難となり、姿勢保持時には過剰な筋活動を要するようになります。特に起立や座位保持時に過緊張が持続すると、姿勢の固定化やエネルギー消費の増大を招き、移動時のステップ幅減少やバランス不良などの歩行障害を助長します。
結果として、転倒リスクの増大やADL(Activities of Daily Living)の自立度低下に直結するため、早期からの固縮評価と介入が重要です。
筋緊張の評価は、他動運動中に抵抗の有無やその質(歯車様または鉛管様)を確認する被動性検査が中心となります。定期的な評価は、ストレッチや可動域訓練などのリハビリ効果の判定や、介入方針の見直しに有用であり、運動機能維持・向上に不可欠な視点です。
バランス・移動能力の評価
パーキンソン病患者では、姿勢反射障害やすくみ足、突進現象によりバランス保持や移動が困難となり、転倒リスクが著しく増加します。
そのため、「ファンクショナルバランススケール」「Timed Up & Go test(TUG)」「ファンクショナルリーチテスト」「Four Square Step Test(FSST)」などのスクリーニングツールを活用し、多面的にバランス能力を評価することが重要です。
これにより、個々の障害特性に応じた転倒予防や動作自立を目指したリハビリ介入の立案が可能となり、安全な生活動作の獲得に寄与します。
ファンクショナルバランススケール
Functional Balance Scale は日常生活に密接に関連した機能的な動作 14 項目から構成されており、各項目を 0 ~ 4 点の 5 段階で評価し合計点を算出します。
合計点の得点範囲は最大 56 点、最低 0 点となり、点数が高いほど機能が高く、点数が 0 点に近いほど機能が低いことを示しています。

Timed Up & Go test(TUG)
TUG は椅子に座った状態から立ち上がって歩き出し、3 m 先の目印で折り返して再度椅子に座るまでの時間を計測するテストになります。
移動(歩行)に加えて、椅子からの起立・着座や方向転換を含むことから、歩行能力だけではなくバランスや筋力、判断能力などを必要とします。そのような特性から、ADL や易転倒性との関連が強いことが報告されています。

ファンクショナルリーチテスト
ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach Test)とは、1990 年に Duncan らによって提案された動的バランス機能に対する評価方法であり、略称で FRT とも呼ばれています。
自然立位において上肢を可能な限り前方にリーチさせ、その距離を計測するテストになります。

Four Square Step Test(FSST)
Four Square Step Test(FSST)は 2002 年に Dite らが開発した、バランス能力(敏捷性)の評価方法となります。
FSST は低い障害物を越えて、前後・左右に素早くステップをするスピードを測定する評価法になります。信頼性や妥当性も認められており、転倒の予測にも有用であると報告されています。

ADL・IADLの評価
パーキンソン病は運動機能障害に加え、非運動症状も伴う進行性疾患であり、日常生活に広範な影響を及ぼします。
ADL(基本的日常生活動作)や IADL(手段的日常生活動作)の評価は、患者の機能的自立度や介助の必要性、生活の質を総合的に把握するうえで極めて重要です。
FIM(機能的自立度評価法)や Barthel Index により、食事・整容・移動・排泄などの ADL を詳細に評価し、IADL では買い物、電話対応、金銭や服薬管理などの生活スキルが対象となります。
これらの評価結果は、個別リハビリの目標設定や多職種連携による在宅復帰支援、サービス導入計画の基盤となります。進行に応じた支援の最適化にも不可欠な指標です。
ADL・IADL の代表的な評価指標について、いくつか紹介します。
Barthel Index(バーセルインデックス)
Barthel Index(バーセルインデックス)とは、1965 年に米国の医師(Mahoney)と理学療法士(Barthel)によって開発された ADL 評価尺度です。
日常生活動作(ADL)の中でも特に重要性が高い 10 項目により構成され「できる ADL」を評価します。得点範囲は 0 ~ 100 点、得点が高いほど ADL 能力が高いと判定します。

FIM(機能的自立度評価法)
FIMとは「Functional Independence Measure」の略語で、1983 年に Granger らによって開発された ADL 評価法になります。
FIM の目的は、介護者の負担度を評価することになります。負担度をみることが目的のため、「できる ADL 」ではなく「している ADL 」を評価することが FIM の最大の特徴になります。

Lawton(ロートン)の尺度
Lawton(ロートン)の尺度とは 1969 年に Lawton、Brody らが開発した IADL 評価尺度になります。
性別によって評価項目が異なるというところが Lawton の尺度の特徴となっており、男性は 5 項目、女性は 8 項目から構成されています。

PDQ-39
PDQ-39(Parkinson’s Disease Questionnaire-39)は、パーキンソン病患者に特化した生活の質(QOL)を多面的に評価する自己記入式の質問票です。
本尺度は、疾患が日常生活や心理・社会面に与える影響を定量的に把握することを目的としており、リハビリテーションや治療の効果判定、病状の経過観察に広く活用されています。
質問票は 39 項目から構成され、以下の 8 つの領域に分類されます。
- 活動性(40 点満点)
- 日常生活動作(24 点満点)
- 情緒的健康(24 点満点)
- 恥辱感(16 点満点)
- 社会的支援(12 点満点)
- 認知機能(16 点満点)
- コミュニケーション(12 点満点)
- 身体的不快感(12 点満点)
各項目は 0 ~ 4 点で採点され、総得点は最大 156 点です。スコアは各領域ごとに得点率(実得点 ÷ 満点 × 100 %)で評価され、得点率が高いほど QOL が低下していることを示します。
PDQ-39 は、患者の主観的な困難感を多角的に捉えることができるため、運動症状だけでなく、非運動症状を含めた包括的なアプローチに有用です。近年では短縮版である PDQ-8 も臨床で活用されています。
認知機能検査
パーキンソン病では、進行に伴い注意障害や遂行機能障害、記憶障害などの認知機能低下がしばしばみられます。
これらは運動学習の習得や生活指導の理解に影響を及ぼすため、HDS-R や MMSE などの簡易検査による認知機能の評価が重要です。
認知障害がある場合には、介入内容や指導方法を個別化し、理解しやすい形でのアプローチが求められます。
また、認知機能の低下は生活自立度や安全性にも関与するため、リハビリの成果や在宅生活の質に直結します。評価結果は多職種で共有し、認知面も含めた包括的な支援体制を構築することが重要です。
パーキンソン病患者に対して有用となる代表的な認知機能の評価指標について、紹介します。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、認知症の早期発見を目的としたスクリーニング検査で、記憶・見当識・計算・言語などの認知機能を総合的に評価します。
全 9 項目、満点 30 点で構成され、20 点未満は認知機能低下の可能性を示唆します。パーキンソン病では遂行機能や記憶力の障害が進行とともに現れるため、HDS-R による定期的な認知機能のモニタリングが重要です。
MMSE(ミニメンタルステート検査)
MMSE(Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)は、認知機能のスクリーニングとして広く用いられる検査です。見当識、記憶、注意、計算、言語、構成能力などの項目で構成され、最大 30 点で評価されます。
パーキンソン病では、遂行機能や注意障害、記憶障害が進行に伴い出現するため、早期からの認知機能評価が重要です。MMSE は簡便かつ短時間で実施でき、認知症の有無や重症度の判定に有効です。
臨床的認知症尺度(CDR)
臨床的認知症尺度(CDR:Clinical Dementia Rating)は、認知症の重症度を評価するための尺度で、記憶・見当識・判断力・社会適応など 6 項目を臨床的に評価します。
パーキンソン病では、認知機能障害が進行することがあるため、CDR を用いることで認知症の有無や進行度を客観的に把握できます。0(正常)から 3(重度)までの段階評価により、早期から適切な介入や支援方針の決定に役立ちます。
心理・社会的因子の評価
パーキンソン病(PD)における心理・社会的因子の評価は、リハビリテーションの質や効果を大きく左右する重要な要素です。
PD では、ドパミン系の変性に加えてセロトニンやノルアドレナリン系の異常も関与し、うつ症状や不安、無気力(アパシー)が高頻度に認められます。
これらは運動機能や ADL の低下を助長し、リハビリテーションへの取り組みにも影響を及ぼします。また、社会的孤立やサポート不足は心理的ストレス因子となり、疾患の経過に悪影響を与える可能性があります。
そのため、心理的・社会的状態を可視化する評価尺度を用いたスクリーニングが不可欠です。以下に代表的な評価スケールを紹介します。
HADS
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、病院環境での不安と抑うつを評価する自己記入式スケールです。
全 14 項目で構成され、不安(HADS-A)と抑うつ(HADS-D)を各 7 項目で評価します。
各設問の得点範囲は 0 ~ 3 点となるため、合計点の得点範囲は不安と抑うつのそれぞれの領域で 0 ~ 21 点となり、合計点が高いほど不安と抑うつが強いことを示します。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)
簡易抑うつ症状尺度は、うつ病の重症度を評価する自己記入式の質問票で、アメリカ精神医学会の DSM-IV に基づいた 9 つの主要症状(睡眠、食欲、興味喪失、気分など)を評価対象としています。
日本語版(QIDS-J)は文化的背景に配慮し翻訳・調整されたもので、臨床や研究において、うつ症状の程度を迅速かつ客観的に把握するために有用です。評価結果はスコア化され、症状の経時的変化の追跡にも適しています。

LSNS-6
LSNS-6 とは高齢者の社会的なつながりを評価するための尺度であり、孤立や孤独感といった問題の早期発見や、適切な支援につなげるためのツールとなります。具体的には、家族や友人との関係の数や頻度、サポートの質などを確認します。
LSNS-6 の質問項目は、家族ネットワークに関する 3 項目、非家族ネットワークに関する 3 項目の計 6 項目について、それぞれ 6 件法( 0 点〜 5 点)でネットワークの人数を回答してもらいます。
得点範囲は 0 ~ 30 点となり、得点が高い方がソーシャルサポートネットワークが大きいとされています。得点が低いほどソーシャルサポートネットワークは小さく、12 点未満は社会的孤立を意味するとされております。
GDS15
GDSは、1982 年にBrinkらにより開発された高齢者用うつ尺度になります。
GDS の原版は 30 項目から構成されていますが、1986 年に Sheikh らによって 15 項目の短縮版(GDS15)が開発され、高齢者のうつの評価指標として推奨され、国際的にも広く用いられております。

嚥下機能の評価
パーキンソン病では、病期の進行とともに嚥下機能の低下が顕著となり、誤嚥性肺炎や低栄養の主要なリスク因子となります。特に、咳などの反射が生じない「不顕性誤嚥」は見逃されやすく、早期からの介入が不可欠です。
摂食嚥下評価では、VE(嚥下内視鏡検査)や VF(嚥下造影検査)といった精密検査が有用ですが、まずは簡便なスクリーニングを通じてリスクの有無を見極めることが重要です。
嚥下の各ステージや姿勢との関係を評価することで、安全な食形態や姿勢調整、段階的な訓練計画が立案されます。リハビリ職種は、口腔機能訓練や呼吸リハ、食事支援、環境整備などを通じて、誤嚥の予防と QOL の維持に貢献する必要があります。
摂食嚥下機能を可視化するスクリーニングツールをいくつか紹介します。
簡易嚥下状態評価票(EAT-10)
パーキンソン病では、嚥下機能の低下がパーキンソン病の症状の進行とともに高頻度で見られ、誤嚥性肺炎や栄養障害のリスクが高まります。
簡易嚥下状態評価票(EAT-10)は、嚥下障害の早期発見を目的とした自己記入式のスクリーニングツールで、10 項目の質問に対して 0 ~ 4 点で回答し、合計 3 点以上で嚥下障害の可能性が示唆されます。
評価は簡便かつ短時間で実施可能なため、外来や在宅など多様な場面で活用されており、パーキンソン病患者の摂食・嚥下機能のモニタリングにも有効です。
反復唾液嚥下テスト(RSST)
反復唾液嚥下テスト(RSST)は、30 秒間に唾液を何回嚥下できるかを評価する簡便な方法で、3 回未満の場合は嚥下障害の可能性が示唆されます。
RSST は器具を必要とせず、被検者の負担も少ないため、外来や在宅などの幅広い場面で実施可能です。
パーキンソン病に特有の嚥下反射の遅延や無動による嚥下回数の減少を捉えやすく、嚥下障害の早期発見とリスク管理において有用なスクリーニング評価となります。
改定水飲みテスト(MWST)
改訂水飲みテスト(MWST)は、パーキンソン病における嚥下障害のスクリーニングとして広く用いられる簡便な評価法です。
被検者に 3mL の水を口腔内に含ませて嚥下させ、その際のむせや声の変化、嚥下動作の観察に基づいて 5 段階で評価し、スコアが 3 点以下の場合、嚥下障害のリスクが高いと判断されます。
MWST は器具を用いず短時間で実施できるため、外来やベッドサイドでの評価に適しており、嚥下機能の初期スクリーニングとして有用です。特に嚥下反射の遅れや嚥下後の誤嚥を捉えやすく、パーキンソン病患者の安全な食事支援に寄与します。
リハビリに評価は不可欠である
パーキンソン病は、振戦や筋強剛、動作緩慢、姿勢保持障害といった運動症状に加え、自律神経障害や認知機能低下、精神症状などの非運動症状を併せ持つ多面的な疾患です。
これらの症状は単独ではなく複雑に絡み合い、移動能力の低下やセルフケアの困難、転倒リスクの増大といった日常生活動作の制限を引き起こします。
さらに、嚥下障害やうつ・アパシー、認知機能の低下などにより QOL が著しく損なわれることもあります。
このような特性を持つパーキンソン病のリハビリテーションでは、症状の全体像を正確に把握する「評価」が不可欠です。評価を疎かにしたまま漫然とリハビリを行っても、症状の変化を見逃し、効果的な介入が行えません。
運動・非運動症状を的確に捉える多角的かつ継続的な評価は、個別性の高いプログラム立案や目標設定、介入効果の検証にも直結します。したがって、リハビリテーションの質を高めるうえで「評価」は中核的な役割を担い、多職種協働による継続的な実践が求められます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
パーキンソン病のリハビリテーションにおいて、理学療法評価は単なるルーティンではなく、的確な支援につなげるための“道しるべ”です。
運動症状はもちろん、姿勢制御、バランス、日常生活動作など、多面的な評価が求められます。しかし、症状の現れ方や進行スピードは人それぞれ異なり、画一的な視点では見落としも生じます。だからこそ、理学療法士が持つ臨床的な目と確かな評価スキルが重要なのです。